58話
ゲーム好きだとは聞いていたがここまでとは。動きが玄人すぎる。
剣斧なんて扱い辛い武器を軽々と使いこなすすずさんに感心しこっそり嘆息。これは前々からこのシリーズやっている人間の動きだ。
巨大な尻尾の生えたカエルと形容するのが一番しっくりくるモンスターを前にして、全く臆することなく斧を叩きつけるすずさんを後ろから弓矢を飛ばすことで援護する。
暴走列車のようにフィールドを駆け回る双剣バカを射線に入れないよう気を付けながら弓を射っていると、イヤホンからすずさんの声が聞こえた。
『……はるかくん、初めてじゃないですね?』
「前シリーズはちゃんと全クリしてるよ」
『でしょうね。滅茶苦茶上手ですもん』
「そういうすずさんもね。剣斧なんてよく使えるよな」
バリキャリ風であるすずさんの見た目だけで判断するならば、太刀とか双剣とか軽く振るえるものを選びそうであるのだが。
しかししみじみと『高DPSは正義ですから……』と語られ納得する。瞬間火力ね、確かに性格的にはそんな感じだ。勝手な想像で申し訳ないが、すずさんは魔法職よりも近接攻撃職でひたすら敵殴ってそう。
敵が怯みモーションを出す。すかさず変形機構で斧を剣状に変化させたすずさんのアバターが前に躍り出て大技を放ち、赤いオーラを纏った葵のアバターが突撃していく。
その後ろで溜め攻撃を放ちながらこんな風に友達とゲームするのは何年ぶりだろうか、とふと思考が揺れた。
───少なくとも、あんなことが起きる前まではやっていたんだけどな。
『遥!』
『っ!』
「あ、やべ」
意識がゲームから逸れた瞬間、敵のヘイトが俺に向いた。巨大カエルが口を開いて長い舌で俺のアバターを打ち据えようと動く。
咄嗟に回避行動を取るがこの技の範囲は広い為に恐らく逃げられない。今の装備もチュートリアルをクリアした時点で手に入る防具である為に、大した防御力も見込めない。
葵が手に全体回復のアイテムを装備したがきっと回復の余地もなくHP全損だろう。
やべー落ちる、と焦った瞬間、画面の右上端で何かが飛んだ。
「は?」
カエルが長い舌を射出すると同時に、何故か空中に居たすずさんのアバターが剣を下に構えカエルの脳天めがけて下攻撃を放った。
縦に一閃が走る。クリティカルヒットした攻撃にカエルの攻撃モーションが強制的にキャンセルされ、ズドンッと音を立てて巨体がダウンした。
『……やー、危なかったですねぇ。上手くいってよかったぁ』
ふぃー、と息をつくすずさん。そのまま彼女は何てこと無いようにのた打ち回るカエルに走っていく。
え、何今の。まさか崖上って飛んで上から攻撃した?あの一瞬で?崖から結構距離あるのに?しかも弱点に寸分狂わず強溜め攻撃?嘘だろ?なんちゅう判断力と技術力……?
「『……か、かっけええええ!』」
平然と神業を披露してのけたその後ろ姿に、妹と共に俺はきゅんきゅんときめきを覚えてしまったのだった。




