2話 山下遥の衝撃
「お前が食いたいって言ってたアイス売ってるけど」
「買っといて~。来週お兄の家行ったときに食べるから」
そう言って食ってねえアイスが何個俺の家にあると思ってる。そうは思いつつもなんだかんだと年の離れた妹は可愛いので、素直に返事をして通話を切った。
頼まれたアイスと、ついでに晩飯になりそうなものも適当に選んでレジに向かう。手慰みにスマホを弄っていたが、ふと前に並ぶお姉さんの髪に視線が吸い寄せられた。
アッシュベージュっていうのだろうか、よく分からないが色素薄めの綺麗な茶に染められた長い髪が背中で揺れる。サテン生地のサラサラしたトップスに膝下丈のスカートを纏うお姉さんは、後ろ姿だけでも仕事ができそうな雰囲気が漂っている。
そういえばこの時間によく見るなこの人。今の時間が帰宅時間なのかな。そう思いながらカゴの中身にちらりと目をやり絶句した。
酒しか入ってねえ。
いや待て酒だけじゃない。ほんの少々つまみになりそうな菓子も入ってる。結局酒関係じゃねえか。
すげーバリキャリみたいな雰囲気醸してるのに酒浸り……。やっぱ会社勤めって大変なのかな。
空いたレジに向かいいつも吸うタバコの番号を告げながら、思わずご近所さんであろうお姉さんの肝臓を心配してしまうのだった。
……っていうかこの外国人アルバイター、まさか毎回俺に年確する気だろうか。今年28歳なんですが。