第32話 井の中の蛙
4Tとの試合の後、俺はメンバーとなんやかんや和解をした。
「まさか、あちゃんのファンだとは知らず、すみませんでした……」
「すみません……僕も言いすぎた……」
スパイダーとPASERIの2人は申し訳なさそうに俺に謝罪をした。
「いや、俺も頭に血が上ってすみません……反省してます」
俺が謝ると、3人はあははと笑った。
(いや、笑い事じゃないが?? 次言ったら本当にボコボコにするか……)
「それにしても強すぎやん、YUU!!」
「いや、まだまだですよ……まだまだ……届かないんです……」
確かにさっきプロ相手に1人でボコボコにしたが、彩音1人には及ばない。
俺が悔しそうに言うと、次の対戦カードが発表された。
「ッ……」
俺たち4人は対戦カードを見た瞬間、会話が止まった。
対戦相手は『エンペラー』。前年度APACリーグ1位抜け、アジアで最も強いチームだ。
「嘘だろ……まさかラスボスか……」
「これはしんどいな……」
「勝てる気がしない……」
3人は絶望し、顔が真っ青になっていた。
ただ、俺だけは表情を変えなかった。
確かに彼らのチームは前年度アジアプロリーグ1位、そして世界大会でギリ予選落ちという好順位。圧倒的に強いチームだが、俺には勝つ自信があった。
(彼らが強いのはわかる。だが、あの彩音と互角に渡り合えた。それに下位チームとはいえプロ4人を圧倒した俺とこのメンバーなら、勝てないにしても、そこそこいい勝負くらいはするだろう……)
俺はチャットアプリで、先週の敵チームの配信を共有した。
「彼らはSMG2人、アサルト2人の近距離戦タイプなので、今回はスパイダーさんのルームトリック作戦を使います」
スパイダーの編み出したルームトリック作戦は、相手を1人が誘導し、残り3人で奇襲を仕掛けるという、まさに蜘蛛の巣に獲物を誘い込む戦法だ。
「よしきた!! なら囮は足が速いクローズで、残りの俺たちはポジションで待ち構える感じでいくぞ!!」
スパイダーの作戦はプロシーンではおそらくだが使っているのを見たことがない。
初見殺しならナンバーワンにも勝てると思い、俺たちは「準備完了」のボタンを押し、戦場に足を踏み入れた。
*
試合が始まった。俺たちは西側のスタート地点にスポーンした。
マップは高層ビルが建ち並ぶニュータウン。世界大会でも選ばれている人気マップであり、相手チームの得意マップ。少々やりづらいが、ランダムで決まっているので仕方ない。
「とりあえず、最初に2人誰でもいいから引きつけて、3人で奇襲を仕掛ける。俺たちは駅の隣にあるビルの2階で待ち構えるので、クローズさんはこの通りを通って来てください」
俺はマップをクローズに見せ、細かく動きを確認した。
「了解!! んじゃあ、行ってくる」
クローズはそう言ってサブマシンガンを持ち、敵のスポーンしたであろう方角に進んで行った。
「んじゃあ、俺たちは配置について待つか!!」
「そうだね……とりあえずYUUは、階段の上……」
「ぐぁっ……」
「「「……ッ」」」
囮で敵陣に向かったクローズの体力が一瞬で消滅し、ボイスチャットからいなくなった。
俺は直感でこの場にいたらまずいと思い、アサルトライフルを持ってビルの2階から飛び降りた。
飛び降りた瞬間、アサルトライフルでスパイダーとPASERIの2人がヘッドショットを受け、体力が消滅した。
「は??」
「嘘だ……」
2人の体が消滅し、ボイスチャットからもいなくなった。俺1人だけになってしまった。
弾丸の飛んできた方向を見ると、チームリーダーのグランディネアがアサルトライフルを持って立っていた。
俺のアバターより少し高く、黒髪のセンターパートにピアスが両耳に刺さってる青年。動画で見た、昨年のアジアリーグを制したチームリーダー『グランディネア』だ。
「よぉ、プロリーグ参戦おめでとう」
「……」
「なんか言えよ。俺は素直に褒めてんだぞ……あれか?? お前の仲間も寄せ集めとはいえアジアランキングで高順位。こんな一瞬でやられるなんてありえないとか思ってるんだろ??」
「……」
心を読んでいるのか、グランディネアは俺の思っていることを言ってきて、俺は何も言えなかった。
「ハッキリ言ってぬるいよ。こんな雑魚の寄せ集めでこのステージに来たってのか……笑わせる」
「仲間?? いや、こいつらはただの人数合わせだ……俺がお前ら4人を倒せばいいだけだろう」
俺はアサルトライフルをグランディネアに向けて発砲した。
グランディネアは銃をその場に捨て、俺の弾丸を腰のホルダーから取り出したサバイバルナイフではじき飛ばした。
俺や彩音でも狙ってやらない限り不可能に近い神業を、彼は瞬時にやってのけた。
「……ッ」
「なんかガッカリした、所詮はこの程度か……」
グランディネアは俺の脇腹を蹴り飛ばした。
俺の体は吹っ飛ばされ、ビル横の駐輪場に倒れて自転車の下敷きになった。
(まだ体力はある……せめてこいつだけは倒す……)
「……まだ負けてない」
「なんかお前、勘違いしてるようだから教えてやるよ」
グランディネアは自転車の下敷きになっている俺の体の胸ぐらを掴んで持ち上げ、地面に叩きつけた。
「ぐはっ……」
俺の体力ゲージが残り1割程度になり、視界がぼやけてきた。
「お前は最強じゃねぇよ」
グランディネアはそう言って、地面に投げ捨ててあったアサルトライフルを俺の全身に撃ち込み、俺の体力は0になった。
俺は彩音以外の人間に、ランカーになってから初めて完敗した。
読んで頂きありがとうございます!!
よろしければブックマークや感想、レビューの方をいただけると今後の活動の励みになります!!




