第101話 限界オタクのマネージャー
「無事に終わったな」
「そーだね」
「ううっ…… 皆さんとしばらく会う機会がないなんて……」
俺と彩音、雪奈はパーティーが終わって、家に帰っていた。
可憐たちとは家が反対側なので、他のメンバーは斉藤先生の車に乗って帰った。
俺たち3人は家が近いし、車に乗れる人数も限られるので仕方がない。
「雪奈さん、私たちに会えなくて寂しいんですか??」
「はい…… すごく寂しいです……」
「いいじゃねぇか、別にオンラインでいつでも話そうと思えば話せるだろ……」
「でもぉ…… 悠也くんはコーチで遊ぶ口実ができて羨ましいです!!」
「お前な、コーチをなんだと思ってんだ……」
「雪奈さんもコーチやってくれるんですか??」
彩音が雪奈にそう言うと、雪奈は彩音の手をぎゅっと握った。
「任せてください!! 私がいたら世界大会なんか、余裕で優勝させてみせますよ〜!!」
「そ、そうなんですか……」
彩音はびっくりして、混乱したような表情をした。
「お前が来たらややこしくなるからダメ」
「でもお兄ちゃん、可憐さんに私たちが世界大会で苦手そうな相手の研究を手伝ってもらうって、さっき言ってましたよ」
「え」
「おまっ……」
「可憐ちゃんはいいのに私は蚊帳の外ですか、そーですか……」
雪奈は拗ねて座り込み、地面に生えている雑草を抜き始めた。
彩音は走って、俺の横へ行った。
「お兄ちゃんのいじわる……」
「なっ…… でも雪奈が何すっかわからないし、大会の経験もゼロだぞ……」
「確かに雪奈さんはたまに変なところあるけど…… 私たちのことを応援してくれてる人だし、仲間外れにしたくないかな」
(いや、いつもだろ……)
俺は心の中で思わず咄嗟に突っ込んでしまった。
別に俺もイジワルで言ったつもりはない。
世界レベルのプレイヤーを彩音たちは知らない。だから俺と可憐で知識を共有する。
彩音たちは一応敵で、情報を与えることは利敵行為ではあるが、彩音たちの柔軟な発想力は俺たちには思いつかない立ち回りをするため、世界のTOPプロを攻略する鍵を俺たちも見つけられるという利点が大きい。
今までは半ば遊びのような感じだった。
でも、これから相手にするのはグランディネア以上の大物。いつまでも遊んでるわけにいかない。
そう思っていたけど、まあ彩音たちのチームのコーチだ。
本人たちが決めることであって、俺が口出しするものでもないのかもしれない。
彩音は雪奈の横へ行って、手を差し伸べた。
「よろしくお願いします、雪奈おねーちゃん」
「はっ…… はぅう……」
雪奈はそう言って、はあはあと過呼吸になった。
(言わんこっちゃない……)
俺は呆れて、心の中でため息をついた。
まあこうなった以上、雪奈にもしっかり仕事をしてもらうように、世界予選上がりのチームをまとめた記事を雪奈との個人メッセージに送った。
「あの…… これは……??」
「世界予選抜けたチーム一覧。毎週土曜の夜に俺と可憐、彩音、美佳と対策を会議するぞ」
「試合頑張ったね、よしよし〜 ご褒美のハグ的なのは……??」
「そんなんあるわけねーだろ、とりあえず来週は各マップの研究をするぞ」
「そ、そんな〜」
悲しそうな表情になった雪奈を見て、彩音も思わずくすっと笑った。
「コーチが難しいのでしたら、いっそのことマネージャーになってくれませんか??」
「マネージャー…… ですか??」
彩音の提案を聞いて、俺は確かにいいかもと思った。
俺もメンタル面はあまり自信がないのであれだが、正直彩音たちは大きな敗北というか挫折のようなものをあまり経験していない(マリベルの時に泣いてしまうレベル)ので、世界大会でのミスを引きずらないようにメンタルケアをする存在が必要だ。
彩音たち自身が乗り越えるべき問題でもあるが、中学1年生だけで乗り越えろなんて大人気ないような気もする。
ただ問題なのは、飲み物に変なのを入れたり……的なのはないと思うけれど、あいつならやりかねないという点がある。
「確かに彩音の言うとおり、マネージャーの方がいいかもな」
「私が皆さんのマネージャー……??」
「ダメですか??」
「い、いえ…… むしろ私なんかでいいんですか……??」
「雪奈さんの元気が私たちを支えてくれるって思うんです。相手チームの人に頼むのもあれですけど…… 私もお兄ちゃんたちの力になるので、協力してくれませんか??」
彩音はそう言って、雪奈の手を握ってお願いをした。
「よ、よろしくお願いします!!」
雪奈は過呼吸になりながらそう言った。
(心折れて、俺たちと戦う時に万全じゃないなんてのは嫌だしな……)
「彩音ちゃんの手、すべすべで気持ちいいです〜」
雪奈は彩音に聞こえないよう小声でそう言った。
「やっぱり、解雇すんぞ」
「悠也くん、じょ、冗談ですから〜」
そんな会話をしながら歩いていると、マンションの前で雪奈の足が止まった。
「ここ、私の家です。今日は楽しかったです!! また頑張りましょ〜」
「そっか、んじゃあな。来週学校で」
「さようなら〜」
俺と彩音は手を振って雪奈を見送った。
「お兄ちゃん、雪奈さんのことはどう思ってるの??」
「どうって…… 恋愛として……??」
「ち、違うから!! コーチにしないって言ってたから、ゲームの実力を疑ってるのかなって…… 私は雪奈さんの立体的に戦場を見るのすごいなって思うけど……」
「……いいや、正直彩音たちに変なことするかもって思って止めてただけだよ。実力というか才能で言ったら俺以上だ」
認めたくないが、雪奈は才能という項目において俺を超えてると思っている。
俺や可憐、レインは地道な努力というか練習の数で強くなったタイプ。
彩音は反対にこのゲームの答えを早いうちに見つけて、それを極めた。
緋奈たちも彩音同様、答えを導き出したタイプ。
雪奈はどちらかといえば、彩音たちに寄ったタイプ。
天才肌というか、飲み込みが早い。
彩音たちの配信を全て見るのはファンならできるが、それと同レベルのことを実際にやってみろと言われてできるのは、本当の天才なんだと思う。
それに彩音たちより始めるのが遅かったのに、プロチーム相手に互角以上の戦績。
グランディネア戦は完全タイマンだったが、予選は長丁場で可憐に無理をさせないためにも、雪奈の立体的に戦場を見る能力を借りて短期決戦で攻略できた。
なんか考えれば考えるほど、雪奈はむしろコーチ適正あるような気がしてきた。
(日頃の言動だけがな……)
「彩音は雪奈のこと、どうしてそんなに信用してるんだ??」
「雪奈さん優しいし、見ていて元気を貰えるから!!」
「そっか……」
彩音らしい返事で俺は納得をした。
そんな話をしているうちに自宅の前に着き、俺は玄関の鍵を開けた。
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