第25話 推しの寝顔は天使のようだった
ピピピピ、ピピピピ。
アラームの音が俺の部屋に響いた。
「んんっ…… あ〜、もう朝か……」
時刻は7時半。昨日の夜、彩音と母と3人で話しながらご飯を食べた後、風呂に入ってすぐ寝たが、寝不足な感じがしてなかなか目が開かなかった。
とりあえずカーテンを開けると、太陽の光を浴びて目が覚めた。
彩音は昨日「絶対起こしに行く」と言っていたが、俺の方が早く起きたようだ。
「SNSは…… 彩音のグループの運営が頑張ったからか、大分落ち着いてるな…… さすがだ……」
昨日100件ほど来ていたメッセージは、メッセージ機能を拒否設定にして対処したことで来なくなり、エゴサをしても目に入る程度まで落ち着いていた。
「あれ、昨日起こすって言ってたのに、彩音来ないな……」
SNSを5分ほど見て、「そろそろ彩音が起こしにくるだろう」と思っていたがなかなか来ないので、俺は今日着る予定だった黒のパーカーに着替えて彩音の部屋の前に向かった。
コンコンと2回ノックしたが反応がなかったので、俺は彩音の部屋のドアを開けて中に入った。
俺は小学生の頃以来、初めて彩音の部屋に入った。
部屋の中には配信用のPC、観葉植物、水色と白色のキーボードやヘッドセットがあり、いかにもゲーマー女子の部屋という感じだった。
(つーか部屋綺麗だな…… 整理整頓しっかりしていて真面目な性格の彩音って感じの部屋だ。散らかってる俺の部屋とは大違いだな……)
彩音の綺麗な部屋を見渡していると、奥の窓際にあるベッドで彩音は寝ていた。
ピンクのもふもふパジャマを着た、真っ白な肌に綺麗な黒髪。まるでお人形さんのような容姿で、義理の妹だが思わず可愛いと思った。
(やっぱ俺はこの美少女が推しだ……今更だけど、やっぱり実感が持てないな……)
まさか推しが妹だとは、今でも信じられない。
俺が前シーズン、アジアの頂点をかけたランキングで俺を超え、個人の試合でも俺を倒した最強の美少女。
そんな少女が、今目の前で眠っている妹だなんて誰が信じられるだろうか。
俺は彩音の椅子に座りながら、そっと左手で彩音の頭を撫でた。
「ったく…… こんな可愛い妹が俺の超える目標か……」
俺が頭を撫で、独り言を言っていると急に眠気がした。
昨日の大会の疲れだろう。全力で息を上げるほどの熱狂は、暖かいお湯に浸かっても、早く布団に入っても回復しきれない。
「彩音も寝てるし、少しだけ寝るか……」
俺は彩音のゲーミングチェアを倒し、ベッドのような形にして寝転がった。
意外にもゲーミングチェアは寝心地が良く、俺の視界は暗くなって眠りについた。
* * *
あれから何時間が経過したんだろう。俺が目を覚ますと、お腹の部分に彩音の布団が横向きにかかっていて、添い寝のような状態になっていた。
「あっ、お兄ちゃんおはよ〜。ごめんね……起きれなくて……」
「え……」
俺が横を見ると、寝た状態の彩音が隣にいた。
妹(元推し)との擬似的な添い寝という、オタクとしては天国な状況。兄妹としては複雑な状況に、俺は混乱した。
(は?? いや、待て待て待て…… え??)
「あ、お兄ちゃん。風邪ひくとよくないから、私の布団かけたけど大丈夫??」
「いや…… 俺はいいんだが、彩音は俺の横で寝るの嫌じゃないのか??」
俺が自分は平気だと伝えると、彩音はクスッと笑った。
「全然いやじゃないよ〜。だって私のお兄ちゃんだし」
「まあ、彩音が嫌じゃないならいいんだけどさ……」
俺はとりあえず体を起こし、掛け布団を彩音に返してスマートフォンで時計を確認した。
時刻は14時。俺は7時間も寝ていたようだ。
「お兄ちゃん、せっかく朝起きて着替えてくれたのに、私が起きれなくてごめんね……」
「いや…… 俺も寝ちまったし…… 彩音は何時頃起きたの??」
「えっと…… 多分8時頃かな。お兄ちゃんが横に寝てたから、掛け布団を半分貸して2度寝して、さっき起きたよ!!」
完璧美少女の彩音でも、大会の疲れで2度寝してしまうというギャップ萌えに、俺は内心「可愛い」と思った。
「やっぱり大会の疲れ??」
「うん!! やっぱり強い人たちと戦ってきたから、疲れが取り切れなかったみたい!!」
「俺もそうだった……。どうする?? 準備して買い物に行こうか??」
俺がそう言うと、彩音は首を横に振った。
「今2時だし、ご飯食べたら3時頃……。買い物の時間少なくなっちゃうから、今度でもいい??」
「うん、俺はいつでもいいよ」
「なら、今度にしよう〜」
彩音はそう言って、布団から出てベッドメイキングをした。
「まあ世界大会予選、練習カスタム試合まではまだ時間あるし、それらが始まるまでに行こうか」
「うん!! 絶対に約束だよ!!」
彩音は俺の前に左手の小指を出してきた。
俺は右手を出し、彩音の指と結んで約束をした。
「んじゃあ、少し遅いけどお昼ご飯にしよ」
「ああ……」
俺は返事をし、スマホをいじっていると、彩音は恥ずかしそうにモジモジしていた。
「あの……お兄ちゃん……」
「ん……どした??」
「えっと……着替えるから外に出ててもらってもいい??」
「す、すまん……」
俺は急いで彩音の部屋を出て、扉を閉めた。
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