第67話 違和感
「んじゃあ、私はこの辺で帰るね。可憐のお友達のこと、また聞かせてね」
「うん、お母さんも体に気をつけてね〜」
可憐がそう言うと、母さんは病室を出た。
(プロリーグのこと、お母さんが納得してくれて良かった〜)
正直、反対されるんじゃないかって思っていたけれども、悠也や雪奈のことを話すと、母さんはすんなりと許してくれた。
(まあ、ボクが初めて友達のことを話したからだろうけど、何にせよ許可がもらえたので、これで心置きなく出来る)
「お待たせ〜、遅れてごめんね〜」
雪奈は彩音たちの共有サーバーにいた。
「可憐ちゃん!!」
雪奈はそう言って、ボクのアバターに抱きついてきた。
「どうしたの……??」
「怖かった……本当に怖かったです……」
雪奈は震えた声で、泣きながら言った。
「何があったのか、教えてもらってもいい??」
「でしたら、悠也君から送られてきたこれを見てください」
雪奈はリプレイをボクのメッセージアプリに送った。
音声の入ったリプレイを見て、何があったのか理解した。
病弱のことを言及されて、少し辛くなったけれども、雪奈の行動を見て涙が出てきた。
可憐はマウスから手を離してティッシュで涙を拭いたあとに、再びマウスを握って雪奈のアバターの頭を撫でた。
「なるほど〜、大変だったんだね〜」
「本当に怖かったです〜。そういえば、レインさんが可憐ちゃんに会わせてって言っていましたが、あの人と知り合いなんですか??」
「面識はないよ〜。でも、以前ボクがSNSやってた時に、誘ってきた人だと思う」
「可憐ちゃんは一緒にゲームしたんですか??」
「ん〜、恥ずかしいからあんまり言いたくないけど……あの時は本当に尖っていたからね〜。誘いを断ったよ〜」
「……?? よくわかりませんけど、あのヤクザの人と知り合いじゃないってことですかね??」
「うん〜」
そんな会話を雪奈としていると、彩音たち4人組がサーバーに入ってきた。
彩音たちが話しながらこっちに向かって歩いてくるのを見て、雪奈はうへへとニヤけながら見つめていた。
「あ、この人がにーちゃんの仲間の人?? むむ、実はにーちゃんってモテモテ??」
「おにーさん……こんなに可愛い妹がいるっていうのに……」
「ふええっ……わ、私とお兄ちゃんはそういう関係じゃないから!!」
「あんた達落ち着きなさい……っていうよりこの方、どうして私たちを見てニヤニヤしてるのよ……」
「やっぱり、みんな可愛い……最高です、最高です!!」
美佳は雪奈がぐへへとニヤついている様子を見て、ドン引きしていた。
「えっと、雪奈さんですよね。はじめまして〜、私は彩音っていいます」
「は、はじめまして!! わ、私は雪奈です!!」
雪奈は彩音に握手されて、緊張で声が震えていた。
「ゆきねーちゃん、緊張してる?? 私は緋奈だよ!!」
緋奈は彩音と握手している雪奈に背中から抱きついて、おんぶのような体勢になった。
「ゆっ……ゆきねーちゃん……」
「あんたね……年上の初対面の人にあだ名をつけるのはやめなさい……雪奈さんが困ってるじゃない」
美佳は雪奈に抱きついていた緋奈の背中を引っ張って、2人を離した。
「私は美佳っていいます、よろしくお願いします。すみません、失礼なことをして……」
「い、いえ……ねえちゃん……ぐへへ……それに……いーちゃんとうーちゃんの生夫婦トーク……最高です……」
雪奈はそう言って、ガクッと倒れた。
「よくわからないけど……表情豊かで、面白い人……私は有栖……よろしくね」
有栖は倒れている雪奈の近くに行って、自分の名前を言った。
「よ、よろしくお願いします……」
そんな感じで話をしていると、悠也とレインのタイマンが始まった。
「お〜、始まるみたいだよ〜」
あいうえのみんながどんな見た目の人か、わくわくしながら見ていると、ヤクザのような見た目のレインが観戦画面に映し出された。
「「「ヤ、ヤクザだ……」」」
「反社だ!!」
彩音、有栖、美佳はレインの容姿を見て怖がっていたが、緋奈だけは目をキラキラさせていた。
「なんであんたは目を光らせてるのよ……」
「えーだって、パパが見てたドラマを一緒に見たことあるんだけど、悪いやつをばったばったと薙ぎ倒すヒーローなんじゃないの??」
「いや失礼ですけど、レインさんはその倒される側にしか見えない……」
「えーそうなの!! なら、にいちゃん!! がんばれ〜」
美佳と緋奈が盛り上がっていて、有栖は雪奈のところに行った。可憐は1人で画面を見ている彩の横に座った。
序盤は悠也が逃げの一手で押されているようにも見えるが、悠也がスタングレネードを持っているのが見えたので、3回目のリロードタイミングを狙ってカウンターをする動きだろう。
「どう?? 彩音ちゃん的には勝てると思う??」
「武器の相性は悪いですが、見た感じ……技術力はお兄ちゃんの方が圧倒的に上で、勝てるとは思いますけど……」
「けど??」
「隠し球というか、なんでしょうかね……観戦画面はゲームVCが聞こえなくて、2人が何を話しているかわからないので、あくまで予想ですけど……レインさんは完全にお兄ちゃんの動きを読みきっている感じがします……」
プレイヤーが録画したものにはゲーム内VCが入るが、リアルタイムの観戦には声が入らない。
(うわ〜まじ……?? 彩音ちゃんもこの違和感が感じ取れるんだ〜)
可憐は彩音ちゃんが改めて天才だと思った。
始めて1年以内でこの洞察力とあのフィジカル、本当に別次元の存在に見えてしまう。
あの時、手術や体調不良でランキング戦を諦めたけれど、彩音の実力を知れば知るほど、1位にふさわしいのは彼女なんだと納得してしまう。
可憐は彩音ちゃんの頭をそっと撫でた。
「えっと……可憐さん、どうしました??」
「いいや、なんでもない〜。ただ……なんか、彩音ちゃんはすごいなって思ってね〜」
「全然……私もまだまだですよ……」
「彩音ちゃんはどうして、このゲームを極めようと思ったの??」
「それは……」
そんな話をしていると、悠也がカウンターを仕掛けた。だが悠也のカウンターを、レインは読んでいたのか、悠也の壁ジャンプを阻止してダメージを与えた。
「「「「「「……ッ」」」」」」
ここにいる全員が悠也の勝ちを確信していたが、反撃に失敗した。
「えー、なんで……にいちゃんの方が上手いのに、どうして??」
なんとなく感じていた、ボクの悪い予感が的中した。
「……悠也だからだよ」
「うん……お兄ちゃんだからだよね……」
「「「「え……??」」」」
「お兄ちゃんとレインさんには圧倒的な実力差がある。その差を埋めるために、おそらくレインさんはお兄ちゃんの動きのみを研究して、ここのタイミングで壁ジャンプ、パルクールをすると予想して動いたんだと思う……」
「正直あそこにトラップを置くのも、拡張マガジン、ライトマシンガン、装備アーマーの1段階強化、全て悠也がサブマシンガンを使うのを読んでいたからの行動だよね〜」
「ということは、悠也くん大ピンチじゃないですか!!」
「……悠也のプライドが許すかわからないけど、勝つなら例えば彩音ちゃんの動き、ボクの動きみたいに他の人の動きをトレースして、レインの“悠也対策”を無効化するしかないかな……」
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