三十九話
やっぱりワインと言えばチーズと生ハムとサラミはマストですよねぇ。
『取引先の方からいただいたんだけど、僕ワイン飲めないから』と上司が横流ししてくれた高級赤ワインを手にウキウキとコンビニに足を踏み入れる。
いやぁ上司様万歳、この間は会社諸共爆発しろとか思ってごめんなさい。一生はついていかないですけどこの恩を忘れるまではついていきますね。
非常に現金なことを思いながらコンビニのおつまみコーナーでサラミを探す。
チーズと生ハムは駅前の高級スーパーで買ってきたのだが、サラミだけ買い忘れてしまったのだ。
ウキウキとフルボディワインに合いそうな厚切りサラミをカゴに投げ入れる。
あと適当にスナック菓子でも買おうかな、と顔を上げると視線の先にはるかくんを見つけた。視線を感じたのか振り返り私を視界に入れた彼は、ペコリと控えめに頭を下げる。
「こんばんは!」
「どうも。ご機嫌ですね、今日は酒買わないんですか?」
「うふふ、今日はこれがあるんです!」
じゃん、とばかりに専用紙袋に入ったワインを見せびらかす。しげしげとそれを眺めた彼はきょと、と首を傾げた。
「……ワインですか?」
「そうですそうです。会社でいただきまして。今日はこれをしっとり嗜もうかと」
「へえ、ワインも飲めるんですね」
勿論ですとも。赤も白もロゼもスパークリングもいけます。個人的にはワインは重めの赤をガッツリしたローストビーフ とかステーキでいただくのが一番好きですけども。
私が飲めない酒は麦焼酎くらいだ。何故か焼酎だけは本当に昔から苦手なんだよねぇ……。
そこではた、と思い至る。そういえばはるかくんがお酒買ってるところ見たことない。大体いつもエナドリかお茶だ。たまに朝カフェラテ買ってるのを見るくらい。
もしかしてお酒弱いのだろうか。
「お兄さんってお酒飲むんですか?」
「家ではあんまり飲まないですね。飲み会で飲むくらいです」
なんて事なく告げられた言葉にふうん、と頷く。でも意外とこういう人の方が酒強かったりするんだよなぁ。
はるかくんがお酒を飲んでいるところを想像してみる。うっわワインめっちゃ似合うな。ワイングラス揺らしてそう。そんで女の子から逆ナンされてそう。
バーではるかくんが女の子達に囲まれなんやかんやとホストとなり、最終的夜の帝王となる所まで妄想していると「お姉さんは」と問いが降ってくる。
「吸わないんですか?タバコ」
「吸わないですねぇ。一度友達から貰って吸ったことあるんですか、むせて死にかけたので……」
「ああ……なんか想像つきますね」
「どういう意味です?」
顎に手をやり頷くはるかくんを胡乱げな目で見上げる。しかし彼はタバコの話題からさっさと撤退し、視線をお菓子売り場へと向けた。
「赤ならチョコと合うってよく言いますよね。このカカオ70%のチョコならお姉さんでもいけるんじゃないですか?」
「……買います」
美味い具合に逃げられた私は、腑に落ちない心境ではるかくんが指差すチョコレートもカゴに入れるのであった。




