二十五話
兄ちゃんの名前は「やましたはるか」さんというらしい。昨日コンビニで警察からの事情聴取を受けている際に聞こえてしまった。
字だけ見るとすごく女の子みたい。でも線の細い色白の彼には似合っている気がする。……うん、確かに考えれば考えるほどに「はるか」っぽいなこの人。めちゃくちゃしっくり来る。
とはいえ、自己紹介し合ったわけでも無いのに名前で呼ばれたらきっとびっくりさせてしまうだろう。そう考えた私は、隣でビニール袋片手に下げて歩く彼に「お兄さんは」と声を掛けた。
「今日、学校……仕事?は元々お休みだったんですか?」
「ああ……いや、仕事は有給取りました。流石にあの時間から寝て仕事できる気がしなかったので」
「ですよね、私もです」
頰をぽり、と掻く彼の言葉に同意の頷きを返す。流石に私も明け方まで拘束された後に元気に仕事できるメンタル体力は持ち合わせていないので有給をとった。
予定外のオールに痛む頭を抑えて会社に電話をし、馬鹿正直に「深夜コンビニ強盗に巻き込まれて明け方帰ってきたので休ませてください」と伝えてしまったために上司に根掘り葉掘り聞かれてしまったが。
まあ人生でコンビニ強盗に遭遇する人そんな居ないだろうし仕方ないけどね。
にしても……ふむ、社会人であったか。いつものとは違うコンビニで遭遇し、なんとなく流れで一緒に帰る事になった背の高い彼───はるかさん?くん?をチラリと見上げる。
昨日着ていたパーカーとは違う、オーバーサイズのシャツを纏う彼は何度見ても学生にしか見えないので、仕事という単語がミスマッチに思えてしょうがない。
でもまあ多分社会人と言っても私より年下なのは間違いなさそうだけどな。22〜4くらいかな。若く見られるの羨ましいなぁ。
実年齢よりも5歳は上に見られがちな私は、彼のその童顔さに羨望の目を向けるのであった。




