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五十七話

「葵ちゃん彼氏いないんだ」


『うん、この間別れちゃった。ゲーム好きって言ったらそんな子だと思わなかったとか言われてさぁ。あ、鈴ちゃんそっち行ったよ」


「はーい」


 返事をしながらカチャカチャとゲームコントローラーを操作すると、画面の中のアバターが凶悪な剣斧を振り回し逃げてきた巨大生物の顔面を打ち据えた。

 クリーンヒット。巨大生物がたたらを踏んで地面に床倒しになると、ヘッドセットの向こうの葵ちゃんが『なぁーいすっ!』と喜びの声を上げる。


『よっしゃ叩け叩け!……そういう鈴ちゃんはいないの?』


「あー……半年前に別れました」


『わぉ、わたしと一緒だねぇ』


 双剣を構えて悶える巨大生物に切り掛かりに行く葵ちゃんのアバターの後を追って、私のアバターも巨大な剣斧を担いで獲物まで走る。

 強攻撃を放つ為に溜めアクションのコマンドを入れながら私は苦笑いした。


 まあ葵ちゃん見た目詐欺……勿論いい意味でだけど、詐欺ってるところあるからなぁ。黙ってればクール系美女だけど中身は子犬系ゲーマー女子だからね。

 いやでもそんなギャップの良さを理解できない男は捨てて正解だよ葵ちゃん。一応人生の先輩である私は、口に出さないまでも葵ちゃんの判断に英断であると大いに頷くのであった。


 今は最近発売したモンスターを狩るゲームを葵ちゃんとマルチプレイしている。流石というべきか、発売初日にもうパッケージ版を購入していた葵ちゃんに「勿論やるよね?」と圧を掛けられた私も、その日の内にダウンロード版を購入させら……購入し、ここ連日夜半の狩人生活に勤しんでいる。

 

 まあ最も小学生の時からプレイしている大好きなシリーズなので、圧を掛けられなくともいつかやるつもりではあったのだけれども。


 葵ちゃんの必殺技が上手く入ってモンスターが討伐される。ミッションクリアのファンファーレと共に素材を剥ぐフェーズに移ったところで、ヘッドセットの向こうの葵ちゃんが『あ!』と大きな声を上げた。


『おに……遥!一緒にやろ!今鈴ちゃんとやってるよ!』


『やらんわ。買ってねえし』


『大丈夫、遥のウィッチにもう入れてあるよダウンロード版』


『は?……お前勝手に俺のクレカで買ってんじゃねえよ!!』


 ヘッドセットの向こうから聞こえてくる兄弟喧嘩に思わず笑ってしまう。相変わらず仲良しだ。


 葵ちゃんとゲームをするようになって早くも一か月。

 はるかくんの家に三日と空けず行っている葵ちゃんと通話を繋げて電話していると、度々はるかくんの声が聞こえる。この唐突に始まる兄妹喧嘩にも慣れてきた今日この頃だ。


 一度、なんでそんなにはるかくんの家に行っているのか聞いてみたことがあるのだが、明確な答えは返ってこなかった。

 大学が近いのかな、とも思ったがそういう訳ではないらしい。普段明け透けに物を語る葵ちゃんが何故か盛大に焦り散らかし、後ろで会話を聞いていたはるかくんがため息をつく謎の時間をギャースカと騒ぐ兄妹たちの喧騒をBGMに思い出す。


『鈴ちゃん!遥確保しました!』


「へ?」


『だぁから、チュートリアルやってねぇんだからマルチできねえだろ』


『もうやっといたよ!』


『それはもはや俺のデータじゃねえだろうが!』


『いいから!はい、サーバー立ててるからこれに入ってね!』


「え?うん?」


 数週間前の出来事に思いを馳せている内に、兄妹喧嘩は一方的な要求の押し付けによって幕を閉じていたらしい。全く話を聞いていなかった私は今の状況をできず首を傾げてしまった。

 

 すると、テレビ画面上にゲーム側からの通知が。見れば『ボイスチャットにメンバーが追加されました』という文言と共にボイスチャット参加者一覧に見慣れない名前───『Haru』なるものが追加され、次いで聞きなれた低い声が耳元で響いた。


『あー……お疲れ様です。すずさん』


「うぇ!?はははははるかくん!?」


『葵がうるさくて……ちょっとだけ俺もやってもいい?』


「お、おお……勿論です」


 普段コンビニで聞く声よりも幾分低く、葵ちゃんのボイスチャット越しに聞いていた声よりも近い声になんだかどぎまぎしてしまう。いやこうして聞くといい声してんなはるかくん……っ!

 何となくおろおろとしていると、画面に葵ちゃんそっくりな女性アバターが現れた。頭上には『Haru』のネームが。なんで女性アバターで作ってんねん葵ちゃん……。すごいシスコンみたいになってるって。


 妹の所業にはるかくんも『なんで女なんだよ……』と盛大にため息をつく。しかしため息の原因である葵ちゃんは、全くお構いなしに元気よくはるかくんへと指示を飛ばしていた。


『遥、早く武器決めてきて!弓かボウガン使ってね!』


『お前な……。思い出すまで操作自信無いんだけど』


『へーきへーき!』


 部屋を分けているのか、葵ちゃんとはるかくんの声が重複して聞こえることはなくクリアに響く。


 っていうか、え?マジではるかくんやるの?本気で?

状況を飲み込めないまま、私のアバターはホストである葵ちゃんが選択したミッションを達成すべくフィールドへと旅立ったのだった。





べ、別に作者モ●ハン好きとかじゃないんだからねっ!

……でもワイルズ買ったら絶対執筆作業がおろそかになる自信はあります。スラアクはいいぞ。

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