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二十三話

「……た、助かったぁ……」


「大丈夫ですか!?」


 強盗の車が視界から消える。その瞬間、生還したことに対する安堵で膝から力が抜けた。


 ヘナヘナとその場にへたり込むと、隣の兄ちゃんが慌てて背中に手を添えてくれた。


 焦った顔で私を覗き込む彼の後ろでは、おじさんが店員さんに「非常警報ボタン押せ!」と指示をしながら警察に通報してくれていて。


「む、無茶しますね……!?」


「あはは……も、元コンビニ店員として、居ても立っても居られなくなってしまいました……」


 なんとか諦めさせることができてよかった。まさか高校時代のコンビニアルバイト経験がこんな形で活きるとは……。


 人生何事も経験しておくべきだなぁ。震えを隠す様に服を握りしめると、兄ちゃんはその形のいい眉をぎゅっと寄せて、私に頭を下げた。


「ありがとうございます。……お姉さんがいなければ危ない所でした」


「へっ!?あ、いやっそんな!物分かりのいい強盗でよかったです!!」


 そもそも私が外から気付いて通報してればもっと安全だったかもしれないのだ。むしろごめんという心境でワタワタ慌てると、彼はぽかんと呆けた。


「物分かりのいい強盗……?」


「あっ、いやその」


 ご、強盗をする時点で物分かりは良くないか!?テンパりすぎて変なこと言っちゃった!


 羞恥に顔が熱くなるのを自覚し更に慌てる。そんな私の顔をマジマジと見下ろしていた彼は、おもむろに顔を背けて吹き出した。


「ぷ、ふふ……物分かりのいい……強盗……っ」


「〜〜〜〜っ」


 バカがバレる、頼む忘れてくれ!泣きそうになりながら頭を抱えていると、突然肩を叩かれた。


「姉ちゃん!いやぁ助かったぜ!ありがとうなぁ!命の恩人だぜ!」


「うぇ、い、いや、そんな大したことは……あ、っていうか通報してくださってありがとうございます」


「いやいや!あーでもなぁ、これから警察が事情聴取に来るらしいんだ。関係者全員残れって話なんだが大丈夫か?兄ちゃんも」


「大丈夫です」


「あ、はいっ!私も大丈夫です!」


 本当は明日も仕事なので帰りたいところなのだが。しかし悲しいかな日本人の性、大丈夫かと聞かれれば大丈夫と咄嗟に答えてしまいます。


 兄ちゃんの手を借りて立ち上がった私は、あれこれと話し合い始めた二人にバレないよう、帰れるのはいつになることやらとこっそりため息をつくのだった。

 





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