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プロゲーマーを目指していた俺、妹はアジア最強の配信者でした。  作者: 城ヶ崎大地


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第62話 破壊の女王

「できました!!」


 雪奈はSNSに投稿する文が書けたみたいで、スマホ画面を俺と可憐に見せた。


「まあこんな感じでいいな」


「うん、ボクもいいと思う〜」


 俺と可憐と雪奈のハンドルネームと実績、前期に最高ランク(チャンピオン)到達かプロリーグに参戦したことがあるプレイヤーのみでの募集、面接を行なってから決めるといった内容だ。


「そういえば、悠也君に詳しいことは聞いていないんですけど、可憐ちゃんの病気ってどんな症状なんですか??」


「話してなかったんだ…… 普通にしてたら大丈夫なんだけど、激しい動きとかしちゃうとめまいと胸が痛くなってしまう…… こんなボクだけど、雪奈ちゃんはボクと一緒に戦ってくれる??」


 可憐はいつもの緩い感じではなく、鋭い目つきで雪奈を見た。


「はい!! 私は全然構いませんよ!!」


 雪奈はベッドで横になっている可憐の手を握った。


「これからよろしくお願いします、可憐ちゃん!!」


 可憐は雪奈の胸に飛びついて、ぎゅっと抱き締めた。


「あっ…… あの…… か、可憐ちゃんっ……」


 雪奈が咄嗟の行動に驚いていると、可憐の目から涙が流れていた。


「……ありがとう、こんなボクに力を貸してくれて……」


 雪奈は涙を流す可憐をぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。


「“こんな”って言わないでください、すごいじゃないですか!! 体が不自由でも夢をあきらめずに頑張っているって!! 私ならきっと無理だと決めつけて、あきらめてしまうと思います……」


「それは悠也が誘ってくれたからってだけで…… ボクは何も……」


「俺は勝つために誘った、それだけだ」


 俺は涙を流す可憐を見て、後ろを向いてそう言った。


「うん、そうだったね〜」


 俺の返事を聞いて、可憐はいつもの緩い感じの口調に戻った。


「ちょっと悠也君、お手洗いに行きたいので場所を教えてもらってもいいですか??」


「ん、トイレならここを出て右に曲がった先だよ」


「ちょっと、悠也君の説明が意味わからないので来てください」


「ちょ、ちょっ、待て。袖を引っ張るなって」


 俺は雪奈に袖を引っ張られて、可憐の病室を出た。


 


「んで、なんだよ」


「“なんだよ”って!! あまりにも酷くないですか??」


「ん??」


 雪奈は俺に険しい顔をして、俺の胸元をポンポンと優しく叩いた。


「勝ちたいからって…… 確かに勝つことが目標です。でも病気で苦しんでいる可憐ちゃんに…… 可憐ちゃんに対して酷いと思います!!」


「……俺が可憐を仲間に誘った時、不思議だったことが1つあった」


「え……??」


「どうして可憐は俺の誘いをすんなりと了承したんだろうって思って。俺は家に帰ってから一晩考えた」


「どうしてって…… 可憐ちゃんも世界大会で勝ちたいからですか??」


「それもあると思うけど、多分違う」


「んじゃあ、何故でしょうか……??」


「もう少しで1ヶ月くらいか…… 一緒にいる時間ができて気がついた。多分可憐は気を使われるのが嫌なんだと思う」


「根拠はあるんですか??」


「根拠はないし、あくまで憶測だけど…… 昔から持病で周りから気を使われたりしていたんだと思う。俺が誘った時にrallyが病気のことを話した瞬間、彼女は悔しそうに奥歯を噛み締めていた」


「なるほど……」


 俺はそう言って、病室の前の椅子に座った。


「破壊の女王か……」


「なんですか?? その厨二病みたいな名前」


「あ〜いや、なんでもない。独り言だ」


「悠也君って、不思議な人ですね……」


「いやお前にだけは、言われたくないけど……」


 “破壊の女王”、それは可憐が全世界共通サーバー時代にソロで100連勝した時に呼ばれた名。


 シーズン2というラグナロクフロンティア開始2ヶ月目で、今と比べてまだ全体のプレイヤーレベルが低かったとはいえ、ソロで100連勝という前代未聞の記録を出した。


 当時は今ほど人気ゲームではなく、配信サイトもそれほど利用されていなかったのでSNSの噂程度でしか知らないが、可憐は今の緩い感じではなくて、病気のことを話す時の鋭い雰囲気で敵を薙ぎ倒す――殺人鬼のようなプレイヤーだったらしい(猛者ということしか知らなくて、仲間になってから調べた)


 今の緩くて適当な可憐が、荒れた性格というのは考えにくい。


 理由はおそらく、現実世界で溜まっていたストレスをゲームで発散していたと考えるのが自然だ。


 ならストレスを貯めない状態にするには、気を使わずに普通の友達の様に接することが一番、可憐にとって幸せなことだと思う。


「まあ、悠也君の予想は聞いた限りだと、的を得ているかもしれませんね」


「あくまで予想だ。可憐本人に聞くことはない…… というか、聞くことで可憐が苦しい気分になったら嫌だから、心に留めておくだけにしてくれ」


「わかりました。私が間違っていました…… ごめんなさい悠也君、私……」


 雪奈は俺に申し訳なさそうな表情で、下を向いて謝った。


「いや…… 俺も詳しいことを話してなかったし、別に気にしなくていい。とりあえず、あいつのところ戻って作戦会議するぞ」


「はい!!」


 雪奈と俺は可憐の病室のドアを開けて、中に入った。

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