四十九話
気分が悪い。
震える手をぎゅ、と握りしめる。同じように震える足を必死に動かして、私はなんとか近くのドラッグストアへと辿り着いた。
ドッドッドッと忙しなく鳴る鼓動がうるさい。恐怖のあまり吐き気を覚える。
早くこの最悪な状態をなんとかしたくて、お目当てのものが置いてある場所へと足早に向かう。
探し回ること数分。ようやく見つけたそれにほっと安堵を覚える。泣き出しそうになりながらしゃがんで、震える手でそれを掴み──
「鈴ちゃんっ!」
「っ!?」
背後からかけられた声にビクッと肩が跳ねる。恐る恐る振り返った先には、何故か焦った様子の葵ちゃんと、はるかくんが立っていた。
「え、あ……?」
「どうしたの鈴ちゃん!顔色悪いよ、具合悪い!?だいじょう……」
私の肩を掴んで揺らす葵ちゃん。彼女は心配と焦燥が滲む顔で私の顔を見、そして私が持つものを見た彼女は──ぱかりと口を開けて呆けた。
「……す、鈴ちゃ……それ……」
「あ、あは……その……」
「……葵、お前のその暴走癖なんとかなんねえか……?」
非常に疲れたというか、気まずい顔をするはるかくん。依然固まる葵ちゃんに私は苦笑いした。
すみません、あのぉ……家に、ゴキブリ、出ちゃいまして、ね。
バ⚫︎サンと殺虫スプレーを両手に持つ女の顔は、きっと非常に気まずげであったろうと思います。




