ep.20 ようこそアリスへ
「あらあらあら~まぁ!まぁ!とっても素敵じゃない!!」
渡された制服に袖を通すと咲月さんはとても褒めてくれた。黒色のジャケットから少し長めのフリフリのブラウスの袖が見えていてかわいいデザインの洋服だ。
「ありがとうございますっ!」
下はスカートのように見えたが実際はキュロットパンツだった。丈は短くはないが普段はロングスカートが多いため着慣れずこっぱずかしい、、、。
しかし長めの白の靴下のおかげで素足は出ていないためまだ安心感がある
靴は見た目はローファーっぽいが意外と動きやすい
「かわいいわねぇ。よく似合っているわぁ」
こういうフリフリの服装に憧れもあったが着ないまま私は成人し大人になった。だからいま着れて嬉しいような照れ臭いような、、、。でもこんなに褒めてもらえて嬉しいな
「服装については厳しいルールがなくてチームごとに何となくの特性はあるからみんなその中で自由にアレンジしてるわぁ。医療、調理の子達は衛生面でのルールがあるけどあなたは戦闘班になるからあんまり肌を出さない方向でそれ以外は自由に着こなして頂戴ね~!」
「そうなんですね!でももうすでにこんなに可愛いのでアレンジするのもったいない気もしちゃいます」
「ふふ、気にってもらえたなら嬉しいわ!」
私と咲月さんが話していると一羽の青い蝶がどこからともなくやってくる
「綺麗」
「あらぁ、ひいから伝言だわ。ちょっと席を外すわね。ここで待っててくれる?ソファーに座って適当にくつろいでいて。ここはあなたの部屋でもあるんだから」
そう言い残して咲月さんは部屋を後にする
座っていてと言われたが、おとぎ話に出てきそうな図書室のようなこの部屋をウロウロして回る
「ここは誰の隊なんだろう?」
女王の部屋であったらきっと医療品があるだろうがこの部屋にそれらは見当たらない。
ではショコラさん?白ウサギ?そういえば白ってどこの所属なんだろう。白、、、。手術は無事に終わったと言っていたけど目は覚めたのかな?
「早く助けてくれてありがとうって言いたいなぁ」
病院にいたはずの私が気が付けば白に怒鳴られていて、薔薇が人に変身する姿を見てパニックになって、気を失って、、、きっと私のことを放っておけば直ぐに勝てただろうにそれでも救助を優先してくれたんだろうな。
結果、薔薇は完全な人型になって彼に致命傷を与えたわけだ。申し訳ないな。
今でも不思議。なんで私は病院から抜け出しているの?そもそも私がいたあの場所はどこなの?
気を失ってすぐにここに来たから道なんて覚えていないし、昨日ショコラさんが運転してくれた時に車から見えた景色に見覚えはないけど、どこにでもあるような普通の街並みだった。ここの住所を後で聞いてみよう。
謎はまだある。熱があったはずの私の身体は今やいたって健康だ。これも本当に不思議でしょうがない。不安しかないがここで頑張れば衣・食・住は保証される。帰り道が見つかるまで人助けを頑張ろう。
「誰か助けて」 「その誰かが俺なんだって」
昨日出会ったばかりだが白としたそのやり取りがなんだかすごく懐かしく感じる。不安も多いがここには親切にしてくれる人もいて心強い。
白は私を助けてくれた。
「ふふ、ヒーローみたい」
コンコン
扉を叩く音がする。咲月さんが戻ってきたのかな?
