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第124話 夏と言えばプールでしょ!!

「にーちゃん!! 今日の午後、気分転換にプールで遊ぶんだけど来る??」


「……は??」


 9時のアラームで目が覚めた俺は、顔を洗って身支度を整えていると、緋奈ちゃんがノックもせずに部屋へ入ってきた。

 口に咥えていた歯ブラシが思わず落ちそうになり、慌てて右手で押さえた。


「夏と言えば、プールでしょ!!」


「いや、それはそうだけど……」


「うっふん〜 私の水着、見たいでしょ〜??」


「……いや??」


 正直、ちょっと気になる気持ちもないわけじゃない。

 というのも、おそらく彩音もいるだろうから、彩音の水着を見ることができるチャンスだと思ったからだ。

 大会の緊張感ばかり続いていたここ数日、気分転換にも悪くない。……が、こうやって誘ってくる緋奈ちゃんの顔がやけにニヤついているのが少し気になる。


「ま、にーちゃんはあやねんのせくし〜な水着にしか興味ないんだろ〜けど」


(彩音がセクシーな水着??)


 清楚な彩音が派手な水着を着ている姿は、俺には想像できなかった。

 むしろ、そういう格好は絶対避けそうなタイプだ。


「彩音がセクシーな水着を着るなんて…… 嘘つくな」


「嘘じゃないよ〜 っていうかあやねんの水着が気になるってこと?? にーちゃんのシスコン〜」


「……」


「あやねんもにーちゃんに見せたいって言ってたから来てね〜!! 約束だよ」


「お、おい!!」


 緋奈はそう言って、走って俺の部屋を出て行った。

 ドアが閉まる直前まで、俺に向けて勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。


***


 お昼ご飯を食べた後、一応藍色の水着を着た上にシャツとハーフパンツを羽織り、プールへ向かった。

 会場の敷地内にある屋内プールは、選手のリフレッシュや撮影にも使えるらしい。

 向かう途中、廊下の先で雪奈と可憐がこちらに手を振っているのが見えた。ついでにレインの姿もある。


「なんでお前らがいるの……」


 てっきり俺1人だけだと思っていたので、俺は3人に問いかけた。


「私は緋奈ちゃんのお父さんに写真を頼まれたので!! むっふふ…… 皆さんの水着写真を合法的に撮れるなんて…… じゅる……」


 雪奈はカメラを持ち、ニヤニヤしていて口からヨダレを垂らしていた。

 その目の輝きは、試合中のスナイパー照準と同じくらい鋭い……いや、危ない。


「ボクは悠也が変なことしないか見に来た〜」


「暇だから、右に同じく」


「しねぇよ!! むしろ雪奈の方だろ!!」


 そんな会話をしながら、更衣室へ向かった。


***


「にーちゃん、うっふん〜 私の体に日焼け止め塗って〜」


 更衣室から出ると、ミントのような綺麗な緑色の三角ビキニを着た緋奈ちゃんが、休憩スペースのマットの上に寝転びながら俺に言った。

 手には日焼け止めのオイルらしきものを持っている。

 プールの周囲は天井までガラス張りになっていて光は十分入ってくるが、日焼けの心配をするほどじゃない。


「屋内なんだから、意味ないだろ……」


「ちぇ〜 それよりどう?? 私の水着は」


 緋奈ちゃんは立ち上がり、腰に手を当てポーズをとる。

 褒めるのは少し悔しいが、正直似合っている。彼女の明るい性格に、爽やかな緑色がよく映えていた。


「ああ、すごく似合ってる」


「ほんと〜!!」


 そんなやり取りをしていると、美佳ちゃんが歩いてきた。


「ちょっと緋奈、準備体操しないと怪我するわよ」


 美佳ちゃんの水着は落ち着いた青色で、形は緋奈ちゃんとおそろい。

 髪をまとめているせいか、いつもより少し大人っぽく見える。


「は〜い」


「全く…… お兄さんも準備体操しましたか??」


「い、いや。俺は今来たところだからしてない」


「そうですか。なら入る前にしてくださいね。怪我をしては大会に支障が出るので」


「は、はい……」


 完全に緋奈ちゃんに注意する流れで、俺まで怒られた。

 でもこういう時の美佳ちゃんって、本当にお姉さんみたいだ。


「それよりさ〜 美佳の水着はどう??」


 緋奈ちゃんが悪戯っぽい顔をして俺に聞いてくる。


「どうって…… うん、普通に似合ってると思うよ」


 俺が感想を言うと、美佳ちゃんは一瞬だけ目をそらして、小さく「ありがとう」と呟いた。

 その表情は少し照れくさそうで、普段のしっかり者の彼女とは違って見えた。


「あ、美佳が照れてる!!」


「う、うるさい!! 2人とも準備体操しっかりやりなさい!!」


 美佳ちゃんはそう言って、早歩きでどこかへ行った。

 耳まで赤くなっていたのは、俺の気のせいじゃないだろう。


「お、おう……」


「ほんじゃ、にーちゃん準備体操でもしますか〜」


「そうだな」


 俺と緋奈ちゃんはプールサイドで基本的なストレッチをした。

 水の匂いとほんのり塩素の香りが漂う中、少しずつ心も解れていく。


「あ、お兄ちゃんも来てくれたんだ!!」


「こんにちは…… お兄さん……」


 後ろを向くと、スクール水着を着た彩音と有栖ちゃんが立っていた。

 彩音は肩まで濡れそうな長い髪をまとめ、少し恥ずかしそうにこちらを見ている。

 有栖ちゃんは対照的に、堂々とした笑顔だ。


「なっ……」


 俺は彩音のスク水を見た瞬間、一瞬脳がフリーズした。

 緋奈ちゃんがセクシーな水着と言っていたが、まさかスク水だとは思っていなかったので衝撃を受けた。

 しかもサイズがぴったりで、シルエットが妙に目に焼きつく。


(なんというか…… その……)


 率直な感想を言えば、俺は間違いなく世界大会じゃなくて刑務所へ行くと思い、なんと言うべきか脳内をフル回転させて答えを探し始めた。

 ただ、彩音がこちらに向ける笑顔はいつもと同じで、それが余計に危険だった。

読んで頂きありがとうございます!!

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