ep.23 最後のスパナ
「こら~!!!目を覚ましたばかりの患者を運び出したらダメでしょ~!!」
プンプンと擬音が出そうな怒り方をしているのはドーマウス
「申し訳ありませんでした!!!」
「ごめんなぁ。ドクターァァ、反省してる」
「ショコラさんとミントは悪くありません!!俺が無理やり脅しました!!すみません!罰なら俺が受けます!!!」
「そうよ~!悪いのはあんたよ白!みんなを巻き込んで反省しなさいッ!!」
白ウサギの健康状態を女王とネムリが確認している。その横には白ウサギをさくらの元まで運んであげた2人がいて反省会が開かれる。
「うん、、、。問題はなさそうだね。あとは回復を待つのみだ~」
「ネムリさん本当にすいません!!俺が悪いのでミントを叱らないでください!!あいつは今回のことずっと反対してたんです」
「ミント君は何で白くんをさくらくんの元まで連れて行こうと思ったの?」
ネムリがミントと向き合い質問する
「はい、、、その、友達の最後の頼みだからです」
「最後?一生に一度みたいな?」
女王は不思議そうな顔をする
「いえ、あの、、、。こいつは、、、今はスパナです。ですが来週には正式に白ウサギチームの頭になりますよね。だから最後なんです」
ミントは歯を食いしばるように言葉を続ける
「来週以降のこいつのお願いは立場上命令になります。だから、対等な立場として、友としてお願いを聞けるのはもうこれが最後なんです、、、!だからっ!!!」
白ウサギは目に溜まった涙がこぼれないように唇を噛む
「わかったよ。君と白くんは仲良しだったもんね。最後にスパナくんとしてのお願いを聞いてあげたかったんだね。でもね」
ネムリがミントの両手を包みながら話を続ける
「いくら健康状態が良好でも、友達の願いだとしても、大怪我した子を無暗に連れ出したらダメという医者としての線引きはしないと、君はあの子の健康を守る義務があるんだよ」
「はい、、、止めるべきだったのに私情を優先してしまいました。申し訳ございません。」
わかってくれたならそれでいいんだよとネムリが優しくミントを抱きしめる。
ミントが震えながら鼻声ですみませんと呟くとネムリは頭を撫でた
その様子三人で静かに見守っていたが穏やかな沈黙を女王が破る
「白がリーダーになろうと関係ないわよ。馬鹿なこと言ってたら殴りなさい」
「んなっ!!この空気でそんなこと言えるなんてお前女王なのにモテないだろ!?」
「はぁ?」
「じょ~~~お~~~ストップ!!!!たとえ手加減しててもあなたの小突きは怪我人には洒落にならねぇっっ!!!」
壁に寄りかかっていたショコラは女王の前に立ちふさがる
「ショコラさん!」
「まぁ失礼ねっ!私も医者よ!!そこのお馬鹿さんが治るまで多少の無礼には目をつむるわ」
「おい!お前そんなこと言ったら女王に失礼だろう!」
「そうよね!?ミントくんもそう思うよね?こんなに美女な私がモテないわけないよね?もっと言ったげて!」
「こいつもそこまで言ってねぇよ、、、」
「ふふふ、さぁ、さぁ白くんの状態も確認できたしそろそろ休ませてあげようか」
「そうですねぇ、怪我人坊やはもうおねんねの時間だぁ」
「じゃあな、スパナ。ゆっくり休んどけよ」
伝言あるから先に行っててと言い女王だけが部屋に残る
「これはリーダー以外極秘なんだけど。怪我が治り次第、さくらと一緒に訓練に参加することになったから、あの子のことよろしくね。」
「極秘って、俺がさくらに稽古をつけてやるって言ったのはミントも聞いてたぜ!ほら廊下で」
「!!!」
「そういえば!咲月さんショコラとミントくんの前でさくらがどこに所属しているか話ちゃっているじゃない!!」
「まぁ、あの二人なら口止めしておけばちゃんと守るだろうし大丈夫だろ」
