第65話 最強と最恐
「そろそろだな……」
「うう……なんか緊張してきました……」
学校が終わったのち、俺と雪奈はプライベートマッチの訓練場にいた。
可憐は母がお見舞いに来ているらしく、夜の時間しかできないらしい。急な出来事で仕方がないので、俺たち2人で面接を行うことになった。
時間は5時30分集合ということで、そろそろ来るだろう。
「まあ俺が基本話すから、雪奈は立っているだけでいい。下手なことは言うなよ」
「私を誰だと思っているんですか!! 任せてください!!」
俺たちがそんな会話をしていると、レインが参加したというログが表示された。
俺と雪奈が屋外訓練場の部分に座っていると、後ろから足音が聞こえた。振り向くと、そこにはレインがいた。
「ひっ、ひいっ……」
雪奈は怯えて、全力で俺の後ろに隠れた。
(おいおい……ってかでっけぇな……)
「対面して話すのは初めてだな……初めましてレイン、俺はYUU」
「あ?? てめぇには用ねぇよ」
レインはそう言って、あたりを見回していた。
「は??」
「俺はKARENさんに用があって来た。お前らの世界大会ごっこなんかに付き合うつもりはねぇよ」
「……おい、今なんつった??」
俺は武器ストレージからサブマシンガンを取り出し、レインの頭に突きつけた。
「よく聞こえなかった。もう一度言えよ……3位」
俺がレインを挑発すると、レインは拳を握りしめて俺の頭めがけて殴りかかってきた。
俺はそのパンチを避けて、サブマシンガンをレインの頭めがけて放った。だが、レインの蹴りが俺の胴体に当たって軌道が逸れ、弾は胴体に命中した。
「ちっ……」
「やっぱり、てめぇは気に食わねぇ。さっさとKARENさんを出せよ」
レインは半分キレながら俺に言った。
「あいつは今、用事で席を外してる。ってかKARENに何の用だ」
「うるせぇ、てめぇには関係ねぇ。俺個人の問題だ」
「一応俺がリーダーだ。理由を言わない限りKARENとは会わせない」
「お前がリーダー? 冗談きついぜ。KARENさんがお前みたいなネットイキリの部下になるわけないだろ……」
「KAREN、YUKIは部下じゃない。俺がリーダーなのは事実だけど、3人に上下はない」
「それはそうだろうな」
「……何が言いたいんだよ、はっきり言えよ」
俺がそう言うと、レインは頭を抱えた。
「てめぇはどこまで知ってるんだよ……??」
「何が……」
「KARENさんの病状のことだ。どこまで知ってんだよ……」
「……」
(可憐はレインのことを知らなさそうだったが、レインは病気のことを知ってるのか……? でも下手なことは言えないな……)
「……噂程度でしか知らない。KARENは俺に詳しくは話してない」
「その程度の知識なら、お前らKARENさんから手を引け。あいつは重い病気を持ってる」
「手を引くつもりはない。あいつの意思を尊重したい」
「俺はKARENさんに、無理をしないでいてほしいんだよ……」
「……その情報はどこから仕入れた」
俺は探りを入れてみた。
「世界王者rally。俺はアジア1桁キープを条件に、最もKARENさんに近いプレイヤーに、なぜ彼女がランキングを辞めたのかを教えてもらった」
「……」
「rallyが言うには、KARENさんはソロで世界大会の権利戦に出るつもりだった。でも病気の悪化で絶望して、もう立ち上がれないほど落ち込んでいた。そんな彼女をお前が説得できるわけがない……何か裏があるんだろ」
「……」
(レインは俺と可憐が出会う前のことを聞いたんだろう。たしかに、最初はそうだった。でも今は――)
「だから手を引け。病弱なKARENさんに無理をさせるな……」
「KARENちゃんは、弱くないです!!」
俺が振り返ると、雪奈が震えながらも立っていた。
「誰だよてめぇ」
「KARENちゃんは病に苦しんでいるかもしれません。でも、夢を叶えるために諦めたりしません。私やYUU君よりも、ずっと強い女の子です!!」
「あ?? 病弱なの知ってるのかよ。なら余計に無理させんな。てめぇらが変なこと吹き込んでんじゃねぇよ!!」
レインは雪奈に威圧的に近づき、見下ろしていた。雪奈は泣きそうになりながらも必死に耐えていた。
俺はその姿を見て、可憐や雪奈、そして俺たちの夢をごっこ扱いしたレインに怒りが頂点に達した。
「なあレイン、タイマンしようぜ」
「あ……??」
「俺が負けたら、KARENから手を引く。でも俺が勝ったら、俺の言うことを聞け」
「……条件は?」
「それはKARENに、このリプレイを見せてから決める」
「話にならねぇ」
「怖いのか……? 俺は『ソロ』で2位。お前は選りすぐりのメンバーを集めて『3位』。せっかく雑魚の意見を聞いてやろうと思ったのに、残念だ」
俺がそう言うと、レインは俺の胸ぐらを掴んだ。
「おい、誰に物を言ってる。口を慎めよ……クソガキが……」
「なら逃げるなよ。そのヤクザみてぇな面、ぐちゃぐちゃにしてやるよ……」
「上等だ、この野郎……」
こうして俺とレインは、ソロでタイマンをすることになった。
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