50話
ようやく折り返しですね。
「時期だもんねぇ」
「油断してたよ……掃除終わったーって振り返ったら居てさぁ。大絶叫しちゃった……」
「最悪ですね……」
ドラッグストアからの帰り道。ぞわぞわ腕に鳥肌を立てるすずさんに、葵が寄り添うように背中をさする。その隣を歩きながらさもありなん、と俺は頷いた。
何故あいつらあんなにキモいんだろうな。殺すだけなら別にどうって事ないが、飼えと言われたら断固拒否する。
カブトムシなら喜んで飼うのだが。同じ昆虫であるのに何が違うんだろう。
子供の頃に憧れたカブトムシとの比較をしていると、顔を真っ青にしたすずさんが絶望の面持ちでぶつぶつ呟いた。
「あああもう本当に無理。そもそも虫全般無理だけどゴキだけはとりわけ無理なんです。あのめっちゃ動く触覚も、黒光りする体も、素早い動きも……あああ帰りたく無い帰りたく無い」
ああそれだわ。すずさんが口にしたゴキの嫌な特徴に内心で頷く。葵は半狂乱に陥るすずさんを見て気の毒そうな顔をした。
「ねえお……遥。退治してあげたら?」
「は?」
「!?葵ちゃん!?!?」
突拍子もないことを言い始めた妹に素っ頓狂な声をあげる。すずさんもギョッとしたような顔で葵を振り返った。
「だって鈴ちゃん可哀想だもん。遥虫平気じゃん」
「そりゃまあ平気だけど……女性の部屋に入るのは良くねえだろ」
「お、お気になさらず!!自分でなんとかしますんで!!」
ワタワタと慌てて首を振るすずさんに、しかし葵は逃がさんとばかりにずいっと詰め寄る。
「でも鈴ちゃん。それ焚いてから二時間は家空けとかなきゃいけないんだよ?どうするのこんな熱い中」
「う、いや、て、適当にどこか行こうかなって……」
「その格好で?」
「う、ぐ、ぐ……」
薄手の半袖パーカーにショートパンツ、そして足元は突っかけというラフもラフな格好のすずさんは、葵の言葉に反論できずにうめき声を上げた。
まあ確かに近所にちょっとした買い物に行くならまだしも、お出かけとなるとちょっとラフすぎるな。
だがこの怯えようからして、ゴキがいる家に帰ってバルサン設置するくらいなら兎も角、身支度を整える余裕はなさそうだ。顔にありありと葛藤を浮かべるすずさん。
そんな彼女を見て、葵はニンマリと笑ってとんでもない提案を口にした。
「遥家に入れたくないならさ、せめて遥の家で終わるまで時間潰してなよ!」
「「……は?」」




