第92話 強者は敗北を恐れない
「……ごめん」
決勝戦は1ラウンドが終わるごとに10分のインターバルを挟む。
結局1ラウンド目は、俺以外はいい感じに削っていたけれども、グランディネアが俺を倒したのちに暴れ回って敗北した。
「まあ……仕方ないですよ、気を取り直していきましょう!!」
雪奈は落ち込んでいる俺を慰めてくれた。
「みんな、どうする……2ラウンド目も同じ作戦で行くか……??」
俺がそう言うと、みんな首を縦に振った。
予想外だった。てっきり可憐かレインが変わるんじゃないかと思っていた。
「俺がグランディネアとタイマンでいいのか……??」
「うん、正直それしかないよ。ボクは多分、悠也よりも無様に負けちゃうと思うし」
「今回ばかりは俺も無理だ」
俺が恐る恐る聞くと、可憐とレインはそう言った。
(まあそうだよな……)
相手はアジア最強のプロチーム。
グランディネアだけじゃない、みんなが世界レベル。辛いのは俺だけじゃない。
ただ、勝てる未来が想像できない。
どうやっても俺があいつに勝てる気がしない。
俺が頭を抱えていると、可憐が俺の顔にタオルを後ろからかけた。
「ねえ、悠也。どうしてそんなに不安そうなの??」
「どうしてって……次負けたら、俺たちは終わりなんだよ!! 不安に決まってるだろ……」
俺がそう言うと、雪奈とレインは悔しそうな表情をして下を向いた。
「そうだね、負けたら終わりだね」
可憐はこの重い雰囲気の中、少し余裕そうに見える。
「可憐はどうして、そんなに余裕なんだ……」
「どうして悠也は、最初から負けることを考えているの??」
「えっ……」
可憐は不思議そうに俺に言った。
「彩音ちゃんがどうして強いか、悠也は知ってる??」
「……わからない」
「彩音ちゃんは、敗北を恐れないから強いんだと思う」
「……ッ」
言われてみれば確かにそうだ。
彩音は一度も、負けると言っているところを見たことがない。
グランディネアが『自信の無いやつに勝つ資格はない』と言っていたのを思い出した。
(圧倒されて、当たり前のことを見失っていた……なっさけねぇな俺……)
いつもの自分を曲げ、勝ちにつながる道を自ら落としていた。
仮にも最強プレイヤー彩音のコーチをしている俺が、こんな当然なことを見失ってしまっていた自分にがっかりした。
「そりゃそうだよな……よし……」
俺は顔を両手で叩いて気合いを入れ直した。
絶望という闇に押しつぶされていた俺の世界は、可憐の一言で快晴の青空に変化した。
「言っといてなんだけど、ボクもグランディネアに勝てるって言い切れない。ごめんね、説教みたいな感じになって……」
可憐は申し訳なさそうに言った。
「いや……むしろ今ので、勝つビジョンが見えてきた」
「そりゃよかった。お前にかかってんだからな」
レインはそう言って、俺の背中をビシッと叩いた。
パチンという音がして、背中がヒリヒリとした。
「いった……まあ任せてくれ」
「だ、大丈夫ですか……??」
雪奈は心配そうに椅子から立ち上がって、俺の隣に来た。
「大丈夫、大丈夫」
「それはよかったです、気を取り直して後半戦もいきましょう〜!!」
* * *
「無様に負けたってのに、なんの用だ」
俺とグランディネアはビル前の広場のような場所にいた。
試合開始前、俺はグランディネアにあらかじめチャットでここに来るように言っていた。
「つか、素直に来る辺り俺に期待してるってことじゃねぇか??」
「いや、お前を叩き潰したら、メンバー全員が絶望するだろうと思ってな」
「性格悪いな、お前……」
「FPSゲーマーに性格いいやつはいねぇよ」
「それもそうだな……まあ、いくぞ最強」
俺はアサルトライフルをグランディネアに撃ち込んだ。
「またこれか……いい加減飽きてきた」
放たれた弾丸をグランディネアは回避しながら、距離を取った。
(俺の出方を探るか……)
「逃げんなっ」
グランディネアは、後ろに下がりながら俺の放つ弾丸を回避する。
ただ、何発かグランディネアの頬の辺りをアサルトライフルの弾丸がかすって少量のダメージを与えた。
「やるな」
グランディネアは俺がリロードをしたタイミングで、サブマシンガンを持ってこちらに詰めてきた。
(どうする……)
さっきはサブマシンガンの弾を多く持っていた。
でも今回もそうとは限らない。
ここで負けたらすべてが終わる。
下手な賭けはするべきじゃない。
一つ目に思いついたのは、一度距離を取ってアサルトライフルで少し削りを入れてから、追撃をする。
確かに安全な立ち回りだ。
(いや違う……むしろこの負けられない状況を利用し、あいつを信用してここで仕掛けるか……)
俺は最初の考えを捨て、グランディネアを迎え撃つことにした。
「なかなかいい判断だな」
グランディネアはクリティカル距離に入る直前で、グレネードを俺に向けて投げてきた。
俺はグレネードを回避するため、遮蔽物の裏に隠れた。
「これで終わりだ、じゃあな」
「……ッ」
グランディネアは俺が隠れた遮蔽物を予測し、先回りで俺の目の前まで来ていた。
「……かかったな」
俺はショットガンをグランディネアに向けて撃った。
しかしグランディネアは俺の反撃も予想していたのか、頭を狙ったつもりが胴体に当たり、ダメージを少し軽減した。
ただ近距離のショットガンの一撃は全武器中トップクラス。
グランディネアの体力を半分程度まで削ることができた。
「……ちっ」
グランディネアは舌打ちをして、俺から距離を取った。
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