第68話 俺は…… 俺の力で勝ちたい!!
俺は弾丸を受けた瞬間、逆方向に走ってレインと再び距離をとった。
体力はライトマシンガンの高いダメージを受け、みるみる減っていく。
「おいおい、逃げんじゃねぇよ 逃がさねぇぞ」
「……ちっ」
レインは俺が逃げた隙にリロードし、再び背後から発砲してくる。
更に体力は少なくなり、焦りが出てきて、マウスを握る手にさらに力が入る。
(……こっちの動きはすべて読まれている感じか)
おそらくレインは、最初から俺がタイマンを仕掛けてくると読んでいた。
俺との実力差を埋めるために、「YUU」というプレイヤーだけを倒すための立ち回りを研究してきたんだ。
脳筋タイプに見せかけて、実は緻密に計算してくる頭脳派。
そのすべてが俺を欺くための行動で、俺は完全に踊らされていた。
(さて、どうする……?)
このままではジリ貧で負けるのは明らかだ。
逆転の一手を早く見つけないと、俺は負けてしまう。
(彩音や可憐なら、こういう絶望的な状況でも……)
ふと、あの二人の顔が頭に浮かぶ。
絶望的な状況でも、あの二人ならきっとこんな絶望的な状況でも打開するほどの作戦を瞬時に思いつくことができると思った。
(……情けないな、俺)
ラリーたち世界大会組には及ばずとも、アジアでは自分が最強だと思い込んでいた。
でも、彩音、可憐、グランディネア……その3人に届かないと知った今、北アジアでソロ最強と言われても、自分の中に確固たる自信がない。
世界に行く、最強になると意気込んでいたのに目標に対して、俺は精神面が追いついていない。
『いつまで私に負けてるの?? お兄ちゃん……』
「……ッ」
逃げながら弾を避けていたとき、ふいに決勝で彩音に言われた言葉が蘇った。
あの時も俺は、弱気になって完全に押されていた。
(……そうだよな。このままじゃダメだ)
俺は一度、情報を整理することにした。
手札のキャラコン、グレネードや小道具を使った奇襲、中距離の射撃――すべて対策されている今、別のアクションを起こさない限り勝ち目はない。
彩音のように、全てを計算した未来視の動き。
可憐のように、予測不能な柔軟なプレイ。
それを俺ができれば――勝てるかもしれない。
(でも……そんなの嫌だ。俺は、俺の力で勝ちたい……!)
その瞬間、俺の脳内で何かが崩れた気がした。
積み上げてきた「戦い方」の本棚が崩れ、俺は本能的にそれを別の形で組み直す。
(これは……俺の戦いの記録……)
縦積みだった戦いの知識を、ピラミッド型に、あるいは円型に配置する。
すると不思議なことに、今まで思いつかなかった戦術が次々と浮かんできた。
(癖は意識しないと直らない。なら、自分の常識を壊して、新しい自分を作り変えて進化する……)
俺は逃げの姿勢から一転、振り向いてレインに向かって走り出した。
「やっとその気になったか、チキン野郎」
「……俺が甘かった。これじゃあ世界なんて取れない」
「ああそうだ。お前は俺にぶっ倒されて、終わるんだからな!!」
レインは俺に向かって発砲してきた。
戦場はビルの裏路地。小さな壁やゴミ箱、ビルの外壁――キャラコンにはうってつけの地形だ。
俺は一瞬、レインの近くにあるゴミ箱に視線を移した。
「……いくぞ」
弾丸を避けつつ、俺はレインに接近する。
ゴミ箱まで数メートル、スライディングで一気に距離を詰めた。
「バカめ、そんなのは読めてんだよ」
レインは予測して、ゴミ箱の少し前にエイムを置いて発砲した。
「何故だ、何故そこにいない……!?」
俺は即座に飛び出すのではなく、わずかにタイミングをずらしてから動いた。
そして――
「だよな、YUUならそうする!!」
リロードのタイミングを見計らって、俺はレインに接近。
次に、壁に視線を送る。
「ちっ……今度こそ……」
再び走り出す俺。レインとの距離は、もう数メートルしかない。
「いくぞおらあ!!」
ライトマシンガンの連射が始まる。
でも俺は、まっすぐ、ただ一直線に突っ込んだ。
弾丸が頭上や横をかすめていく。
「なっ……なんだと!?」
「なんか考えんの面倒くさくなってさ……ははっ、まさかキャラコンすると思って構えてた??」
完全な意表を突かれたレインは、反応が遅れた。
俺はその一瞬の隙に接近し、レインの右腕に向かってサブマシンガンを撃ち込んだ。
全弾が命中。
ギリギリ距離減衰のかからない位置からの一撃は、右腕を破壊するには十分だった。
「ぐはっ……この野郎……」
レインは片腕でライトマシンガンを持ち上げようとする。
だが――もう遅い。
「おせぇよ」
俺はレインの懐まで詰め寄り、頭に銃口を突きつけた。
「お前のおかげで、俺はまた一歩成長できた……ありがとう」
「……クソが。やっぱり、お前にはかなわねぇか……」
引き金を引く。
『YOU WIN』の文字が、俺の画面に表示された。
「……ふぅ、疲れた……」
正直、負けるかもしれないと思っていた。
でも――俺は勝った。
安心感と疲労が同時に襲ってきて、俺はゲーミングチェアを倒して、そのまま横になった。
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