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OLのレナは、通勤路で意味不明な動作をする踏切に遭遇する。果たしてどう切り抜けるのか?


今月(2025年6月に)執筆した新作です。過去作『エレベーターに弄ばれた女性』と同じシリーズです。

 新年度を迎えて、新入社員の受け入れ等もあり、私の会社はいつもより賑やかな雰囲気になった。新入社員のОJT等に加えて通常業務もあるため、私含め私達社員はかなり忙しい時期を過ごしている。

 さて、このビルにおけるエレベーターの事件からどれほど経ったのだろう。あれは、二〇二三年十二月の出来事だったから、それから早くも一年半が経とうとしている。

 あの事件後、エレベーターに閉じ込められたことについては会社の誰にも言わなかった。ただ、その日の翌日の朝、上司から呼び出され、例の事件日、夜九時まで残業をやっていたことについて注意された。特に、その時間まで遅く残る際に誰にも相談しなかったことを問題視されたらしい。そりゃ、私だって夜九時まで残りたくなかったよ。でも、しょうがないじゃん。そこまで残らなければ終わらない業務だったんだから――というのは言い訳でしかなく、実際には上司の仰る通り「業務の状況について誰にも相談せず、その時間まで残っていた」ということは、経費面でも健康面でもNGである。ということもあり、その日以来、残業を極力せずに業務を片付けて退社するようにしている。定時の十八時にきっかり上がることを普通とし、遅くても十九時前には上がるように意識している。時には上司に相談するなどもして。

 そして今日も忙しかったが仕事を何とか定時で終わらせて、そのまま「お疲れ様です」と社内の人達に挨拶をしてオフィスを退出した。

 会社の外に出ると、外は明るい(夕方だが)。最近、日没が遅くなったとはいえ、空が明るいうちに帰れるようになってから、もう一年半が経つのか……。

 会社のビルの駐輪場から自転車を出して、家路に就く。会社から自宅までは片道三〇分ほどだ。市街地で通勤ラッシュの時間ということもあり、道路はやや混む時間帯である。安全第一なので、極力車道の脇を走りながら、歩行者や車に注意しつつ走行する。そのまま大通りを走り続けていると、やがて踏切に出くわす。この時バーは開いていたが、私が踏切に差し掛かるまで一〇メートル手前といったところで踏切が「カンカンカン……」と鳴り出した。

 またこのパターンか……と嘆息しながら、私は踏切の手前まで来た所で自転車を停める。遮断機のバーもやがて閉まり出した。

 この踏切は、一度バーが閉まると、かなり長い時間閉まり続ける。電車が通過して開き出したら、次にまた閉まるまで時間があるため、「開かずの踏切」と呼ばれているわけではない。それでも長いとはいえる。通れない時間が断続的にあるため、私含め地元の人達は辟易する踏切である。

 そんなことは日常茶飯事だから、これ以上このことで思うことは無く、ただ電車が通過し、バーが開く時を待ち続けていた。鳴り出してから、結構長い時間が経つことにも慣れている。まずは電車が左右のいずれかから来ること、これが無ければ話にならない。来るなら早く来て欲しい。しかし、そんな私の期待とは裏腹に、電車は一向に来る気配がない。やがて、遮断機のカンカン音は止み、バーが開き出した。電車が一切通過していないにもかからわずだ。


――は?


 私は心底仰天した。踏切が鳴り出して、バーが閉まったにもかかわらず、電車は一切来なかった。そして、踏切は何食わぬ顔でバーを開けたのだ。

 何これ? 何のためにバーは閉まったの? 電車を通すためじゃなくて? 電車から私達の身の安全を確保するためじゃなくて?

 意味分かんないよ。私の時間を返して! 一刻も早く家に帰りたいのに、そんな悪ふざけされてただで済むと思ってるの? ――故障かは知らないが、これまでに無かった事例のため、私は不思議に思わざるを得なかった。このタイミングで故障するのもよく分からないし……。

 複雑な心境のまま、私は念のため左右から電車が来ていないことを確認した上で踏切を渡り、引き続き帰路を進んだ。

続きは次節(2)にて。

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