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プロゲーマーを目指していた俺、妹はアジア最強の配信者でした。  作者: 城ヶ崎大地


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第20話 天才を超えた瞬間

「え…… 嘘っ……」


 俺は弾丸が脳天に直撃する寸前、反射的に首を横にずらして弾丸を回避した。

 心臓が一瞬止まるような錯覚。視界の端で閃光が走り、耳鳴りが響く。ほんの一瞬の差で生死が分かれる。もしタイミングを間違えていたら、今頃は画面に大きく「YOU LOSE」の文字が浮かんでいただろう。


「バカいってぇ…… だが…… 上手くいってよかった……」


 息を荒げながらも、俺はアサルトライフルを地面に投げ捨て、腰に差していたハンドガンを握りしめる。指先には汗が滲んでいて、トリガーを引く感覚が重い。だが、それでも構わない。ここで立ち止まったら、勝利はない。


「嘘でしょ…… なんで……」


 有栖の声は驚愕と困惑に満ちていた。彼女は素早くスナイパーライフルを構え直し、俺に狙いを定める。

 乾いた発砲音。鋭い弾丸が俺を襲う。だが俺は全身をしならせ、壁を蹴ってパルクールのように跳び回り、その軌道をかわす。銃弾が頬を掠め、熱を帯びた風が皮膚を焼く。ほんの少しでも遅ければ即死――そんな緊張感が体中を駆け巡った。


「俺はこんなところで、負けられないんだ」


 喉の奥で呟きながら、俺は有栖との距離を一気に詰める。狙うは急所ではない。足だ。

 トリガーを絞る。乾いた銃声と共に、弾丸が一直線に有栖の脚を撃ち抜いた。彼女は短く悲鳴を上げ、バランスを崩して木の根元に倒れ込む。


「はぁ…… はぁ…… 閃光弾で目眩しをしたのに、なんで弾丸を回避できたんですか……??」


 息を荒げ、苦しそうに問いかける有栖。その声には敗北の色と、理解できない不気味さへの恐怖が入り混じっていた。


「秘密、と言いたいところだけど…… どうせ配信履歴でバレるからいいか」


 俺は肩をすくめ、笑みを浮かべる。

 ただ、その笑みの裏では、手の震えを必死に抑えていた。今の回避は偶然ではない。必然だ。そう自分に言い聞かせなければ、足がすくんでしまう。


「……おにい」


 有栖が、ぽつりと口にしかけた瞬間、俺の全身が硬直する。

 危ない。観客や視聴者に“本当の関係”を悟らせるわけにはいかない。


「あああああああ!! なんだ…… 俺様になんか言いたいことでもあんのか?? えーさんよ……!!」


 大袈裟に叫び、誤魔化すように笑い飛ばした。胸の奥がざわつく。だが今は気づかれなければそれでいい。


「あ、そうだった…… ん〜とYUUさん、どうやって回避したんですか……?」


「正解は、アサルトライフルを単発に切り替えて、ダメージを上げた状態で自分に発砲して、ダメージエフェクトで閃光効果を上書きしただけ」


「え……」


 有栖の目が大きく見開かれる。

 そう、俺は自傷ダメージを利用した。目が見えない状態で奇跡的に弾丸を避けられる可能性など万に一つもない。だからこそ、自分に撃ち込み、強制的にエフェクトを発生させて視界を“リセット”したのだ。


「どうする…… まだ続けるか?? 俺はまだまだ戦えるが」


「いえ…… 参りました……」


 肩を落とし、彼女は降参を選んだ。画面に大きく「YOU WIN」の文字が浮かび、緊張の糸がぷつりと切れる。俺は椅子に深く座り込み、荒い息を吐き出した。


「よし…… これで彩音と戦える〜」


 ストレッチで首を回しながら、俺は小さくガッツポーズをした。けれど胸の鼓動は落ち着かない。次は――妹との決勝戦だ。


「さて…… コメント欄はどうなってるか……」


 嫌な予感はあった。案の定、配信画面を開くとコメント欄は炎上状態。罵倒と挑発、応援が入り混じり、画面が止まらないほど流れていく。

 TAKIが必死にモデレーションをしていたが、とても追いつけていなかった。


「ネットでイキるのやめようかな……」


 自分の過去の発言を思い返し、少し後悔が芽生える。


【今のは運だろ】

【女の子相手にイキるボッチ君】

【えーちゃんの決勝が見たかった!!】

【待ってろ、えーちゃん…… 俺様がこんな雑魚ぶっ倒してくる…… 籍を入れるのはその後だ……】


 画面に並ぶ文字列は容赦がない。

 だが、その中に紛れて「お前は強かった」「いい試合だった」という声があるのも確かだった。


「何が運だよ、おめぇらにあれができんのかよ下手くそが!! 早くID送ってこい、二度とPCの前に座れんくらいボコボコにして…… ん……」


 思わずブチギレて叫んだところで、通話アプリに着信が入った。


「あ…… 繋がった。お兄さん…… いいゲームだった……」


「有栖ちゃんか。俺もめちゃくちゃ強い有栖ちゃんと試合できてよかったよ」


「褒められると嬉しい…… えへへ…… それより、決勝の相手は確認した??」


「ん…… あ〜もう出てるのか。どれどれ……」


 画面のトーナメント表を確認する。決勝戦――そこに並んでいたのは、俺と彩音の名前だった。


「やっぱり…… 彩音か……」


「彩音ちゃんは最強…… お兄さんには負けない……」


「確かに彩音は強いけど、今回は俺が勝つ!! 応援しててくれ」


「それは無理…… 彩音ちゃんの方を応援する……」


「ですよね〜」


 あっさりした答えに苦笑する。だが同時に、その率直さが心地よかった。


「でも…… 強かったのは本当だから…… 簡単には負けないでね……」


 その言葉に胸が熱くなる。推しからの応援なのか、天才から認められたことへの喜びなのか。どちらにしても、嬉しさで自然と笑顔になっていた。


「あ、ありがとう…… んじゃ試合で勝って、俺が最強だってことを証明してくる」


 通話を切ると、静けさが部屋を満たした。だが胸の内では雷鳴のように心臓が鳴り響いている。


「さて…… いよいよか……」


 決勝戦。相手は彩音。血が繋がった妹であり、最大のライバル。

 武者震いが止まらない。手の平には汗。息は浅く早い。それでも――退けない。


 公式配信を開き、彩音のフューチャー試合の終了を確認する。インタビューが終わったのを見計らい、彼女に電話をかけた。


「あ、彩音聞こえる??」


「うん、聞こえるよ〜」


「これから決勝だけど、彩音って何の武器を使う??」


「ん〜 サブマシンガンを使うつもりだったよ〜」


「そっか、なら俺もSMG使う。お互い同じ武器で、完全に実力で決まる勝負にしよう」


「分かった!! 負けたら罰ゲームだからね!!」


「ああ。んじゃあ、お互い頑張ろう」


「うん!!」


 通話を切り、ヘッドホンを装着する。鼓膜を圧迫するような静寂の中、自分の鼓動だけがやけに大きく響く。


「よし…… じゃあ俺が勝って、アジアで一番上手いって証明してやるか……」


 深呼吸し、マウスを握る。カーソルを動かし、彩音に対戦の招待を送信した。


 ――運命の決勝戦が、始まろうとしていた。

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