第39話 彩音に嘘は通じない
「ナイス、強すぎる〜」
「いや〜 さすがに強すぎたね」
「お兄ちゃんとKARENさん、本当に上手です!!」
俺たち3人は、最高ランク帯の敵を4対3という不利な状況にも関わらず、一瞬でボコボコにしたので余韻に浸っていた。
「それより、あちゃんってこの間のアジアリーグの1位のあの子だよね??」
「はい!! みんなのおかげで1位になれました!!」
「やっぱりそうだよね〜 ボクは配信でよく見てたよ!! 本当にうまいよね〜」
「えへへ〜 そう言ってもらえると嬉しいです!!」
可憐と彩音は楽しそうに話していた。
最初はどうなるかと思っていたが、和解(?)したようで安心した。
二人が話をしていると、可憐のボイスチャットから「ピピピッ」という機械音のようなものが聞こえた。
「何の音??」
「大丈夫か……?? 可憐……」
「ごめん、二人とも。ちょっと点滴がなくなって容器の入れ替えをしないといけないから、ボクはこの辺でやめるね〜」
「ああ……大丈夫そうならいい……おつかれさま、できそうな日を後でチャットで送ってくれ」
「はいよ〜」
可憐はそう言って、ゲームを消し、俺と彩音だけのパーティになった。
「お兄ちゃん……ちょっとお話ししたいから、お部屋に行ってもいい??」
「ん?? ああ……いいよ」
彩音はゲームの電源を落とし、ノックをした後に俺の部屋に入った。
俺がゲーミングチェアに座っていると、その横に彩音がきた。
「お兄ちゃん、KARENさんって何か大きな怪我とかしてるの??」
「ああ、心臓病で病院に入院している」
「そうなんだ……でも、どうして入院している人を仲間にしたの??」
「あいつは俺と同じ夢を持ってたから……」
「ん??」
「可憐は俺と同じく完全ソロでランクを回していた。そしてあいつは自分が病に苦しみながらも、最後まで戦っていた。そんなやつに生きる理由を……ってのは建前で、俺が勝つ為だ……」
俺がそう言うと、彩音はふふっと笑った。
「お兄ちゃん、かっこつけなくていいんだよ……??」
「……」
「お兄ちゃんはいっつも、嘘をつく時目を逸らす。本当は病に苦しんでる可憐さんに生きて欲しいから、誘ったのが一番大きいんじゃない??」
彩音にはやっぱり見抜かれるんだなと思った。
俺は自分が世界王者になるために、そんな優しい偽善は捨てないと心の中で思っていた。
感情に左右されず、己の実力を100%出せる人間が真の強者だと俺は思っている。
別に根拠はない持論だが、どうやら俺には捨てきれていなかったみたいだ。
「……いくら病で不自由とはいえ、可憐は強いぞ」
「そうだよね、可憐さんは本当に強かった!! だから私も、もっとみんなと練習しないとなと思った!!」
「やっぱり俺は、弱いな……」
俺は思わずボロを出してしまった。
強引に偽善を捨てて、最強になるために己のエゴで行動する。
そんな存在になれない俺は、頂点を掴む資格はない。
「どうして……??」
「まだ偽善で行動してんだなって思ってさ……」
「偽善じゃないよ、それはお兄ちゃんの本当の優しさだと思う!!」
「え……」
俺は彩音の言葉を聞いて、言葉が詰まった。
「だってお兄ちゃん、さっき可憐さんのチャットから機械のような音が鳴ったときに真っ先に心配してたじゃん」
「それは初めてパーティ組んだからさ、心配で……」
「心配してあげるのは、優しさだと思うけどな〜私は」
「……」
「別に優しくてもいいんじゃない?? 冷酷だから強いって訳でもないと思うし……それに私は優しいお兄ちゃんのままでいて欲しい!!」
「俺、そんなに優しいか……??」
「うん!! 長い間一緒にいる私が保証する、お兄ちゃんは優しいよ!!」
彩音に優しいって褒められて、なんだか嬉しかった。
「……ありがと」
俺が照れて彩音に感謝を伝えると、彩音は俺の顔をつんつんと触った。
「ちょっ……」
「照れてる〜」
「や、やめろよ。恥ずかしい……」
俺は椅子から立ち上がり、離れた位置にあるベッドに座って前髪を整えた。
「まあ、何にせよ。可憐は俺の強力な仲間だ!! 彩音!! 次に戦う時は、絶対に負けないからな!!」
俺は彩音に弄られるのが恥ずかしく、話を切り替えるために宣戦布告をした。
「お兄ちゃんをうーちゃんが、いじる理由少しわかった気がする……」
「さすがに彩音さんは、緋奈ちゃんみたいに俺で遊ばないよね??」
「え〜 どうしようかな〜??」
彩音はどこか緋奈のように、俺の事をいじってきた。
推しにこんな事をされるのは、正直ご褒美だ。
だが妹である彩音にいじられるのは、さすがに義理の兄としての威厳?? 尊厳?? を失ってしまう気がするので、咄嗟にそんなことを考えないようにした。
「まあ冗談だよ!! お兄ちゃんは尊敬してるから、やらないよ!!」
「それはよかった……」
俺は彩音が冗談だと言ってくれてほっとした。
そんなことを話していると、「お風呂が沸いたよ」と母から彩音にメッセージアプリで通知が届いた。
「あ、お風呂湧いたみたいだから、お風呂入ってくるね〜」
「ああ……了解」
「んじゃあ、また後で話そ〜」
彩音はそう言って俺の部屋を出た。
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