「あっ!!今開けます!!」
扉を開けるとそこにはニコっと微笑むショコラさんと白衣を着た男性がいて2人が運んでいるキャスター付きのベッドには固定された白がいた
「よぉ!泣き虫!!元気か?」
「しっ、、、!!!う、あっ!、、、目が覚めたんだね」
目が覚めたことの安堵感と寝たきり状態の彼が心配で目元が熱くなる
「わっ!おい泣くなよ!俺はこの通りもう元気だぜ!」
白ウサギが手を動かそうとするが固定されていてうまく動けない
「おい!!!絶対安静にするって言うからお茶会中のドクターに内緒で連れて来たんだぞ!!動くな!!!!何かあったら俺たちが怒られるんだぞ!!!」
「わ~ってるよ!!」
「え、じゃあすぐに戻らないと!何かあったら大変じゃん」
「いわれなくてもすぐ戻るわ!別に偶然ここを通ったから寄っただけで特に用はないしな!」
「おぃおぃ坊やぁ~!!!素直に物事を言えないのは現場でも致命的だぜぇぇぇぇ」
「っ!!別に!、、、いや。せっかくここまで運んでくれたのにすいません。」
「まったくだ。同期のよしみでお前の頼みを聞いたんだぞ。言いたいことがあるなら素直に言っておけ」
「あ~~~!くそっ!わかったよ!
昨日の話をさっきショコラさんから聞いたんだよ!!お前も駆けつけてくれたんだってな。薔薇が人型になってビビって気を失っていたくせに!!」
「おい!お前そんな憎まれ口言うためにここに来たのか!?新人の元まで連れてかないなら点滴抜いて暴れるって脅すから仕方なくドクター長に無断でお前をここに連れてきたんだぞ?もう戻すからな!」
「同期のよしみで連れてきたんじゃなかったのかよ」
「坊やぁ~!重症者を無断で連れ出したなんて知られたらドーマウスさんは兎も角、女王が黙ってないぜぇ~?それでも君に協力したのは離れ離れになっちゃう前に言いたいことがあるって君が真剣に頼むからだ。ほら、素直になるのは恥ずかしいことなんかじゃないぜ」
「、、、、!はい。」
離れ離れ、、、?白にはもう会えないの?
「昨日、怒鳴って悪かった」
「え、、、?ああ!一番最初にあった時の!?いや!それなら私こそ気を失ってごめん。私のせいで薔薇を逃がしちゃったんだよね」
「ちがう。俺が、、、、、弱いからだ。強いやつはすぐに薔薇を枯らしてその後すぐにでもお前を救助出来た。あの時薔薇を逃す形になったのは俺が両立できるほど強くないからだ。」
白ウサギは悔しさを耐えているようなそんな表情をして気持ちを打ち明けてくれる
「昨日、お前も現場に駆けつけてくれたんだってな。そして負けて倒れてる俺をずっと守ってくれてたんだろ?あんなに薔薇にビビッてたのに、、、。ありがとうな。それだけ言いに来た」
「負けてないよ」
「は?」
「君は負けてなんかないよ。だって、、、あんなにひどい怪我を負ってるのに逃げなかったじゃん。最後まで立ち向かってたじゃん。それに生きてる。、、、いや!死んだら逃げたとか負けって意味じゃないけど!!」
「、、、はっ!そうだよな!俺は負けてねーよなぁ!!!はは!よくわかってんじゃん!!!いてぇ!!!!」
「大丈夫!?」
「馬鹿か!!!笑ったら傷に響くだろ!!!!もういいな?帰るぞ!!!!」
「わーてるよぉ!まぁ、その、なんだ!いまここにいるってことは入るんだろ?アリスに。
でもきっとお前は戦闘班じゃないだろうからこの先会うこともほぼないと思うんだ。だから急いで礼だけ言いに来たんだ。それだけだ!じゃあな。頑張れよ!」
「そういえば!白ウサギってどこのチームなの?」
「名前の通り白ウサギだよ」
「?、、、えっと」
「坊やはなぁ最近白ウサギってチームのリーダーになったんだぁ。だからアリス内の白ウサギといったら坊やを指すんっだぜぇっ!!!坊やは俺より偉いんだ」
「そんな!!違いますよ、、、俺は別に、、、。それにいつまでだってショコラさんを尊敬してます」
「わ!!!それなのに普通に口で話しちゃった!」
最初の出会いが出会いだけについつい勢いで親しげに話してしまったがよく考えたらここにいる人みんな先輩なんだし失礼だったな!
