四十一話
パ●コなぁ、好きなんだけど一人で全部食べるともれなくお腹壊すんだよなぁ……。
アイス売り場のチューブ型の二個入りアイスを眺めていると、今日も今日とて背の高いはるかくんがひょっこり現れた。
「あ、こんばんは」
「どうも。お、新しい味出てる」
「そうなんですよ。絶対美味しいですよねぇホワイトソーダ味……」
「そういう割には悩んでるですね?」
買えばいいのに、みたいな顔をするはるかくんにくうっと唸る。
買いたいのはやまやまなんだけどね、絶対買ったら後々後悔するんだよ……っ!
ひょいひょいっと何の気負いもなしに、ホワイトソーダ味もそれ以外のアイスも次々とカゴに入れていくはるかくんに若さを感じ項垂れた。
「一人で食べたらお腹壊しちゃうんですよ」
「今日一本食べて、明日もう一本食べるのはダメなんですか?」
「……意志が弱いので、そこにあると分かっているとついつい手が……」
「ふっ」
堪えきれない、という風に吹き出され胡乱げな眼差しを向ける。いいか、笑っていられるのもあと数年だぞ。25歳を過ぎると体の衰えを明確に感じることになるんだからな。
若さに胡坐をかくはるかくんを恨めしそうに眺めると彼はごほん、と誤魔化すように咳払いをした。
「じゃあ俺の半分食べます?」
「は?い?」
なんてことの無いように告げられた提案に変な声が出る。
彼はそんな私の様子にふ、と笑ってカゴの中のホワイトソーダ味のアイスを振って見せた。
「それならお腹壊さないでしょ」
「え、いや、え!?」
言われている意味が分からず焦っていると、そのままはるかくんはスタスタとレジへと向かって行く。
疑問符と感嘆符を浮かべながら自らも会計を済ますと彼は店の前で待っていた。
既に封を切っているチューブアイスの片割れをぽん、と私の手に乗せ渡してくる。
「はい、どうぞ」
「うぇ!?まって、お金……」
「いいですよそんくらい。じゃ、また」
「えええ!?あ、ありがとうございます!」
自分の分のアイスを咥えて帰ろうとするはるかくん。その背中に慌ててお礼を告げと、彼は肩越しに振り返って微笑んだ。
……青春漫画の登場人物じゃん。君、彼女いる身分で他の女にそんなことして許されるんか……?
平然と女を落とすようなことをしてのける顔見知りの年下の男に、冷たいアイスを両手で握った私は何度目とも知れない恐れと慄きを抱くのであった。




