第85話 お前らしいな
俺とレイン、雪奈の3人は休憩室から出て、703の部屋でスタッフの人とセッティングをしていた。
事前にパソコンのスペックや周辺機器等を伝えていたので、いつも使っているものと同じ環境を使える。
スポンサーしてもらっているとはいえ、ここまで整えてもらえると、ありがたさを超えて申し訳ない気持ちにもなる。
「ま、試合まで時間あるし、トレーニングモードでもしとく?」
「そうですね……ただ、可憐ちゃんがまだです」
俺たちがそんな話をしていると、部屋のドアが開いて、可憐が斉藤先生と一緒に入ってきた。
可憐はいつもの病院着ではなく、白のフリフリの半袖ブラウスにスカートという女の子らしい服装をしていた。
(普通に似合ってるな……)
「お待たせ〜 ごめんね、おそくなって〜」
「おはよ、可憐」
「おはようございます!! 可憐ちゃん!!」
「これが可憐さんのリアル……だと……」
「どう? ボク、可愛い?」
可憐は服の裾をフリフリさせながら言った。
「めっちゃくちゃ似合ってます。本当になんというか、可愛いっす……」
「似合ってる」
「最高です!!」
「えへへ〜 ありがとね〜」
俺たちがそれぞれ褒めると、可憐は満足そうにニコニコしていた。
「そいや、点滴は大丈夫なのか?」
この前病院に行った時は点滴を刺していたが、今日は無かった。
「うん、最近は良くなってきて。休憩の時に一回注射すれば大丈夫〜」
「そっか、よかった。少し遅れてきたから心配でさ」
可憐は集合時間より10分ほど遅れてきた。開始時刻には間に合っているが、体調のこともあり、何かあったんじゃないかと俺たちは心配していた。
そう言うと、可憐は目をそらし、斉藤先生が呆れ顔を浮かべた。
「えっと、その〜これはね〜」
「はぁ……ご心配かけてすみません。可憐さんは普通に寝坊しただけです」
「ふっ……」
「なんだ、そういうことかよ」
「可憐ちゃんらしいですね!!」
俺たち3人は、寝坊と聞いて安心すると同時に、くすっと笑った。
「ごめんね〜 アラームはセットしてたけど起きられなくて、斉藤先生に起こしてもらった〜」
「まあ何事もなくてよかった。とりあえずデバイスチェックするぞ」
俺たちはそれぞれPCの前に座り、スタッフと一緒にモニターやパソコンの設定を進めた。
作業は5分ほどで終わり、開始時間まで30分の余裕ができた。
「どうする? 少し練習してもいいけど、時間的に微妙だよな」
「ん〜とさ、悠也。彩音ちゃんと会ってみたいんだけど、いいかな……?」
「確かにリアルで会う機会もそんなにないだろうしな。いいよ、ついてきて」
俺と可憐は一緒に703を出ようとした。
「わ、私も行ってよろしいでしょうか!?」
「雪奈はぜっっったいにダメ!!」
「そ、そんな〜! そこをなんとかぁ〜! なんかやる気うせできまじだ〜!」
雪奈は泣きながら俺にすがった。
「……はぁ、しょうがねぇな。まあいいからこの部屋にいて。多分、いいことあるから」
「本当ですか……?」
「本当にいいことあるから、ここの部屋にいて。ただし、絶対に手を出さないこと! わかった?」
「よくわかりませんが、わかりました!!」
俺と可憐は彩音たちのいる701の前に行き、ノックをした。
中から「どうぞ〜」という彩音の声が聞こえたので、俺と可憐はドアを開けて中に入った。
部屋の中には、さっきいなかった有栖を含めた4人全員がいた。
「にーちゃんだ!! それと可憐ねーちゃん!!」
「おはよ〜」
俺は有栖の元へと歩いた。
「あのさ、有栖ちゃん」
「なんですか……?」
「一生のお願い、俺たちの703の部屋に一瞬だけ行ってもらってもいい?」
「どーしてですか……?」
「それは……」
言えない。まさか雪奈のやる気を最大限に引き出して、大会の勝率を上げたいだなんて。
「これは君にしかできないことだ……なんか今度、有栖ちゃんのお願いを聞いてあげるから、お願い!!」
俺は手を合わせて懇願した。
「そ、そうですか……わかりました……約束、守ってくださいよ……」
「助かる、本当にありがとう!!」
有栖は俺のお願いを聞き入れ、703の部屋へ向かってくれた。
「へ〜君が彩音ちゃんか、はじめまして〜」
「可憐さんですよね、はじめまして!!」
彩音と可憐は握手を交わした。
身長も可憐の方が少し高い程度で、同い年に見えるくらいだった。
初代最強の少女と、現代最強の少女がリアルで対面しているという凄い光景なのに、殺気などは一切なく、和やかで優しい空気が漂っていた。
その様子に緋奈も混ざってきた。
「ねーねー、可憐ねーちゃん!! この前の修行の技は使ってみた??」
「まだだよ〜 切り札みたいな感じだから、大会で使おうかなって思ってた〜」
「そっか〜 にーちゃんたちをあっと驚かせちゃって!!」
「うん、ボクに任せて〜」
そう言って、可憐と緋奈はハイタッチを交わした。
(2人で練習したの、本当だったんだ……)
「なんかいつの間にか仲良しになってますね……」
「ああ……なんか意外な組み合わせだ……」
俺と美佳は、異色な可憐と緋奈の仲良さに驚きを隠せなかった。
そんな中、開始10分前になり、有栖が部屋へ戻ってきた。
「みんな、開始10分前……あの……おにーさん……」
「どうしたの……?」
「い、いや……雪奈さんに……『がんばろー』って応援したら……泣きながらバタッと倒れたけど……大丈夫……?」
「「ああ、いつものことだから気にしなくていいよ」」
俺と可憐は同時に有栖に言った。
「んじゃあ、彩音。絶対に負けんなよ!!」
「うん!! お兄ちゃんたちもね!!」
「じゃあね〜 がんばろ〜」
俺と可憐は701を出て、自分たちの部屋へと向かった。
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