七十五話
桃⚫︎ワールド面白いですよね
「イヤアアアアっ!!!やめてっ!デストロイ号はだめえええ!!」
「うっわ……よかったヨーロッパ方面の物件買ってなくて」
「ちょ鈴ちゃん!?やだやだやめてアメリカ来ないで!?いやあああ!」
私と葵ちゃんの絶叫が響き渡る。やっとの思いで購入した超高額物件がデストロイされたことで国家予算並みに膨れ上がった借金に思わず床に崩れ落ちた。私のヨーロッパ……。
「もう嫌……なんで私だけこんな目に……」
「哀れだねすずさん」
「元はと言えばはるかくんが貧乏神押し付けたせいですよ!?」
私のマサチューセッツがあああと同じく絶望する葵ちゃんの隣で長い足を組む男を睨みつける。しかし世界一の資産家(ゲーム内)である彼は何処吹く風とばかりに受け流した。
「すずさん、徳政令使ってあげようか?俺持ってるから」
「……何が望みです?」
「そう大した話じゃないよ。代わりに俺と同盟組んでもらいたいってだけ。葵を最下位に蹴落とすために協力しようじゃないか」
「ちょ、遥ぁ!?」
「具体的には?」
「俺に金輪際貧乏神をなすりつけないという協定を結んでもらう。あとすずさんの手持ちカードを随時提供」
「…………その逆も然りですよね?勿論」
「それは協定条文には書いてないけど」
「自分でなんとかします!!!!」
ええい何が協定だ!ただの奴隷契約じゃないか!にっこりと鬼のようなことを宣うはるかくんの救いの手をぺえいっと払いのける。この悪徳高利貸し!!
いいですよ、別にはるかくんに救ってもらわなくとも私には逆転の目がまだあるんだ。この首位のプレイヤーの持ち金と同じ額だけお金がもらえると言う神カードをさっき拾ったのだよ!これさえあればいくらでも……ああああ貧乏神ィィイイ!?神カードを二束三文で売り飛ばすんじゃねえええ!!
慈悲もないゲーム側からのいじめにもはや落ち込むどころか笑いが込み上げてくる。
「……うふ、ふふふっ、あはは……」
「す、鈴ちゃんが壊れちゃった……あ、決算」
不気味に笑う私に葵ちゃんが怯えるのと同時に、画面からパンパカパンパーンッと明るいBGMが流れる。
1年間の締め括り、ゲームシステム的に言うならば直近12ターン分の変遷が映し出された。私の資産の落ち込みえっぐいな。1人だけ右肩下がりどころか垂直降下する棒グラフを死んだ目で眺めていた私はため息をついた。
もうゲームを始めて8時間。夜通し続けていい加減外も明るくなってきた。この中間報告である決算で最下位だったプレイヤーの奢りで追加のお菓子と朝ごはんを買いに行く約束だったので、結果を最後まで見るまでもなく最下位である私は立ち上がった。
「じゃあ買ってきますね。葵ちゃん何がいい?」
「おにぎり〜具は梅以外だったらなんでも〜」
「はいはい。はるかくんはどうしますか?」
「いや、俺も行く」
「え?」
そう言ってさっさと立ち上がるはるかくん。慌てて制止しようとするも「早く行くよ」と逆に急かされてしまう。
いやでもこれ罰ゲームなんやが?と困って葵ちゃんをみると、クッションを抱きしめてヒラヒラ〜と手を振っていた。
……仕方ない、お言葉に甘えよう。正直もうだいぶ時間が経ってるとはいえ、1人で外を歩くのはまだ少し怖かったのだ。
玄関ドアに手をかけて私を待ってくれているはるかくんに駆け寄る。
多分この人、私が負けても葵ちゃんが負けても一緒に行くつもりだったな、とやけに準備良く財布を持つ彼に苦笑いするのだった。




