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七話
「…………」
「…………」
コンビニの前で例の兄ちゃんとバッタリ会ってしまった。
まさか平日の日中にもいるとは。新作ゲームを発売日にプレイすべく有給を取っていた私は、すっぴんを隠す為にしてきたマスクを思わず引き上げた。
なんとなく全く同じタイミングで自動ドアを潜るのが憚られた為に譲りますよの意を込めた視線を送るが、何故か会釈され正式に譲られる。
ほな年上の女として遠慮なく先入らせてもらうわ。目でお礼をして足早に店内に入った。
っていうか勝手に大学生だろうなって思ってたけど、ワンチャン社会人の可能性もある?チラリと雑誌コーナーの方に向かっていった彼の方に視線を向ける。
……いやないな。どう見ても学生です。よくてこの春入社した新社会人。
きっと彼はこれから世間の荒波を渡ることになるのだろう。頑張りたまえよ若人よ。
エナドリを手に取った私は、こっそりと名前も知らない彼に激励を送るのであった。