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 愛憎入り交じるとは、こういう状態をいうのだろうか?

翌日の入学式はまさにそんな感じだった。なぜこんな能力を持ってしまったのだろう・・感情がよくわかってしまう。今はそれが恨めしい・・みんななんのために学校にきているんだ?!恋愛をするためなのか?勉強するためじゃないのか!!

それだけキース先輩の人気がすごいんだろうけど、確かにあの顔と体躯、色気は反則だよな・・まして、絶大な力を持っているバクレー侯爵家の人間だしな・・それだけでもお近づきになりたいだろう。それはわかっている。でもでも、私を巻き込まないでほしい。はぁ〜。


うんざりするような感情の匂いが充満する講堂で入学式が終わるのをひたすら待ち望んだ。各教室に入ってからは少し落ち着いた。新しい学校生活に対する不安と好奇心が感じられる香りに満ち溢れている。その雰囲気にホッとしながらも、やたら可愛い顔をした集団がこちらをチラチラ見ていた。その中でも一見美少女にしか見えないふわふわの金髪の生徒がこちらに近づいてきた。

「たいしたことないね。」

唐突にかけられた第一声がこれだった。

「はい?」思わず疑問の声をあげてしまった。

「なんで、君なんかが、青薔薇さまと一緒にいるんだよ。失礼じゃないか!」

出たキース先輩ファン・・

「なんとか言ったらどう」

「はあ・・」

「僕を馬鹿にしてるの!君程度の子が青薔薇さまと一緒にいるなんておこがましいって言ってるの!今後二度と青薔薇さまに近づかないでよ!!」


なんか頭にきた・・なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ。

「君に僕の行動を制限する権利はないよ。」

「僕を誰だと思っているの?ロイド伯爵の息子だよ。君はたかだか子爵家でしょう。青薔薇さまは侯爵さまの息子だよ。君なんかが近づける人じゃないんだから!」

いつの間にか周囲に集まってきていた可愛い顔集団が「そうだそうだ」と言いつつ、僕を取り囲んでいた。

「悪いけどそうは思わない。この学校の教育理念は身分に囚われず切磋琢磨することだと思ったけど違う?」頭にきすぎて逆に冷静になって言い返した。本音は単なる嫉妬心からであることは、匂いを嗅ぐまでもなく十分わるので白けてしまった。

「そんなことは建前だよ。身分制度はどこまでもついてまわるんだ。だからそれを弁えて行動するのが当たり前だろ!」

「そうだ!身分を弁えろ!」追従するように取り巻きが喚いている。

なんなんですか、このボンクラ集団は、女の私でもうんざりしてしまいそう・・いい加減相手にするのもめんどくさくなって言い返そうとした時、

「君たち、いい加減にしたら。」

スッキリした香りと共に、声が割り込んできた。

「クリス・ボイド・・」美少女もどきは割り込んできた声の主を見て、明らかに動揺している。

「誰が誰と一緒にいるなんて本人同士の問題でしょ。他人が口を挟むのはおかしいよ。いつまでも続けるなら、キース兄さんにこの状況を伝えるよ。」

キース兄さん?でもボイドだから家名が違う、ということはキース先輩の親戚?

クリスは15歳にしては大人びた整った顔立ちをちょっと顰めて言い放った。

「そっそれは・・みんな行こう・・」可愛い顔集団は慌てて去っていってしまった。あっけに取られて見ていると、ニコッと笑ってこっちを見たクリスに話しかけられた。

「初めまして君がジャスティンだよね。僕はクリス・ボイド。クリスでいいよ。キース兄さんって言ったけど、もちろん本当の兄弟じゃないよ。キース兄さんはバクレー家の本家で僕は分家で男爵家だから。親同士が親しくて、分家のわりには仲良くしてもらっているんだ。」とてもサバサバした明るい香りがする。さっきの嫉妬まみれの粘着質な匂いとは違う心地いい香りにホッとした。

「初めまして、ジャスティン・ハミルトンです。僕のことはジャスと呼んでもらえると嬉しいです。さっきは助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして、僕、キース兄さんと同室なんだけど、昨日の夜キース兄さんに頼まれたんだ。ジャスティンという子と仲良くしてくれって。少し事情を聞いたよ。キース兄さんはよくわかってなかったけど、放って置けないとは思ったみたい。」

「キース先輩、自分の凄まじい人気の自覚全然ないんだぁ・・」

「無理、無理、あの人全てに無関心だから、その分びっくりしたんだ。特定の名前を出して頼み事するからさ。」

「それはお手数おかけしました。」

「とんでもない、絶対零度の青薔薇の心を動かした人に興味津々だったから気にしないで。」キース先輩本人は知らなくても、絶対零度の青薔薇は親戚にまで知れ渡っているんだね・・

「ところで兄さんが君のそばで眠ったって本当?」

「はあ・・なんか僕のそばで眠くなるみたいで、いきなり眠ってしまいました。」抱き枕にされたことは黙っておこう。

「すごいことだよ。横になって仮眠程度は取るみたいだけど、熟睡することはなかったみたいだから、バクレー侯爵が知ったら喜ぶんじゃないかな?」

「ご家族はみんな心配してるの?」

「みんな心配しているよ。キース兄さん末っ子だし、上の二人の兄さんもキース兄さんに関しては結構過保護だから。」

「キース先輩末っ子なんだ・・」

「そうだよ。周りが心配していてもキース兄さんは無関心だし、今まで医者に見せても何も見つからないし、健康障害みたいなものはないから、最近は体質として受け入れられてる。だから熟睡するなんて、びっくりしたんだよ。君が女の子だったら、もしかしてと思うこともあるんだけど男の子だし・・」

「えっ、女の子だったら、何かあるの?」女の子という言葉にドキッとして聞き返すと

「いやたいしたことじゃないから、変なこと言ってごめん。」

一瞬クリスから余計なことを言ってしまったという焦りの香りがして、話を逸らされてしまった。自分が女だと打ち明けるわけにもいかないので、気になりつつもこの話題は追求できなかった。

「とにかくキース兄さんの大切な睡眠薬だから、僕ができるだけ守るよ。これからよろしくねジャス」

睡眠薬って・・本気で言っているよこの人。サバサバしすぎて物怖じしないびっくり性格だった。

「こちらこそよろしくお願いします。」納得しきれない気持ちを抱えつつも、クリスの裏表のない性格がスッキリした香りからよくわかったので、ここは素直にうなづいておいた。

「匂い」と「香り」と言葉を使っていますが、本人にとって不快な場合が「匂い」、そうじゃない場合が「香り」としています。

 今度の金曜日は諸用のため更新できません。大変申し訳ないです。その後はもっと更新ペースをあげていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします。

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