第70話 今は彼女が心の底から笑えているんだと思えるよ
KARENさんが諦めた理由を知りたくて、俺はランキング戦をしながら、今年の世界大会で王者になったrallyへメッセージを送った。
理由は個人情報に関わるらしく教えてはもらえなかったが、俺が何度も頼み込むと「アジアランキング一桁をキープすることができたら教えてやる」と彼は言った。
俺はrallyの条件を飲み、維持することにした。
結果は3位。『あ』や『YUU』には及ばなかったが、rallyはKARENさんの現状を教えてくれた。
そして、そんな彼女の現状を聞いて、俺に何かできないかと考えた。
俺が一方的に知っているだけで、KARENさんは俺のことを知らない。
ならば、俺が世界大会で優勝すれば、KARENさんが俺のことを知ってくれると思った。
KARENさんのおかげで、俺は変わることができた。
その感謝の言葉を伝えるため、俺は前回大会で惜しくも世界大会に行けなかったキングダムに所属し、見事にスタメンになった。
だが、そんなある日、SNSを見ていると「KARENさんとYUUがデートしている」という投稿を見た。
あいうえの運営が企画した動画の撮影らしいが、あの精神状態のKARENさんが、インターネットで少し前までイキっていたYUUと仲間のような感じで復帰しているのを見て、俺は腹が立って怒り狂い、1週間機嫌が悪くなってチームメンバーのアドバイスにも苛立ち、口論になった。
そして、俺はチームを脱退させられた。
YUUがKARENさんを復帰させたことがどうしても違和感で仕方なかった。
喧嘩を売られたらタイマンでわからせてイキリ散らすあのガキが、KARENさんを復帰させるなんて無理だ。
そう思っていると、YUUがチームメンバー募集の告知を出していた。
俺はあの苦しんでいたKARENさんを、YUUが無理やりチームに入れているんじゃないかと思った。
そう思った俺は、YUUの動きを3日間学校を休んで研究してから挑んだ。
絶対にKARENさんは、あんなやつと一緒にいさせるわけにはいかないと思って、必死に研究した。
──だが今は、その努力は完全に無駄だった。
KARENさんが、無理をせずに楽しくやっていると心の底から思う。
俺とYUUの戦いが終わると、共通サーバーという場所に飛ばされて、YUUとあいうえのメンバー、YUKI、KARENがいた。
「ねえねえ、にーちゃん。あれどうやったの??」
「あれか、ん〜。常識の再構築ってやつ??」
「お、お兄ちゃんって厨二病なの……??」
「ちょ……彩音!! 違うから! 絶望的状況から勝ててカッコつけたかっただけだから!!」
「「「「「今更……??」」」」」
「あはは、にしても悠也ってすごいね〜。ボクの想像以上だよ〜」
「俺はこれからもっと強くなるからな。可憐、雪奈、これからもよろしく」
「私も、可憐ちゃんと悠也くんに負けないくらい頑張ります!!」
インターネットでイキリ散らしてたあいつが、今はKARENさんたちと本名で笑って話している光景を見て、俺はなんだか安心した。
病気で悪化して立ち直れないほど病んでいたらしいKARENさんが、今は笑って楽しそうにしていて、以前俺と初めて会った時の冷たい雰囲気が1ミリも感じない。
この光景を見るに、YUKIさんが言っていた「KARENさんは弱くない」という言葉は嘘じゃなかったらしい。
俺が突っ立っていると、KARENさんはこっちに来た。
「んーと……応募してくれてありがとね〜。あと、あの時はごめんね〜。返信してあげられなくて」
「い、いえ……全然気にしてないです!!」
「おいおい、俺にはタメ口のくせに可憐には敬語かよ」
俺が緊張していると、YUUがニヤニヤしながら俺をいじってきた。
「う、うるさい!! それにYUKIさん、さっきは怖がらせてしまって……すまなかった……」
「いえいえ……怖くなかったと言えば嘘になりますけど……もしかしてさっき、可憐ちゃんに対して必死だったのは、可憐ちゃんのことが好きだからですか??」
YUKIも俺のことをいじってきた。
「え〜、そうなの〜??」
「ち、違います!! 俺はただ……あなたに感謝を伝えたくて……」
「感謝??」
「俺はあんたのおかげで、強くなれた……。あの時の俺は大規模クランのリーダーで天狗になっていた。そんな俺に本当の強さってやつを教えていただいた……。おかげでこんなに強くなれました。ありがとうございます」
俺が感謝の言葉を伝えると、KARENさんはきょとんと不思議そうな顔をした。
「え〜、ボクは別に何もしてないよ〜。それに強くなれたのはレインさんの努力があったからだと思うよ〜」
「そうですか……褒めていただけて嬉しいです……」
「まあ、そんな君にボク……いや、ボクたちからのお願い〜」
「なんですか??」
俺がKARENさんの方を見ると、そこにYUUとYUKIが来た。
「君の力を貸してほしい」
「俺が世界を取るために、力を貸せ」
「まあ、期限がもうないですし、仕方ないですね……よろしくお願いします」
「ちょっと待て!! 俺はまだ入るなんて、一言も言ってねぇだろ!!」
俺がそういうと、YUUが俺の横に来た。
「いいじゃねぇか、『愛しの可憐ちゃん』と同じチームになれるんだから、これほどいい提案はねぇと思うぞ?」
「だっ、だから違うっての!! ぶち殺すぞ!!」
こうして、俺は半強制的にあいつらのチームへ巻き込まれることになった。
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