第100話 世界最強が恐れる存在
「はい、お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
俺はシャワーで汗を流したのち、世界大会用の写真を撮った。
俺たちはユニフォームとか作っていないので、今日着てきた服で撮影したけれど、いい感じに撮ることができた。
(つーか俺が私服ってことは……雪奈のやつはアイラブあいうえTシャツで撮ったのか……)
果たしてスタッフの人はどんな気持ちで撮影したんだろうか。
そんなことを考えていると、スマホにメッセージが届いた。
内容は『あいうえ、EGC予選突破のパーティーを開催する』というものだ。
試合中昼休憩でサンドイッチを食べたとはいえ、午前中からフルで戦ったからか空腹でお腹の音が鳴った。
とりあえず俺はエレベーターに乗って、集合場所の6階へ向かった。
* * *
6階に着くと、そこにはパーティー会場のような大きな部屋があった。
俺が扉の前に行こうと廊下を歩いていると、可憐、レイン、雪奈と斉藤先生がいた。
「おはよ、悠也〜 目覚めはどう??」
「ったく寝やがって、誰がソファーまで運んだと思ってんだ……」
レインが呆れた表情で言うと、可憐と雪奈が笑い始めた。
「ぶふっ……お姫様だっこするレインさん、すごく面白かったです」
「あれは面白かったね〜 悠也がお人形さんみたいで……」
「可憐さんがお姫様抱っこしてって言ったんですからね!! 悠也、お前後で話するぞ!!」
(なんか俺が知らないとこでよくわからないことなってるし、俺別に悪くないだろ……)
「とりあえず迷惑かけてすまん。というか話が変わって申し訳ないが、寝る前に写真撮ったような気がしたけど、あれは何??」
寝る直前、俺は可憐に言われてうつ伏せの状態でピースサインをした。
シャッター音が聞こえたので、多分撮ったんだと思うけれど、こんな写真何に使うのかと疑問だった。
「あーそれね、rallyに送ったやつ??」
「……はい??」
「……え??」
俺とレインは意味がわからなくて思わず、顔を見合わせて言った。
「えっとね〜『悠也たちと勝ったよいえい、ボコボコにするから首を洗って待ってろ〜』って送った」
「「……はい??」」
「rallyさんって昨年の世界王者の方ですよね?? 可憐ちゃん、そんな人に喧嘩売ったんですか??」
「ま、そうだね〜」
「は?? 何してんの??」
俺は猛ダッシュで可憐の目の前に行った。
「何してくれてんの?? rallyに喧嘩売るとかやばいでしょ!!
確かに俺たちと彩音たちは北アジア最強かもしれないけど、世界王者に喧嘩売るのは流石にやばいって!!」
昨年世界チャンピオンのrally。
フィジカル、エイム力、指揮能力すべてが高く、昨年の世界大会でグランディネアですら、体力2割以下しか削ることができなかった正真正銘の最強。
確かに可憐と友達というか、家族に近いように見えたけれど、俺がうつ伏せ状態で顔を見せずにピースサインをするという舐めたような態度で撮ったと捉えられてもおかしくない写真を送るのはさすがにやばい。
「気にしない〜 ボクも初対面の時喧嘩売られたし〜」
可憐は落ち着いた感じで俺にそう言った。
(そうなの?? ってか、可憐が喧嘩売られた側なの??)
まあまあ衝撃的なことを可憐は言ったけれど、過去のことを掘り返すのもなと思い聞かないことにした。
「んで可憐さん、返事は何だって??」
「ん〜とね、『楽しみに待ってるね』ってきたよ〜」
俺とレインは、rallyが怒っていないようで安心して、思わずほっとした。
「そういえば悠也。ボクがrallyに送った後、全世界の予選が終わったから、昨年の世界王者にインタビューみたいなのがあってさ〜」
「ん??」
可憐はそう言って、俺にスマホの画面を見せた。
質問の2つ目に『今回世界大会で注目選手』という項目があった。
決勝へ来るであろう注目選手に、昨年準優勝のチームWIの選手ではなく、
『あ』『YUU』『KAREN』――北アジアの新世代の3人が脅威となると発言していた。
「……ッ」
俺はその記事を見た瞬間、達成感に襲われて全身の力が抜けた。
一生かけても届かないと思っていた、世界最強の存在に俺は認められた。
俺は嬉しくて思わず泣きそうになり、手で目を擦った。
「泣いてる??」
「嬉しいんだ…… いいじゃん、可憐だってさっき泣いてただろ」
「まあ、脅威になるだけじゃなくて『倒す』存在になれるように頑張ろう」
「……ああ、そうだな」
「やるしかねぇ」
「みなさん、世界大会もがんばりましょー!!」
俺たち4人は横一列に並んだ。
横に並んだ瞬間、斉藤先生は何かを察したのか携帯を手に取った。
「はい、撮りますね」
カシャっというカメラの音が鳴った。
「うん、先生ありがと〜」
可憐は斉藤先生の撮った写真を見て、満足そうな表情を浮かべた。
「んじゃ、チャットに送るね〜」
可憐はそう言って、俺たちEGCのチャットルームに写真を共有した。
俺はスマホで共有された写真を見た。
何気に人生初、友達と写真を撮った。
彩音や家族と撮ることはあったけど、友達とは一度もなかったのでなんというか新鮮だ。
「まあ写真も撮れたし、そろそろ行くか」
俺たちはパーティー会場のドアを開けて、会場の中へ入った。
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