「そうね、普段の言動は兎も角ショコラはしっかりしているしミントくんは常識人でネムリへの忠誠も厚いしね」
「所属は白ウサギじゃねーのに、訓練も一緒なのか?」
「そうよあんた弱いもの」
女王の言葉に反論しそうになるがぐっとこらえる
「まぁ。このざまじゃなにも言い返せねーわな」
「弱いなら強くなればいいだけなんだから、さくらと一緒に頑張りなさい。」
「俺、一応赤の二人に戦場に出ていい許可は貰ってるんだけど」
「薔薇を枯らして一人前の時期は過ぎたのよ。白。リーダーは勝つのは当たり前。生きて帰らなきゃいけないの。部下も自分も。」
「そうか。じゃあ俺は今回リーダー失格だったんだな」
「そうよ。あんたが死んだら味方も一般人もみんな薔薇の餌食になるわ。命乞いしてでも生きて帰らなきゃいけないの。」
白ウサギは女王の言葉を静かにかみしめる
「でも、それは白に対してよ」
「は?」
「あの子が言っていた通りあなたはまだ白ウサギチーム技術担当の”スパナ”でしょ!」
「おれ、、、」
「あんな大怪我したのに私たちが来るまでよく持ちこたえたね。頑張ったじゃない」
スパナの目に涙がたまる
「そうだ!元気になったら最後のスパナ製作としてあの子のために武器を作りなよ!その期間分の仕事は私が負担するからさ!」
「、、、。はは、そうだな!俺のバディになるやつの武器は俺が作ってあげなきゃ薄情だよな!ありがとうな女王」
「元気が出たならもうお休み」
女王はそう言って部屋から出る
「助けてくれてありがとうな!!!」
照れくさいのか大声でぶっきらぼうに白ウサギがお礼を言うと傷が開くでしょと女王が笑う
「よぉぉ~~~~し!メニューが決まりました!!!まずは走り込みをしましょう!!」
ハッターさんの声が聞こえているがぜぇぜぇと息を切らしているため私は返事ができない
「ああ!水分水分!返事はいいから飲みながら聞いてね!」
ハッターさんはバインダーに可愛いメモ用紙を挟んでいてそこに色んな事が書いてある
「咲月さんはさくらさんをリーダー格まで育て上げたいと言っていた。だから私はさくらさんは救助も含めた万能型じゃなくて戦闘特化にした方がいいと思うの」
私がリーダー格。女王と同じくらい、、、。それってショコラさんより強くなるんだよね?
覚悟はしていてもやっぱり不安だ。
昨日の青い薔薇とショコラさんの闘いを思い出す。
あれを超えるのか。と顔が強張る
「本当はまんべんなく鍛えてあげたいけど時間がないみたいだから筋肉をつけるより、身軽に動けるようになることを優先しようと思うの」
「はい!ありがとうございます。」
「さくらさんは考え方や視野範囲が優れていると昨日の報告書でも書かれていたからそこを武器として伸ばし、、、あ!!!」
ハッターの急な大声にさくらが目を見開く
「ごごごごごごめんなさいぃぃぃ!!驚かせるつもりじゃなくてっ!武器!そう武器!!」
慌てたようにハッターさんが私に小さな入れ物を見せてくれる。
中を開くと裁縫箱だったようで帽子型の針刺しや紫色の裁ちばさみなど一般的な物が入っている。
「さすが帽子屋さんですね、裁縫セットを持ち歩いているなんて!」
「これ実は武器になるんだ」
「え」
照れたようにはにかむハッターさんに驚き思わず低い声が出る
「ああ!違うの違うの!裁縫道具を凶器として扱うんじゃなくて、これは私の血と薔薇のエキスを混ぜて作られた対薔薇用の武器なの!!」
「血、、、?薔薇?」
「最初は驚くよね~。でもこれがあれば私でもなんとか闘えるんだ!戦闘員はみんなオリジナルの物が作られるんだけどさくらさんの武器がどうなるのか聞きそびれたな」
「私も作ってもらえるんですか?」
「もちろんだよ」
「ひいさん!」
声のする方を向くとそこには蝶とともに小さな女の子が立っていた
続く




