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42話

「ねえお兄、これ買って?」


「……お前、最終的に俺に押し付けるからダメ」


「えー、だって気になるんだもん。一口食べれれば満足だし」


「俺が一口で済まなくなるからダメだって言ってんだよ」


 シュークリーム味の焼きそばを持ってくる妹を一蹴する。


 メーカーよ、何故こんなゲテモノを定期的に生み出してしまうのだ。誰得なんだ。少なくとも俺に得が一切ないからやめてくれ。

 数ヶ月前に経験したあの最悪な味わいを思い出し胃がキリキリ痛み始め、口を尖らす妹の手からため息混じりに凶悪なブツを取り上げる。


 すると丁度ひょっこりと棚の向こうから顔を出したお姉さんと視線がぶつかった。


「あ」


「……こんばんは」


 いつものにこやかな笑顔を浮かべるお姉さんの目線は、バッチリ俺が手に持つゲテモノ焼きそばに固定されている。

 笑顔であるものの、ありありと「お前マジか」と語る目に耐えきれず、俺はそっと商品を棚に戻した。


 違うんです、俺の趣味ではないんです。このバカ妹のせいなんです。


 頼むから誤解してくれるなと念を送る。ちゃんと届いただろうか。

 何事もなかったように会釈をして弁当コーナーへと向かって行った彼女を見て、妹が首を傾げた。


「……ねえ、あの人」


「この間話しただろ、強盗の時の」


「あ、やっぱあの人が命の恩人さん!?」


「バカ、声でけえよ」


 聞こえてやしないだろうか、とこっそりレジに立つお姉さんを伺う。……多分、大丈夫か?


 颯爽と店を出ていくお姉さんにほっと胸を撫で下ろし、口を塞がれモゴモゴと怒る妹を解放する。


「……命の恩人とか言うから、もっとゴリゴリな人に助けられたんだと思ってた」


「武力で助けてもらったなんて言ってねえだろ」


 じっとお姉さんが出て行った扉を見つめる妹。相も変わらず人の話を聞いていないその様子に、俺は疲れたようにため息をついた。




ちなみに5話で鈴音さんがノリで購入したチョコケーキ焼きそばは無事完食されました。食べ物を粗末にするなと教わっているのでね……。

鈴音「あのメーカーのカップ麺二度と食べん」

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