第88話 これが私の全力だ!!
「あたしが弱い??」
「うん!! だって、あやねんが弱るまで待っていたって自分で言ってたじゃん。それってつまりは、全力のときのあやねんには勝てないって言ってるよーなもんじゃん」
「あいつらにここまでボコられてるお前はあたし以下じゃねぇか…… いいから、そこでリーダーが倒されるのを見届けな」
「確かに私は、あなたよりは弱いかもしれない…… でもあやねんは、あなたの何倍も、何百倍も強いんだから!!」
「生意気なガキが…… いいぜ、お前から先に消してやる」
マリベルは緋奈に一気に距離を詰め、銃口を構えた。
その瞬間、緋奈の後ろから美佳が現れて、緋奈を突き飛ばしてきた。
突き飛ばされた緋奈は、私の近くまで飛んできた。
マリベルは突然現れた美佳に驚き、一度距離を取った。
「あんたね、無茶しないで寝てなさいよ!!」
「だって〜 あやねんが言われっぱなしなの見てられないんだもん!!」
「それはわかるけど…… まあ、あんたは大人しくしてなさい!!」
「次から次へと…… 誰から先に来るんだよ、けっきょ…… くっ……」
マリベルがゆっくりとキレ気味で立ち上がる瞬間、スナイパーライフルの弾丸がマリベルの脳天ギリギリを通りすぎた。
「ごめん…… 外した…… 次は外さない……」
「みんな……」
私はゆっくりと立ち上がった。
「あのさ、うーちゃん…… うーちゃんは、どうしてこのゲームをやってるの??」
私が緋奈に「どうして」と質問すると、緋奈はきょとんとした顔をしたのち、くすっと笑った。
「たのしーから!! それだけで十分だよ。ゲームを楽しむのに理由なんていらないよ!!」
私は緋奈の答えを聞いた瞬間、自分の心に抱えていた疑問が、吹き飛んだ感じがした。
ふと、試合前にお兄ちゃんから『全力で楽しんで来い』というメッセージが送られてきたことを思い出した。
(なんだ…… それだけでよかったんだ……)
機械だ、感情がない。
そう言われる原因を結局解消できなかったのは、自分にも責任があった。
その責任から逃げ続けていた。
でも私は、ようやく気がつけた。
「あやねんはどうしてやってるの??」
「そういえば聞いたことなかったわね」
「教えて……」
3人は私のことをじっと見ながら質問をした。
「私も楽しいからやってるよ!!」
私が満面の笑みでそう言うと、3人ともニコッと笑った。
「そっか〜 んじゃあ、さっさとやっつけちゃお!! 世界大会はもっと楽しいと思うよ!!」
「作戦会議は、おしまいか??」
マリベルはそう言って、銃をリロードした。
なんだかんだ、みんなで話している時に襲ってこないあたり、根はいい人な気がしてきた。
「うん!! なんというか、ありがとうございます!!」
「へっ??」
「今まで悩んでいたことは些細なことでした。悩みが消えたのはあなたのおかげでもあります…… ありがとうございます。おかげで、あなたに勝てそうです!!」
私はマリベルに頭を下げた。
確かにひどいことを言われた。
でもお兄ちゃんが言っていた通り、乗り越えないといけない。
そのきっかけを作ってくれたマリベルに、私は感謝を伝えた。
「よくわかんねぇけど…… あんたが本気になってくれて、あたしは嬉しいよ。見せてみろ、新時代の天才ってやつを!!」
私はマリベルに向かって一気に距離を詰めた。
マリベルは意外な表情をした。
「近距離戦…… 未来視は捨てるか」
「最近、コーチに教えてもらったんです!!」
「へぇ〜 そりゃあ、楽しみだ」
マリベルは私に向かって、サブマシンガンを放った。
放った弾丸をしゃがんで回避し、私もサブマシンガンの弾を放ち、マリベルの胴体に当てて体力を半分ほど削った。
「私たちの援護はいらなそうね」
「あやねん!! がんばれ〜」
「頼んだ……」
緋奈たち3人は、同じ場所にまとまって座りながら、私を応援してくれていた。
「やるな……」
「まだまだこれからです!!」
* * *
「え、俺のパルクールをやりたいの??」
「うん!! コーチ、教えてください」
「しょ、しょうがないな〜」
私がお願いすると、お兄ちゃんは私のできないパルクールの動きを目の前でやってくれた。
「何その動き、お兄ちゃん。すごいよ!!」
前にみんなで合宿した時、私はお兄ちゃんにキャラクターコントロールを教えてもらっていた。
「これは俺のオリジナルっていうか、わざわざやる必要ないんだけどね」
「でもすごいよ〜 そんなの思いつかなかったし……」
「これするために、キー設定の割り当てを瞬時に変える。ちなみにこの後の攻撃を失敗すれば、操作がしづらくなる。いわば捨て身の一撃って感じだけど…… それでもやる??」
「うん!! 手札は多い方がいいもんね。私の技を教えたから、今度はお兄ちゃんのを教えて!!」
「まあ、そうだな…… いいよ、教えるね。まずは……」
* * *
マリベルの弾丸を避けた瞬間、設定画面を即座に開いて操作キーを反転させた。
キーが反転することで、移動用のキーとジャンプを入力するキーの位置が近くなって、パルクールができる。
ただし、グレネード等の小道具やリロードといった攻撃関連のキーの配置が遠くなって、反撃までの時間にラグが発生するというデメリットも存在する。
私はパルクールで弾丸を避けながら距離を詰めて、サブマシンガンを放った。
「あと一歩、足りなかったな」
マリベルは、私の来る位置を予測して予め距離をとり、私の到着した位置にエイムを置いていた。
「残念だったな。これで終わ…… 何っ……」
私はその位置で待っていると思い、即座に着ている胴体の装備をマリベルに投げつけて、マリベルの放った弾丸を防いだ。
視野を奪った隙に、マリベルの方向に銃を構えた。
「これが私の!! 全力だ!!」
私の放つ弾丸は、投げ捨てた装備ごとマリベルを貫き、私たち4人の画面にはYOU WINの文字が表示された。
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