第69話 あの日から全て変わった
「すげぇよレイン、これで20連勝だ!! 僕たち、最強のチームだな!」
「いいかお前ら、俺についてくれば確実に勝てる。勝ちたい人間は俺に従え」
ラグナロクフロンティアのサービス開始時、俺たちのクランは最強だった。
当時はランキング戦や各国のサーバーが未整備で、まだまだ発展途中といった環境だったが、俺たちのクラン『ガンラウンズ』はSNSで有名で、メンバーは100人以上。俺はそのクランのリーダーをしていた。
「このまま世界1、とれるんじゃないっすか??」
「まあ、俺の指示通りに動け。お前らにふさわしい称号を持ってきてやる」
「かっけぇ〜!! さっすがリーダー。そういうワイルドなところ、憧れるわ〜」
俺たちは、自分たちが最強だと本気で思い込んでいた。
確かに当時、“覇王”と呼ばれるNA(北アメリカ)のLarryや、その仲間のCAP、MIND、squirrelは、当時から別次元の強さだった。
だがランキング戦が始まると、ラグの関係などで日本はAPAC NORTH(アジア太平洋北部)サーバーに分けられ、Fightersのメンバーとはプライベートルームでしか戦えなくなった。
だから、今のような全世界共通サーバーでは天下は取れないけれど、APAC NORTHサーバーでなら、俺たちにも希望はある。
「グランディネア、マリベル……この2人がAPAC NORTHの強豪か。まあ、俺たちなら勝てる」
そんなふうに俺たちのクランは順調で、日本最強になれると思っていた。
だが、ランキング戦が始まる1ヶ月前、試験的にサーバーが分けられたAPAC NORTHで、俺+幹部3人でカジュアルマッチをしていた時――事件は起きた。
「相手は……KAREN?? 見た感じソロですね、リーダー」
「アバターけっこう可愛いじゃ〜ん。俺たちのクランに誘うか??」
「この試合に勝てば30連勝。暫定日本1位のクランになれますよ!!」
幹部の3人は、連勝記録更新がかかっていたこともあり、興奮していた。
「いいか、油断するな。絶対に勝つぞ」
「「「はい!!」」」
このときの俺たちは知らなかった。
まさか1人の少女に、最強クランと呼ばれた俺たちが、完膚なきまでに叩きのめされるなんて……。
「……はぁ、嘘だろ…… なんだその動き……」
1ゲーム目。
当時は陣取りモードで、時間内にエリアを守り切れば勝ちというルールだったが、彼女はサブマシンガンで単独突撃してきて、気づけば俺たち4人の体力はゼロになっていた。
2ゲーム目。
不正ツールを疑って通報するも、検知に引っかからず、一般プレイヤーだと確定する。
前回の敗因は固まりすぎたことだと考え、今度は全員ばらけて動いたが――気づけば俺1人を残して、全滅していた。
「……信じられない、まさかこんな強いやつがアジアにいるなんてな」
「……」
「だが、負けるわけにはいかねぇ。最高連勝記録がかかってるんだ」
俺はアサルトライフルを手に取り、KARENの仲間3人を一瞬で撃破した。
「どうだ!! 残りはお前だ!!」
俺はリロードを終えて、KARENに特攻を仕掛けた。
「……あのさ、1ついい?? 隙だらけ」
俺が発砲しながら接近すると、KARENは味方の死体を盾に使い、防ぎながらその死体の持っていたリボルバーを腰のホルダーから抜いた。スコープを覗くこともなく、俺めがけて撃ってきた。
その弾丸は俺の右足に直撃し、ライフを3割ほど削って地面に倒れ込んだ。
「ぐぁあああ……!!」
「うっさい」
KARENはそう言って、倒れた俺にサブマシンガンを撃ち込んだ。
体力はギリギリ1ミリ残っていたが、全身に弾を浴び、腕も足も吹き飛んでしまって反撃することもできない。
「……お前、何者だよ あまりにも強すぎる……」
「何者って…… ボクはただの人間だよ?」
「いやそうじゃねぇ。お前クラスのプレイヤーがいるなんて知らなかった。いつか超えてやるから、レインという名を覚えて待ってろよ……」
「あっそ 興味ないから、明日には忘れてる」
俺たちはKARENに負け、30連勝の夢は消えた。
後に調べてみると、彼女は覇王rallyがアジアで最も注目しているソロプレイヤーで、シーズン初期に100連勝していたと知った。
この情報を知ったとき、俺は……嬉しかった。
彼女のような、圧倒的な実力を持つ者こそが世界を手にする。
俺はそう確信し、日本1メンバー数の多いクランを解散し、実力主義のチームを作った。
KARENさんも招待したが、当然返信はなかった。
その後、APAC NORTHのサーバーが整備され、ランキング戦が本格始動したあるシーズン。
俺たちはアジア1位を狙い、KARENさんもまたランキングに参加していた。
相変わらずのソロで圧倒的な勝率を誇るKARENさん。
新人だが強すぎる動画配信グループ、あいうえクラン。
そして、タイマン最強と呼ばれるソロのYUU。
俺たちは、そんな猛者たちと拮抗するように戦った。
だが、KARENさんは……2週目で、ランキング戦に参加していなかった。
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