ep.5 命の恩人を無視できない
ムキムキの腕を見せてふふふと微笑む白の女王さん。医療も学び、戦闘に出られるほど鍛えもしいている彼女に憧れの気持ちすら抱く。
ここの場所でお世話になるからには少しは役に立たなきゃ。そんな気持ちが少しずつ大きくなってきた。その時。
ビッーーーーーーーーーー!!!!
大きな音が急に響く。驚き過ぎて声も出せないでいる私。
「あら、誰か手こずってるわね」
顔色ひとつ変えないまま白の女王は立ち上がり何か準備をしだす。
『伝令、伝令』
大きな音のアナウンスが流れる。素人ながらにこの緊迫した状況が流れているのがわかる。
「場合によっては私このまま出向かないといけなくなるからあなたはここで待っててね」
穏やかな声色、穏やかな表情を保ちつつテキパキと動く女王。
『薔薇一輪、五分咲き、色、黒。繰り返す薔薇一本、五分咲き、色、黒。』
黒、、、?もしかして今SOSを出しているのはさっき私を助けてくれたあの人?
放送を聞き私の顔からサーっと血の気が引く音がする。
この世界で見知った人。ましてや自分を助けてくれた人が今危険な状態にいる。
(私のせいだ、、、)
『現場、白ウサギ1名対応中。既に人型に変形し、容姿も確立しているとのことでリーダークラスの応援希望。繰り返す。現場、白ウサギ1名対応中。既に人型に変形し、容姿も確立しているとのことでリーダークラスの応援希望。今すぐ迎えるものは直ちに急行せよ』
「さすが黒薔薇。もう五分咲きとは成長が早いのねぇ〜。」
「連絡部隊より女王に伝言。」
扉の外から声がする。
「ごめんね、準備しながら話をしなきゃいけないから今、人入れてもいいかしら?」
白の女王が私に尋ねてくれる。優しい人だ。
「もちろんです!私のことは気にしないでください。」
「ありがとう!じゃあ!は〜い、どうぞ〜」
「失礼します」
外国の昔話に出てくるような格好をした兵隊さんが2人入ってくる。白を基調とした王子様みたいな格好で少しワクワクするような気持ちになる。2人とも頬にはハートのマークがあり、その中にローマ数字が書かれていた。
説明されなくともなんとなく察しはつく。この2人はハートのトランプ兵の3と7だ。
「王と王女より伝言申し上げます。赤の王、王女ともに他の戦闘の加勢が必要かどうか待機しておられます。が、白の女王の手が空いていなければこちらで引き受けるとのことです。」
「う〜ん、誰もいなければ行こうと思って準備はしたんだけど、実は今一緒にいてあげたい子がいるの。1人にさせると心細いと思うからもし行けそうならそちらにお願いできそう?」
「はっ!承知しました。」
白の女王は私を1人にさせまいと断ってくれる。でも、きっと女王は現場に駆けつけたいはず。だって、白ウサギのあの子と仲良さそうだった。友達が傷ついている今、ここで待機して待っているだけなんてもどかしいに決まっている。
(私のせいでこの人は動けないんだ、、、。)
この世界に来て初めて見た恐ろしくて逃げたくても声が出ないあの光景を思い出す。
そこに現れ私を助けてくれた白うさぎ。きっとあの人だってその場で薔薇を倒したかったはず。それなのに私がパニックを起こし動けなかったせいで彼のペースを乱してしまった。
ごめんなさい、私のせいだ。私が愚図の足手纏いのせいで命の恩人の彼は危機に面している。
私も何か役に立ちたい、せめて白の女王を現場に行かせてあげたい。叶うなら私も駆けつけたい。だって、、、、ここで待ってる内に彼も女王も死んでしまったら私はまた1人になる。そんなの嫌、、、
「あのっ!!!!」
ベッドから起き上がり2人の兵隊と白の女王に近づく私。
「私もそこに行きたいです。足手纏いなのは重々承知ですが、あの、私、白うさぎさんがいなければあの黒い薔薇に殺されていました。でも、助けてもらって、でもそれが私じゃなくて白うさぎさんの番になってしまって」
戦いのプロである彼女らに向かって、私なんかが口を出すのなんて烏滸がましいことを理解している。だからこそ、言葉を選びすぎて文章がめちゃくちゃになる。嫌われたらどうしよう、、、、
「私の代わりに白ウサギさんが帰ってこなくなったら嫌です!!私も連れて行ってください!!!何も出来ないけど、何もせずにいられません!」
正義感なんて美しい動機ではないけれど、白ウサギが帰って来なかったら嫌なのは心からの本心だ。彼は私の命の恩人。
「新人?患者?」
ハートの兵隊2人が「お前は誰だ?」と不思議そうに私を見てる。勢いよく喋った割に冷静な空気を出されると恥ずかしい、、、、
「いよぉ〜し!!!よく言った!恐怖に打ち勝ってこそアリスの一員よ!まずは空気を感じて慣れよう!さぁいこう!!!!!私は強いから任せて!」
白の女王は自分の太ももを叩いていき良いよく立ち上がる。
「ありがとうございます!!」
「やっぱり私が行くから、他のリーダー各位に報告お願いしてもよろしい?」
「承知いたしました。ご武運を」
絶対に足手纏いであろう私も連れて行ってくれると言う白の女王。最初こそ居場所が欲しいという保身の気持ちもあれどこの親切な人たちの何か役に立ちたい、そして私を助けてくれた白うさぎと白の女王を助けられる人間になりたい。これだけは揺るがない純粋な本心。
この本心を胸に私は女王について行った。




