三十一話
やっぱ大作RPGと謳われるだけあって良ゲーだわぁ。ここ連日の夜更かしの原因となっているゲームの内容に想いを馳せながらいつものコンビニに入店する。
良くないとは思いつつもいつもいつも深夜3時くらいまでやってしまうのだ。やり込み要素が多くてなぁ、いやー困った困った。
全く困ってない顔で酒を手に取り、ついでにゲームのお供にお菓子でも買うかとお菓子コーナーに足を運ぶ。
するとそこにはもはや見慣れたはるかくんの姿があった。
「こんばんは」
「どうも」
いつもの挨拶を交わして私も彼の隣に並ぶ。たけのこを模したお菓子を選んだ彼にいいセンスしてるぜと内心でサムズアップしていると、頭上から「あの」と控えめな声が降ってきた。
「……お姉さん、疲れてます?」
「へ?」
予想外の問いかけにきょとんと目を瞬かせる。
疲れ?別に繁忙期でもないからちゃんと定時に帰れているし、休日はちゃんと体を休めるという名目で一日中家に引き篭もってゲームしているのでそんな事はないが。
「クマできてますよ。寝不足なんじゃないですか?」
「……あー」
目元をトントンと指し示す彼にようやく合点がいく。連日の夜更かしのせいでメイクでは隠しきれないクマができているのは知っていた。それを見て彼は心配してくれたのだろう。
ええ、めっちゃええ子やんけ。年下の子の優しさにじーんっと打ち震えながら首を振る。
「いやぁ……お恥ずかしながら、ゲームにハマって夜更かししちゃってまして」
「ゲーム、ですか?」
「はい。ああこれです」
そう言って棒状のお菓子のパッケージを指さす。それには期間限定で今私がやっているゲームの主人公のイラストがプリントされていた。
有名タイトルなだけあってリリース直後にも関わらず色んなものとコラボしているのだ。オタクとしては嬉しいところである。
「なるほど、そういう事ですか。……お姉さんもこれやってるんですね」
「え、まさかはr……お兄さんもやってるんですか!?」
「いや家族がやってて。気にはなってるんですけど」
「ああ、そういう……。面白いですよ、前作やってなくとも楽しめると思います」
興奮しすぎて思わず名前を呼びそうになったのを誤魔化す様に声を上げる。
うう語りたい、布教したい。でもここで早口オタク出したら絶対引かれる。ぐっと口から飛び出そうになるオタクの悪い所を堪えて「私もあんまりゲームに詳しくないんですけどね?」みたいな一般人の顔を装って軽くおすすめしてみる。
するとはるかくんは「へえ」と私が指差したお菓子を手に取った。
「今度家族から借りてやってみようかな」
「……っ、っ、っ……!はい、是非」
落ち着け我の内なるオタク!折角うまい具合に気になってくれてんだ、ここで語り倒したら絶対もういいやって気分にさせてしまう!
必死にオタク魂を鎮めて大人の顔で頷く。はるかくんはどこかほっとした様な表情を浮かべては微笑んだ。
「体調崩さない程度に夜更かししてくださいね」
そう言って彼は颯爽とレジへと向かっていった。
……え、何あの微笑み。王子様やんけ、えっぐ。イケメン怖。
お菓子売り場に一人取り残された私は、顔見知りの年下の男の子のポテンシャルに戦々恐々とするのだった。




