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44話

 仕事のメールを返していると、玄関のドアがガチャンと開く音がした。


「たっだいま〜」


「……えらいご機嫌だな」


「んふふ。コンビニでね、あの人に会ったんだよ!恩人さん!」


「は?」


 自分の家のように寛ぎ始めた妹に胡乱な眼差しを向ける。

 恩人さんってまさかお姉さんのことか?と視線で問うが、マイペースな妹は気づくことなくニコニコとビニール袋を差し出してきた。


「見ろ、エルダの一番くじA賞当たった!」


「ああうんおめでとう。でもそうじゃなくてな。何、お前お姉さんに話しかけたの?」


「うん!」


 うん、じゃねーよ何してんだお前。顔見知りの男の妹とかいよいよ完全に他人じゃねえか。

 しかもどうやら今嬉しそうに掲げている一番くじのA賞を、俺を助けてくれたお礼として押し付けようとしたらしい。断られたそうだが。困らすなお姉さんを。


「鈴ちゃんね、わたしと推し同じなの!A賞受け取ってくれないならせめてってタブったラバマスあげたら『このキャラ一番好き!』って喜んでたんだぁ。鈴ちゃん優しいねぇ」


「おま……」


 まさかの名前呼び。


 このコミュ力お化け、パリピオタク。人の懐にぐいぐい入っていきすぎだろう。相手によっては嫌われるぞ。

 どうやら「すず」という名前らしいお姉さんに謝罪の意を込めて手を合わせる。うちの妹が本当にすみません。


 嬉々として景品を開封する妹。彼女は更に驚愕な言葉を言った。


「あ、鈴ちゃんからフレコ来た!お兄テレビとウィッチ借りるね。鈴ちゃんとププラやるから」


「!?!??」


 そう言ってゴミを散らかしたままリビングでゲーム機を起動する彼女に、驚愕で椅子から立ち上がった。


「ちょ、おい(あおい)!?お前お姉さんとゲームすんのか!?」


「え?うん。鈴ちゃんもププラ好きだって言うからじゃあ一緒にやろーって約束したの。家着いたらLIMEにフレンドコード送るって言ってくれて」


「SNSまで!?」

 

 ププラことタコが墨を撒き散らして陣取りするアクションシューティングゲーを始める妹。その背中を見てワナワナと震える。


 コンビニ強盗事件から早くも2ヶ月が経ち、そこそこ話す間柄になったと言うのに、俺は連絡先どころか自己紹介すらしていない。明確に敗北を覚えて項垂れる。


 ……いや別にそもそもするつもりはなかったけども。


 俺が60日掛けても成し得なかった事を僅か30分でやって退けた妹に、もはや困惑通り越して恐怖を覚えるのだった。





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