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プロゲーマーを目指していた俺、妹はアジア最強の配信者でした。  作者: 城ヶ崎大地


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第9話 本当の強さは優しさなのかもしれない

俺の声は教室中に響いた。

 久しぶりに大きな声を出したせいで、声が少しかれてしまった。

 ゲホゲホと咳き込んだので、水を飲んで喉を潤す。


「急にうるさいよ!! にーちゃん〜」


「いや、半分以上は君のせいだが??」


 俺が真面目な顔で言うと、有栖ちゃんはゲームの手を止め、彩音に頭を下げた。


「冗談……だよ? あやねちゃん……」


 彩音は有栖ちゃんの謝る顔を見て、ホッとした表情を浮かべた。


「なんだ、ならよかったよ〜。まったく、うーちゃんは嘘つくのやめてよ〜」


 彩音は緋奈ちゃんに注意する。


「ついつい悪ノリで〜。ごめん!!」


 緋奈ちゃんは“てへっ”て顔で彩音を見る。

 彩音は呆れたような顔をして、緋奈ちゃんの頭を撫でた。


 ふと、彩音の顔を見て思った。

 そういえば――アイツが1位になってから、リアルで何も祝ってなかったな……と。


(祝わなきゃな)


 俺は彩音の近くに歩み寄った。


「あのさ、彩音……1位、おめでと。お前が一番強い……」


 俺は自分の悔しさを押し殺し、彩音の1位を祝った。


「ありがと〜! でもこの1位は、みんなで掴んだから。私だけのものじゃないよ!!」


(やっぱ彩音はすげぇよ……)


 思った通りの返事だった。


 俺には「みんなで掴んだ」という感覚がわからない。

 実際、最初から最後まで固定メンバーでランク戦を回していたのは事実だ。


 他のメンバーもポイント差はわずかだったが、彩音だけがその小さな差で“最強の称号”を掴んだ。


 俺が同じ称号を手にしていたら、たぶん「俺が最強だ」って調子に乗っていただろう。

 でも彩音は違う。

 仲間の力がなければ届かなかったと言い、決して誰かを下に見ない。


 そういうところが、あいつの人気の理由なんだろうな。


 俺は涙目になりながら、笑った。


「そうだよな……。まあ、おめでと」


 そう言って、俺は体育祭の会場へと向かった。


***


「あやねん〜、なんでにいちゃん泣き目になってたの??」


 緋奈は悠也の後を追おうとしたが、教室を出る直前に美佳がその手を掴んだ。


「あんたってデリカシーないよね……」


「なんだと〜!? 美佳、にーちゃんがなんか泣き目になってるから慰めてあげなきゃ!!」


「そうだよ。お兄ちゃん、なんか変だった……」


 彩音も緋奈の意見に賛成する。

 その様子を見て、美佳は呆れた顔をした。


「まったく……お兄さんは、自分一人で“頂点”に立とうとしてたんだと思う。

 でも、その称号を“妹”に取られた。

 たぶん、海外の人間に注目されたことで、新しい目標ができたのかもしれない。

 でも結果的には――敗北してるんだよ」


「……負けたことを認めてた。でも、悔しさを押し殺してたと思う……」


 美佳の言葉に続いて、有栖も悠也の気持ちを代弁する。

 彩音と緋奈は、申し訳なさそうに俯いた。


「別に、私たちが謝ることじゃないわ。

 お兄さんが私たちを超える強さを持っていたら、その称号を掴めていた。

 だから彩音が言うべきなのは、“ドンマイ”じゃなくて――“がんばったね”だと私は思う」


「勢いでみんなで一斉に慰めに行ったら、逆に煽りっぽくなる可能性もあるし……」


 美佳は冷静な判断で、悠也の心境を読み取っていた。


「……私たち3人は、まだ出会ったばかりで、お兄さんのことをよく知らない。

 だから、ここはあやねちゃん一人で慰めるのがベスト……」


 有栖は、そっと彩音の背中を押す。


「わかった!! 今日、お兄ちゃんが帰ってきたら、ちゃんと慰めてみるね!!」


 彩音は2人の言葉を受けて、決意を固めた。


「ねえねえ、あやねん。ちょっと耳貸して〜」


「うーちゃん、なに〜?」


 緋奈はニヤニヤしながら、彩音に何かを耳打ちした。


(絶対またなんか企んでる……)


(嫌な予感しかしない……)


 美佳と有栖は警戒したが、彩音が妙にやる気を出している様子を見て、

 「まあ……たぶん大丈夫だろう」と、それ以上は聞かないことにした。


***


「……疲れた」


 あの後、俺は体育祭の競技にいくつか参加させられた。

 ゲーマーの俺にとって、屋外競技は拷問に近い。

 しかも、ランキング戦の直後。

 疲労も限界で、今にも倒れそうだった。


「おかえり〜! お兄ちゃん!!」


 俺がドアを開けると、彩音が玄関で待っていた。


「ああ、ただいま……」


 恥ずかしさと情けなさで、彩音の持っていたタオルも受け取らず、俺はそのまま部屋へと向かった。


 部屋に着き、俺はゲーミングチェアに深く腰を下ろすと、頭を抱えた。


(……あんなとこ見せちまって、兄として情けねぇ……)


(恥ずかしいし、俺、何やってんだろ……)


 ため息をついたその瞬間――。


 部屋のドアが突然、開いた。


「なっ……」


 現れたのは、彩音だった。


「お兄ちゃん!! ちょっと話があるの!!」


「話?? そんなのないよ……どっか行ってくれ……」


 疲労と悔しさが重なって、判断が鈍っていた。

 俺は、彩音に冷たい言葉をぶつけてしまった。


(……まずい。なに言ってんだ俺……)


 俺の言葉を聞いて、彩音は泣きそうな顔になった。


(やべぇ……ホントに……)


 俺が頭を抱えていると、彩音は涙を浮かべながら近づいてきた。


(……なぐられるか?? いや、言いすぎたし……)


 覚悟を決めたそのとき。


 彩音は俺の前に立ち、まるで赤子をあやすように。

 頭を撫でて、胸元にギュッと抱きしめてきた。


「えっ……」


 俺は困惑し、思わず離れようとした。

 だが、彩音はその手を離さなかった。


「すごいよ、お兄ちゃんは……。私にいつも、新しい世界を見せてくれる」


「どうして……こんなに優しくするんだよ……。俺たち、長いこと顔すら合わせてなかっただろ……」


「……ちょっと、昔の話をしようよ」

読んで頂きありがとうございます!!

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