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22話

 なんでよりにもよって今日、この時間に来た。いつもはもっと早い時間に来るだろう。服が家着なのを見るに多分仕事帰りではないんだろうけど。


 ビクビクと怯えた顔で俺を見上げるお姉さんに、俺はなんでやねん……と片手で顔を覆った。


 なんという間の悪さ……いや間が悪いのはこの場にいる全員なのだが。

 とりあえず女性であるお姉さんだけでもなんとか逃がせないかと思考を巡らせていると、強盗がレジ台を蹴り上げた。


「くそ、目撃者が増えたじゃねえか!さっさと金入れろや!!10万入れろ!」


「10万!?今金ないヨ!」


「あ゛ぁっ!?んな訳ねえだろうが!いいからレジの金全部こんなか入れろ!」


「ホ、ホント!金さっき無くなっタ!!」


「だ、か、ら!しょうもねえ嘘言ってねえで早く入れろって!」


 店員と強盗の押し問答が繰り広げられる。

イライラとする強盗に暴れやしないかと肝を冷やしていると「あの〜……」と小さな声が割って入った。


「た、多分レジにお金無いって、本当ですよ……?」


「え、ちょ、お姉さん!?」


 恐る恐る、という風に強盗へと声を掛けるお姉さん。

 その様子に俺と運転手のおっちゃんはギョッと目を剥いた。


 慌てて制止しようとするも、強盗が「あ゛ぁ?」とギョロリと血走った目を向け彼女をロックオンしてしまった。


「どういうことだァ、オイ」


「こ、コンビニによりますけど、大体5万円貯まるとレジ内のお金って回収されてバックヤードに保管されるんです。今無くなったってことは、きっと回収したばっかりで碌な現金がレジには入っていないって事じゃないですかね……?」


「そ、そのとおり!そいうこと!!」


「じゃあ裏から回収してこいや!」


「え、ええと、バックヤードの保管金庫は、基本的に責任者しか開けられない様になってる筈です。こう、郵便ポストみたいな入れ口がついてて、そこに投げ入れるだけですから……そ、そちらの店員さんじゃ無理かと……」


「ソウヨ!店長いない今!!」


 青い顔で説明するお姉さんに店員はコクコクコクと必死に頷く。目出し帽から僅かに見える目を憎々しげに細める強盗に怯えながらも、彼女は尚も続けた。


「あ、あの。多分まだ未遂ですから……私達貴方の顔も見てませんし、うまく逃げればきっと捕まりません。なので日を改めて、べ、別のコンビニとかでやり直した方がいいと思います……」


 まさかのやり直しの提案。肝が据わり過ぎているお姉さんに、しかし俺も運転手のおじさんも同意を示すように何度も頷く。


 しばしの逡巡の末、強盗は舌打ちをして逃げ出した。


 強盗が乗ってきたであろう車のエンジンがかかる音がする。


 そして駐車場をすごい勢いで黒いバンが出ていくのを、全員息を詰めたまま見送った。






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