第134話 4人の強者
「オーマイガー!! Dブロック優勝はAIUE、グランディネアでも成し遂げられなかったAPAC NORTHで初の決勝ラウンドの挑戦権を獲得だ!!」
海外の有名男性配信者がマイクを持ち、興奮で立ち上がった。
「「「「やった〜!!」」」」
彩音たち4人も席から立ち上がり、全員で輪になって抱き合った。
4戦目、1ラウンド目を落として後がない状況に追い込まれたものの、彩音と緋奈のコンビで火力を出して勝利。
最終ラウンドは美佳が敵の位置を読んだオーダー、有栖のスナイパーが刺さって勝利した。
彩音たち、あいうえクランは予選ラウンド4勝を挙げ、APAC NORTH初の決勝ラウンドへ進出した。
「緋奈…… ぐすっ……」
緋奈のお父さんは喜んで抱き合っている4人をカメラで撮影し、涙を流した。
「ちょっとパパ、まだ終わってないよ!! 泣かないで!!」
「緋奈が笑顔で喜んでいるところが、嬉しくてつい……」
「彩音ちゃん、リーダーの人は先に会場へ行って説明があるみたいよ」
「行ってくるね!!」
「ふぁいと……」
彩音はスマホを持って、会場から出た。
(少し早いかな??)
タイムスケジュールよりも30分早く着いてしまった。
椅子に座ったのち、時間を潰すためにスマホで大会の本配信を開いた。
1回戦はEGCとAPAC Southのプロリーグ1位突破チームとの試合だった。
悠也がEGCと相性が良くなく、1番苦手と言っていたチームだ。
(がんばれ、お兄ちゃん……)
もうとっくに試合は終わっているが、彩音は心の中でEGCを応援した。
1ゲーム目、EGCは敗北して追い込まれる。
続く2ゲーム目も、悠也を残して3対1と追い込まれていた。
「……ッ」
自分のことではないが、緊張でドクンドクンと心臓が動いているのを感じる。
敵とはいえ、大好きな兄が負けそうな場面を見て、彩音は自分が試合をしている時よりも緊張していた。
(お願い…… お兄ちゃん……)
絶体絶命のEGC、彩音が手を合わせて祈っていると、トントンと誰かが肩を叩いた。
「きゃっ……」
びっくりして振り返ると、そこにはEGCのユニフォームを着た悠也がいた。
その姿を見た瞬間、彩音は嬉しくなった。
「ごめん彩音、驚かせちゃった??」
「お兄ちゃんだったんだね、びっくりしたよー」
「すまん。まあ、お互い無事に決勝まで残れてよかった」
悠也は彩音の隣に座った。
「え、あの状況から1回戦勝てたの??」
「ああ…… 正直負けたかもって思ったけど、多人数相手は彩音たちとの練習で慣れてる。つーか俺らは敵同士だから心配は無用だ」
「そ、そうだよね!! でも、やっぱりお兄ちゃんはすごいね〜」
「そういう彩音は最終戦まで無敗だろ。そっちのがすごいよ」
「えへへ〜 ありがと」
「俺たちと当たるまで負けんなよ、彩音」
「そっちこそ、絶対に来てね!!」
悠也と彩音が会話をしていると、Cブロック1位のFightersリーダー・rally、Aブロック1位のWhiteInfinityリーダー・ホワイトが歩いてきた。
ホワイトはrallyと同じくらいの身長で、金髪のロングヘアにスパイラルパーマをかけた、海外プロ屈指のおしゃれな選手だ。
「今年こそ、お前をぶっ倒す」
「やれるもんならやってみろ、まあ無理だろうけど」
翻訳機で少しオブラートになっているものの、海外選手特有の激しい煽り合いをしながら歩いていた。
悠也と彩音は真逆の空気感に驚き、2人ともキョトンとした。
「お、YUU君。約束通り来たんだね。それと、この子があーちゃん??」
「はい、私がそうです」
「ここだけの話、可憐と同い年??」
rallyは彩音の近くまで来て、耳を傾けた。
「可憐さんはおに…… YUUさんと同い年ですので、学年は3つ下ですね」
「Really saying??」
rallyのあげた声は、翻訳機でも翻訳できないほど裏返っていた。
そんなrallyを見て、ホワイトはクスクスと笑った。
「急にどうした」
「いや、この子の年齢聞いて驚いただけさ。やっぱ若さは羨ましいよ」
「俺は別に興味ない。そんなことよりYUU君、初めまして」
「は、初めまして。EGC所属のYUUです」
「WhiteInfinity所属のホワイトだ、よろしく」
悠也とホワイトは握手を交わした。
「世界初のソロ称号を持つ君とは一度会ってみたかった」
「そう言ってもらえて光栄です」
「最高の試合にしよう」
「はい!! 全力で行きます!!」
そんな会話を廊下でしていると、女性スタッフがやってきて、リーダー1人1人にリストバンドのようなものを渡した。
「決勝進出おめでとうございます!! デバイス等のセッティングをしたのち、30分の休憩を挟みます。そして予告していた通り、A対B・C対Dで試合を始めます。最初はAとBのEGCとWIからご案内します。AIUEとFISはこちらのスタッフについてきてください」
悠也とホワイトはスタッフに誘導され、決勝ラウンドが行われるステージへと案内された。
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