34話
夏の訪れを感じる場所がコンビニって、辛うじてとはいえ20代の男がそれどうなんだろうな。
弁当コーナーに現れた冷やし中華をじっと見つめながらそんなことを考える。
とはいえ、ほぼ毎日訪れていればそういう変化というのはいやでも気づいてしまうものなのだ。
ちょっと気が早いような気もするが入り口には手持ち花火が並べられ始めたし、デザートコーナーには涼しげなわらび餅とか冷やしあんみつとかがが出始めた。
まあほぼ家から出ないような生活だし、唯一来るこの場所が夏を知らせてくれるなら享受しようじゃないか。何故か上から目線でふ、と小さく笑う。
暑さにやられた頭でそんなアホなことを考えてたせいか、すぐ隣にお姉さんが立っていることに気が付かなかった。
「あんみつですか。たまに食べたくなりますよねぇ」
「そうです……っ!?」
「ふふ、こんばんは。熱心に見てたので気になっちゃいまして」
突然話しかけられてビクッとする。紺色のワンピースを纏ったお姉さんは、そう言っていつものように笑って俺を見上げた。
全く気付かずぼーっとしていた姿を見られ、少々の気恥ずかしさを覚えながら「どうも……」と挨拶を返す。
「わ、冷やしみたらし団子?美味しそう。買っちゃおうかな」
「……丁度昨日食べましたけど、美味しかったですよ」
「本当ですか?じゃあ買います」
ひょいっと気負いなくみたらし団子のカップを取るお姉さん。俺の言葉に何の疑いを持たないその姿勢に苦笑いする。
……そんで持って、デザートすらもしょっぱい系を選ぶんですね。
ブレないなぁ、と嬉々としてレジに向かったお姉さんを見送るのだった。




