第81話 戻りたくない時間
「そういや、結局 彩音たちとは最後まで当たらないみたいだね」
俺は夜ご飯のオムライスを食べながら、彩音に言った。
ついさっきご飯を運んでいる時にメールが来て、最終スクリムの相手が決まった。
対戦相手は『UPG』『T&G』『TOE』で、彩音たちとは最後まで当たることはなかった。
「そうみたいだね〜。1回くらいは戦うと思ってたけど……」
「まあでも、俺は彩音たちとは決勝で戦いたかったから、よかったけどね」
「うん!! 私もお兄ちゃんたちと全力の勝負をしたいから、そう思ってた!!」
どうやら彩音も、俺と同じ気持ちだったようだ。
「そういえば、昨日うーちゃんが可憐さんの先生になった!!って言っていたけど、ほんと??」
「え…… そうなの??」
意外すぎる組み合わせで、一瞬耳を疑った。
それに可憐が先生ならまだわかるけど、逆とか意味がわからないし聞いてない。
「いや、何も聞いてないな……。まあ可憐のことだ、何か大会用に練習したんじゃない??」
「まあそうだよね〜」
そんな話をしながら、俺はスマホでスクリムのマッチ表を確認すると、彩音たちの最終戦の相手が『ROSE』だと知った。
「彩音たちの最終戦はマリベルか……」
マリベル、チーム『ROSE』のリーダー。
黒髪のストレートの高身長で、低い声が特徴の女性で、紫のメッシュが入っている。
昨年度はグランディネアに次ぐ2位で予選を抜けた。
世界大会1回戦で敗れたものの、彼女の圧倒的なフィジカルは世界にも通用するレベルだ。
性格は荒く、攻撃的なスタイルで、彩音とは真逆の性格だ。
ただ、仲間の3人の女性選手との関係が悪いというわけでもなく、あくまで1人で解決するところはするが、グランディネアとは違って仲間に頼る面もある。
近距離戦が得意なので、彩音の未来視(中距離で弾丸の軌道を読むので近寄られたら使えない)は封じられる形になると思うので、相性も最悪に近い。
「世界2位の人だっけ。そんなすごい人と私たち戦えるんだ〜」
彩音は緊張してるのかと思いきや、むしろワクワクしてる感じすらしていた。
ただ余裕かというとそうではなく、真剣な表情ではあった。
「緊張とかしないのか??」
「してないわけじゃないけど、私たちはどんな人が相手だって負けるつもりはないよ。お兄ちゃんたちと全力で戦える瞬間を楽しみにしてるから!!」
「そっか……。でも今度は絶対に負けないからな!!」
「うん!! 望むところだよ!!」
そんな話をしていると、開始15分前にセットしていたアラームが鳴った。
「んじゃあ、彩音。今日も頑張ろうな」
「うん!!」
俺たちは食べ終わった食器を食洗機に入れて、お互いの部屋へ行ってゲームを起動した。
俺たちはスクリムが終わった後、反省会ということで共有サーバーに集まった。
可憐と俺は岩の上に座って、レインは瓦礫の上、雪奈はスナイパーライフルと一緒に遮蔽物の壁に横たわった。
「ふぅ……。とりあえず全勝」
「ないすだよ〜」
「いいゲームでしたね!!」
「だが……。ディネアに通用すんのかよ、これ」
「わかんないけど、多分いけると思う……。とりあえず全勝のパーフェクトゲームなんだ。ある程度は通用するだろ」
俺たち『EGC』は北アジア予選前日のスクリム、3−0のパーフェクトゲームで終わった。
「明日の立ち回りはこの感じでいいか??」
「うん、いいと思う〜」
予選は全勝しないといけないので、安定重視の4人で固まって俺とレインの前線に、可憐と雪奈がカバーする立ち回り。
これなら、ミスしても巻き返しが効きやすくて、最悪無理やりでも延長戦に持ち越して倒す。
「ただ、ディネアさん……。別次元の強さですけど、悠也くんいけますか……??」
「やれることは全力でやってあいつを倒すつもりだ。あいつに負けるようじゃ世界1になんてなれないからな」
「そうだね〜。まあとりあえず最後の作戦会議は明日集まったらで〜」
明日、予選開始は11時からで決勝は4時頃開始。
事務所に9時頃集合なので、機材のセッティングや調整込みでも30分は予選前にあるので早めの解散をすることにした。
実際、時刻は9時半を過ぎていた。
このまま調整や練習をしたら、確実に1時を越えるし、多分寝坊するので懸命な判断だろう。
それに俺たちは明日のために、チームとなったあの日から鍛えてきた。
努力を怠ったつもりはない。絶対に明日の予選は突破してみせる。
「んじゃあ みんな、おやすみ」
「おやすみ〜」
「おやすみなさい!!」
「寝坊すんなよ」
俺たちは解散して、俺はゲームと通話アプリを落とした。
「んじゃ、風呂でも入るか」
俺は軽いストレッチをしたのち、スマホを開くと通知が3件届いていた。
試合中、集中力が切れないようにミュートモードにしていたので気が付かなかったが、相手は緋奈、美佳、有栖の3人からだった。
「なんだ……?? ってか、9時7分って最終戦始まったばっかりじゃん」
内容を確認すると、3人とも彩音が変だっていうような内容のメッセージだった。
試合結果をリザルトで確認すると、彩音たちはスクリム始まって以来初めての0−2の敗北をした。
まあ、相手が昨年2位のマリベルだから、流石の彩音も調子が出なかったんだろうと思いつつ、俺は彩音の部屋のドアをコンコンとノックした。
ノックをしても返事がなかった。
流石に完敗したことで落ち込んでいるだろうとも思ったが、緋奈たちが「変だ」ということが違和感だった。
俺は状況説明が上手いであろう美佳に、『どういうことが変だったの??』と聞くと、2戦目から返事がなくて操作もしていないらしい。
回線のエラーなどは、俺が普通にできていたので問題ないと思うので、何か理由があるんだと思った。
俺はとりあえず、彩音の部屋のドアを開けた。
「……彩音!!」
彩音は大粒の涙を流しながら、パソコンデスクの前にうずくまっていた。
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