三十七話
ハイボールならオッケーでは……でもなぁ……ノンアルコールビールでも飲む……?いやそれならいっそ飲まない方が……。
「……買わないんですか?」
「ヒッ!!」
お酒コーナーの前で、冷蔵庫の取手に手をかけては離してを永遠と繰り返していた私は、突如後ろから掛けられた声にビクッと跳ねた。
慌てて振り返ればそこには毎度お馴染みはるかくん。彼は不思議そうな顔で私を見下ろしながら隣の冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出した。
「こ、こんばんは……」
「どうも。何買うか悩んでるんですか?」
「いえ、その……お、お酒控えた方がいいかなって……思いまして……」
「え!?」
もじもじと答えると、はるかくんは驚いたような声をあげた。まるで天変地異でも起きたかのような仰天ぶりである。そこまで驚きます?
「何かあったんですか!?や、やっぱり肝臓悪くなっちゃったんですか……?」
「……健康診断があるだけです」
やっぱりって何ですか。貴方私のことなんだと思ってるんですか。
じと、と美形の顔を湿度を多分に含む目で見上げると、彼は「あ、ああ……」とホッと安堵したような、やっちまったみたいな表情を浮かべた。正直ものすぎん?
「三日後なんです。去年ちょっと飲み過ぎと怒られてしまったので控えようかと……」
「……普段から控えないと意味がないのでは」
「うっぐう」
容赦無く突き刺された胸を抑えて呻く。正論パンチやめろや!今更足掻いてもしょうがないのは私が一番分かっています!
容赦ないはるかくんをキッと睨みつけると、彼は顔を背け肩を震わせていた。
「……三日も我慢できるんですか?」
「……………………………勿論」
「無理そう」
うるせーやい!全く飲まないのは無理だけど一日一本に抑えることならできます!……多分。
とはいえ顔見知り程度の男の人にそんな噛み付けるわけもなく。
ギリギリと歯を噛んでいるとはるかくんはふっと息を抜くように笑った。
「お姉さんの場合、我慢する方が体に悪そうですね」
……君もそう思う?私も丁度そう思ってた所なんだよね。




