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三十五話

 なんか今日のはるかくん、いつもとちょっと違う気がする。


 エナドリを物色する彼を見上げて何が違うのか考えていると、女からの視線など慣れきっているであろう美形は非常に居心地の悪そうに身じろぎした。


「……どうも」


「こんばんは。……あ、分かった。お兄さん髪染めました?」


「染めてないですが」


 違うかー。難問にうむむ、と唸る。髪じゃないとすると顔か?額からじっくり見下ろしていくと、ようやくいつもとの相違に気づいた。ハッと息を呑む。


「今日右目が奥二重ですね!」


「そ、そうなんですか……?」


 自分で気づいてないんかい。いやでもそうだよ、絶対そう。

 ガン見されて困ったような、若干引いてるような顔をするはるかくんにふふんと勝ち誇る。


「うーん……今日休みで、一日中寝てたからですかね。今さっき起きたんです」


「あらまあ。お疲れですねぇ」


 こんな時間に起きたら昼夜逆転間違いなしだろうに。くあ、とあくびを噛み締めるはるかくんに労りの言葉をかけると「お姉さんこそお疲れ様です」と微笑まれた。


 ううむ、あんまり軽々しく微笑まない方がいいぞはるかくん。女が寄ってくるぞ。際限なく。


 コンビニの明かりに誘われて窓に激突し続けるコガネムシを見ながら、私はなんとなくそんなことを思うのだった。




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