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 ラント先輩をアル先輩とロイ先輩が抱え、クリスが先導して寮へと戻っていった。それを見送ったキース先輩が、ふいにこちらに目を向けた。

その蒼い瞳の強い光に、キース先輩の真剣さを感じ取り、なぜか少し逃げたくなった…

「ジャス悪いがつきあってくれ。」手首をとられ、有無を言わさずひっぱられ、図書館のいつもの部屋へと連れて行かれた。

午後の穏やかな光の入らない部屋は、まるで暗い海の底に沈んでいるような冷たさを感じる。少しだけ身を震わせると、「寒いか…」と聞かれた。

確かに少し肌寒さを感じた。もう9月も終わりに近い、夜は冷えてきている。

思わずうなづいていると、ブランケットにくるまれ、ソファに座らされる。

いつのまに持ち出したのか、はじめからあったのか、キース先輩が図書館の秘密の部屋にあった角灯と同じものに火をともしている。ほんわりとオレンジの光が広がり、部屋にあたたかみを感じてほっとした。

キース先輩はクリスから預かったバスケットをソファの前のテーブルに置くと、中からポットを取り出し、カップに何か注いてくれた。どうやら紅茶のようだ。そっとカップを僕に渡してくれる。さらにサンドイッチがバスケットから出てきた。それを見た途端、お腹がきゅるる~となった。真っ赤になりながら

「夕飯食べてなかったんです…」ともごもご言い訳をした…キース先輩が苦笑しながらサンドイッチを手渡してくれた。少しの間、キース先輩と二人柔らかいオレンジの光の中で、無言でサンドイッチを食べ、紅茶を飲んだ。やっと一息ついたところでキース先輩が話し始めた。


「さっきいた部屋な。実はこの部屋の真上になるんだ。図書館のこの部分は基本的にはバクレーの人間と学長しか知らない。たまにバクレーの人間に連なるものが知ることはある…今回の件では、アルとロイに伝えることになる。」こちらを見ないようにして話すキース先輩に寂しさを感じつつも、話を途切れさせるのにためらいそのまま聞いていた。

「バクレーには綿々と受け継がれてきた裏の仕事がある。それが曰くつきの本を回収して封印することだ。昔一冊の呪われた本が王家を揺るがす大事件を起こした。念のこもった本は使い方次第で、すべてを狂わす可能性がある。そのときバクレーの人間がそれを諌め封印した。なぜそんな力を持っていたのか?はっきりしたことはわかっていないが、バクレーの祖は魔術士であったらしい。その力は時代とともに受け継がれ、それぞれの時代に封印された膨大な数の本が、あの部屋に収蔵されている。念を昇華され、ただの本となったものも多いが中には昇華できず、思いがこもった本が残ってしまう。その思念は邪悪なものもあれば、そうでないものもある。悪いものはそれを封印してしまうが、悪いものばかりではない。本としての知識、力、先人の知恵ともいうべき力にバクレーは助けられ、今まで生き延びてきた。そうやってバクレーは本と共存してきたんだ。」

「だから、あの部屋の人たちはキース先輩に優しい感情を向けてたんですね。なんかおじいちゃんやおばあちゃんが孫を見るような愛おしい香りを感じました。」その言葉に対して、なんとなくてれながらキース先輩は話し続ける。

「そうなのかもしれない。だから今日はなぜあんなことになっているのか俺自身もわからず、驚いた。ただおまえを組み敷かれているのを見て、正気を失った。その感情のままに本たちを傷つけることをしなくて本当によかった。ありがとうジャス…」

「よかったです。僕の力が初めて役にたったみたいで嬉しいです。いままでこの力が嫌いでした。なんで自分にこんな力があるのか、わからなかったんです。嫌で仕方なかった。でもはじめてこの力を持っていたことに感謝しています。」なんとなくほっとして力が抜けた。初めてこの力を家族以外にうちあけることができた。まして気味悪がられなかったことにも、じわりと嬉しさがこみあげてくる。

「ジャス…ブランケットに一緒に入ってもいいか?」そうかブランケット一枚しかないのか、あわててブランケットをもちあげる。二人で使っても十分な大きさがあるのだ。

「もちろんです。すみません気づかなくて…」そっとキース先輩が横に滑り込んできた。その時になってはじめて、キース先輩と密着してしまうことに気付いた。この方が温かいからと、足の間に僕をいれ後ろから抱きしめるようにしてブランケットを巻きつけてくる。心臓がばくばくと音をたてている。キース先輩に顔を見られない位置でよかった。きっと真っ赤な顔している…。

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