四十三話
「あ!?」
「うん?」
休日の昼下がり。本格的になってきた暑さに溶けそうになりながらコンビニへと足を運んだ私は、背後で響いた声に振り返った。
大きなまんまるの目を見開く美少女がこちらを見ている。おん?誰……ってはるかくんの彼女さんじゃん!
つい先日も見た彼女の正体に心の中で手をぽん、と打つ。まさか彼女さんにまで認知されてるとは思わなんだ。
はははどうもどうも、今日ははるかくん一緒じゃないんですねと思いつつぺこりと会釈。そしてそのまま彼女の脇を抜けようとした所でがっしと肩を掴まれた。
「ほわ!?」
「ねえ、お姉さん!遥の命の恩人さんですよね!?」
「え、お、恩人!?いやそんな大層なものではございませんが……」
「ありがとうございます!一歩間違ったら死ぬところだったって聞いてます!」
「お、おおん……」
至近距離からキラッキラの目を向けられてのけぞる。やっべえいい匂いする。どうしよ私どすっぴんのラフ着なんですけど。臭ったりしてないかな、すごい心配。
対して彼女さんは、ヘソだしキャミにシースルーシャツという若くてかつ抜群のスタイルを持つ者にしか許されない服を完璧に着こなしている。
ひい眩しい。休日でコミュ力にデバフかかってる私には眩しすぎますぅ。
女子力の差を見せつけられてソワソワする。逃げ出したい。しかし彼女さんは私の肩から手を離さない。
それどころか満面の笑みで手に持ったビニール袋をずいっと差し出してきた。
「遥から聞いたんですけど、お姉さんエルダの新作やってるんですよね!?」
「はひ!?」
「今一番くじやったらA賞当たったんです!お礼と言ってはなんですが受け取ってくれませんか?どうせアイツ碌なお礼してないだろうし」
「へ、え、ええ!?A賞!?」
大きな箱が入ったビニール袋を差し出され、思わず中身を覗き込んでしまう。確かにそこには今私が熱狂しているゲームのくじの景品が。し、しかも一番いいやつ……!
「いやいやいや!頂けません!こんなレアなもの!」
「受け取ってください!きっと神がお姉さんに渡させるためにわたしにこれ与えたんです!」
「んな訳あるか……!」
新手の宗教家のようなことを言い出し始める彼女さんにビニール袋を押し返す。
しかし向こうも負けじとぐいぐい押し付けてくる。やめいと言うとるに!!
コンビニの入り口でぎゃーすか騒ぐ私達に他の客と店員からの視線が集まってきた。ひいい誰か助けてええ!
いい笑顔でレア景品を持たせようとしてくる美女に、私は目を白黒させるのであった。




