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 潔く踏み出したんだけど・・なんで見られてるの??女だってことがバレてる?

なぜかチラチラ見られる視線に居心地の悪さと、感じたことのない妙な香りを意識しながら、弟のためと敢えて堂々と寮へ向かった。僕が入る寮はミカエル寮、大天使様のお名前だ。どうぞ私をお守りくださいと、胸の中で十字を切って、扉を押し開けた。


 寮は最上学年の19歳以外は二人部屋が決まりで、2年先輩と一緒の部屋となる。つまり僕は17歳の先輩と同部屋で、シャワートイレ付きだ。さすがにこの設備がなかったら、ハミルトン家でも私をここに放り込むような無茶はしなかった。

入寮当初の部屋割りはあくまで仮らしい、学園に慣れた1ヶ月後には、それぞれの希望に沿って部屋替えが行われる。不思議なシステムだなと思いつつ、落ち着いた磨かれて黒光りしている廊下を歩いていくと、自分の名前が書かれているネームプレートを見つけた。

 最初に組む先輩がいい先輩だといいなあ、ドキドキしながら扉を押し開けると、かなり広めに取られたワンルームで、飴色の床に淡いグリーンとクリーム色のストライプの壁紙が設られた落ち着いた雰囲気の部屋だった。シングルよりやや大きめのベットとライティング式の机が左右の壁際にそれぞれ設置されている。部屋の手前には簡易なソファとテーブルがあり、陽光が降り注ぐ大きめの窓にはオリーブ色のカーテンがかかっていた。左側の壁際で、赤茶色の髪を短く刈り込んだ男の人が荷物を片していた。いかにもスポーツやってます系の背が高く体格のいい人だった。(あっ優しそうな香り・・)見た目に反して、穏やかで優しそうな香りがした。

その人が振り返り、こちらをじっと見て、

「なるほど、だから俺か・・」苦笑しながら、つぶやくやや低めの声にハッとして見上げると、優しそうな榛色の瞳と目が合った。

「あの、初めまして、ぼ、僕はジャスティン・ハミルトンと言います。どうぞよろしくお願いします!」なるべく元気に男の子っぽく挨拶した。

「ああ、よろしく俺はロナルド・ビュートだ。」

「はい、ビュート先輩、よろしくお願いします。」

ビュート先輩の香りは、なんとなくお父様の香りと性質が似ている気がして、ちょっとホッとした。思わず微笑んで先輩を見上げると、

「あちゃ〜やぱいかも・・」ビュート先輩がつぶやいた。何か間違ったことをしたのかと、慌てて謝ろうとすると、「ごめんごめん君が悪いわけじゃないんだ。ただ君が女の子みたいに可愛いから、まずいなあと思って、ちなみに俺のことはロイでいいよ。」

(えっもうバレた?)一瞬ヒヤッとしたが、ロイ先輩の香りには不審さは感じられなかった。

「僕は男ですが!」とりあえず否定の声を上げると、

「わかってるよ、君が男なのは、ただ君があんまり可愛らしいから、忠告しといた方がいいと思っただけ、だから最初の割り当て俺になったんだと思うしね。」

「どういうことでしょうか?」意味がさっぱりわからない。可愛いと言われても、喜んでいいのか悲しんでいいのか?確かに私ら双子は小さい頃に将来は美男美女間違いなしだと褒められていた。クリっとした緑の大きな目に、通った鼻筋、柔らかいピンクのふっくらした唇、社交界で美女と名高いお母様そっくりなのだ。


「実はここかなり緩いんだよ。男同士で付き合うことに。知ってるだろう1ヶ月後に部屋替えがあるの。実はその頃すでに付き合い始めていたり、狙っている奴がいると、そいつと同室を希望するんだよ。学校側も、赤ちゃんができるわけでもないから、暗黙の了解で見逃してる。もちろん、その理由だけで部屋替えするわけじゃないけどな。」

「は?男同士で付き合う?どういうことでしょうか??」

「まあ、ありていに言えば恋人になるってこと。」

「こっ恋人〜!?」

「まあ全寮制のパブリックスクールで男だけで閉じ込められてるんだから、多かれ少なかれあるよな。」

あっさり言われると、そんなもんかという気がしてくるから不思議だ。でもそれって・・

「せ、先輩もそうなんですか?」思わず、胸の前に手を交差させ自分の身体を抱きしめて、先輩を見返すと、

「俺は絶対にありえない、婚約者にベタ惚れだからな。」とあっさり返された。

よかった。先輩からは嘘の嫌な香りがしなかった。本当のことを言っている。

「でも、そういうわけだから、気をつけた方がいいぞ。君は可愛いし、多分狙われるからな。1ヶ月後に同室になりたい奴がいなければ、継続して同室になってやるよ。下級生が無理強いされないように、そこは下級生優先になってるからな。」

「ありがとうございます!ぜひお願いします!」

ここは3ヶ月後にくるジャスのためにも、最重要ポイントだ。大切な弟を男の毒牙にかけてなるものか!改めて決意を漲らせていると、

「とりあえず、荷物片し終えたら、簡単に構内を案内するよ。同室の先輩の役目だからな。」ロイ先輩がニッと笑いなが言ってくれた。

「はいわかりました。それと僕のことはジャスと呼んでください。」

「おお、了解、ジャス」


基本、月曜日と金曜日の13時に更新予定です。よろしくお願いします。

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