第13話 中学生の妹が配信できた理由がやばすぎる……
「よし…… とりあえず、100位以内には入ったな」
彩音との約束をしたのち、俺はソロでランク戦をしていた。
学校もあるし、何よりアジア2位にまで上り詰めた直後ということもあり、今回は開幕ランキングへのやる気が出ず出遅れていた。
正直、毎日8〜10時間以上ゲームをやらないと、1位どころか100位に入るのも厳しい。
そんな中、学校を終えて課題を片付けてからプレイし、現在89位。
(誰か褒めてくれよ…… この短時間で維持してる俺を……)
「とりあえずSNSに投稿っと…… いや〜俺のアンチがランキング戦やってるのに気づいて、ゴースティング(大物や配信者と同じ時間にあえて被せて、同じ試合に意図的に参加して荒らしたりする行為)されたけど、弱すぎだなこいつら」
SNSには、「89位に乗りました!!」と投稿した。
案の定、数分後にはコメント欄にアンチからの暴言や荒らしコメントが殺到した。
「えっと、この人は…… うわ、SNSの“1000億円プレゼント企画”に『欲しいです』ってリプしまくってるやつじゃん……」
「こっちは、えっちなアカウントにいいねばっかの人だし……」
いやまあ、自分で言うのもあれだが、トッププレイヤーに悪口を書いてくるような人間がどんなのかって予想はついてた。
実際に見てみると、なんだか虚しくなった。
「ん…… あれ…… でも応援コメントも来てる」
荒らしに埋もれて最初は気づかなかったが、応援コメントも数件届いていた。
以前は数ヶ月に1回あるかどうかのレベルだったので、素直に嬉しい。
(ありがたいことに、最近海外プロに目をつけられたのもあるかもな……)
俺は批判コメントを完全に無視し、応援コメントに「ありがとうございます」と丁寧に返信した。
コンコン、とドアがノックされる。
「お兄ちゃん、もう行ける〜?」
「マッチの合間に準備したから、行けるよ」
白のパーカーにズボンという、いつも通りの格好で部屋を出る。
「お兄ちゃん、いつもその格好だね〜」
「俺に“オシャレ”なんて称号は似合わないからな」
「ふふっ……」
彩音は俺の言葉を聞いて、くすっと笑った。
「んじゃあ、行くか」
「うん、鍵も閉めたし、オッケ〜!」
俺と彩音は家を出て、近所のファミレスに向かって歩き始めた。
「生々しいこと聞いて悪いけど…… そういえば、配信の収益ってどうやって受け取ってるの?」
「私は中学生だから、現金ではもらえないよ〜。でも、インターネットサイトのギフト券に交換できるの!」
「まあそうだよな…… 俺は高校生になったから現金で受け取れるんだけど、気になっててさ」
「一応ね、事務所……っていうか、うーちゃんのパパに詳しいことは言わないでって言われてるから全部は言えないけど……」
「ちょっと待って」
俺は彩音の何気ない一言に反応して、足を止めた。
「ん〜? どうしたの?」
「どうしたのもなにも…… “うーちゃんのパパ”がって……」
「あ〜、うちの事務所っていうかさ、うーちゃんのパパが運営してる配信サイトの社長なんだよ〜。だからお母さんも配信を許してくれたんだ〜!」
「マジかよ……」
よく考えたら確かに不思議だった。
去年まで中1だった彩音がゲーム配信してて、しかも親公認。
普通なら止められそうなもんだ。
(そりゃ友達の親が運営なら安心か…… それに、いつも配信にアンチや暴言が一切ないのも納得だな)
彩音の配信は、アンチコメントが投稿された瞬間に即削除される。
ずっと優秀なモデレーターがいると思ってたが、まさかの運営本体の力か。
「親友の親が運営なら、そりゃ母さんも許すよな」
「うん!! だから今のところ、変な事件とかにも巻き込まれてないよ〜!」
「それはよかった。彩音はあんまり知らないかもしれないけど…… ネットの民は怖いぞ……」
「そうだよね、気をつける〜!」
(前から思ってたけど、あまりにも純粋すぎる…… こんな感じなのにFPS最強ってなんなんだ)
そんな会話をしていると、ファミレスの前に到着した。
俺たちは予約していたので、すぐに席に案内された。
「お兄ちゃんは何食べる〜?」
「そうだな……」
俺はメニューを開いた。
ハンバーグ、ステーキ、パスタ、ピザ……どれも美味しそうだ。
「ここは無難にハンバーグかな。彩音は?」
「私はオムライス! ここのオムライス、有名なんだよ〜!」
「そうなんだ。じゃあ、俺もオムライスにしようかな」
注文してしばらくすると、店員が料理を運んできた。
「こちら、オムライスです。ごゆっくりどうぞ」
俺は共用のスプーンを取り出し、彩音に渡す。
「ありがと〜!」
「うん。じゃあ、食べようか」
俺と彩音は食べ始めた。
「ん〜、これは美味しい〜! SNSで有名だったから来てよかった〜。って、お兄ちゃんもう食べ終わったの!?」
「……はっ」
皿を見ると、気づかないうちに半分以上食べていた。
「ほら、一気に食べるから。お口にケチャップついてるよ〜」
「え?」
彩音はそう言って、俺の口元を紙ナプキンで拭いた。
「ありがとう……」
「えへへ〜。お兄ちゃんってなんか子供っぽい」
「……なんかバカにされてる気がする」
「そんなことないよ〜」
俺たちは他愛のない会話を交わしながら、オムライスを完食した。
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