「おい!!敬語とか面倒だから使うなよ!!!普通にタメでいいし、変にさんとか付けづに白呼びでいいからな!!」
いいのかな?即答できないでいると見かねた白が得意げな顔をする
「いいか!俺はいつかアリスの中で一番強くなる男だからな!!!敬いたくなる気持ちもわかるが今はまだ弱い!!!だから同級生くらいの感覚でいいだろ!それに、まぁ、なんだかんだ俺たちその、友達だろ?だから畏まるなよ!」
「、、、ありがとう!!「あっーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
「「げぇ!!!」」 「じょっ!女王!!!」「女王!」
「ちょっと!!!なんであんたがここにいるのよ!!絶対安静にしてなきゃダメじゃない!!」
「うっ!うるせー!俺はもう元気なんだよ!!!今日にでも現場復帰できるぜ!」
「馬鹿!!!お前動こうとするな!傷が開いたらどうする!女王すみません。俺の判断で連れだしました。」
「嘘はいけないなぁ~!ミントの坊や!白の坊やを連れ出したのは俺だぜぇぇぇ!!だって病人が寝床から消えてたら奇妙で愉快だろうぅぅぅ?」
この二人優しいな。あんなにバレないように気を張っていたのにバレた時には自分が罪を被ろうとするんだ。
「大丈夫、大丈夫。状況はなんとなくわかっているわ。おそらく白がわがまま言って困らせたんでしょ?まぁ、ネムリのとこの子が体調確認して固定された運び方もしてるし別にそんなに怒ったりはしないわ」
「女王、お茶会は、、、?」
「いったん休憩になったの!だからあなたの様子を見に来たんだけどもう着替えていたのね!制服。よく似合っているわ」
優しく女王が微笑みながら私を褒めてくれる。その視線が温かくて優しい
「ありがとうございます」
大好きな女王に褒められてつい照れて声が小さくなってしまう
「なぁ~~~!!!本当によく似合っているぜルーキーぃぃぃ!!でもそれはいったいどこの所属の制服だ?もしかしてもうアレンジ済み?」
「いえ!いただいたまま着てます!」
「そういえばそうね、ジャケットだけでみると赤のキングとクイーンとこのっぽいけどアレンジしていないなら袖が違うわね。トランプのスートもないし、、、もしかして白?」
「いや、俺のとこはベストかチョッキが必ず着用だし、そもそもうちは戦闘班だぜ」
「あ、!あのね私も」
「お待たせぇ、ってあらあらみんな来てるのねおはようぅ。白ウサギちゃん!ここにいて大丈夫なの?安静にしてなきゃダメじゃないのぅ?」
「「「おはようございます!」」」
「いや!ほんとそうよ!いつも通りに話してくるからついつい会話しちゃったけど戻りなさい!!ミントくん、ショコラ!もう運んじゃって!」
「おい!勝手に話を進めるな「何よあんた命の恩人に逆らうの?」
「うっ、、、!まぁ、礼はちゃんと言ったからな!俺とお前じゃ接点がなくなるけど困ったらまぁ助けてやるから来いよ!!」
「あらぁ、接点はなくならないわよぉ」
「えぇ?だって俺は戦闘班でリーダーなので非戦闘班に配属になると場所によっては全然合わなくなるし」
「あらぁ、この子の担当も戦闘班よぉ」
「はぁ?お前がぁ!???見るからに弱っちいのに?」
「否定はしないけど失礼だなぁ」
「ルーキーィィィィィ!!!!戦闘班になったのか!!今度時間あったら戦い方をおしえるぜ!」
「チェシャんとこの子が稽古つくときは別のチームも入れないと不安だわ。後で会議でそう言わなくちゃ」
「まぁ!そういうことなら今度俺もお前に稽古つけてやるよ!!」
「ありがとう」
「それはよかった!白ウサギちゃんとあなたはしばらくペアで活動してもらおうと思っていたのよぉ!!よろしくね二人とも!」
「は、、、えーーー?じゃあこいつは白ウサギ部隊になるんですか?それなら急いで来たのめちゃくちゃはずいじゃねーかー!!!」
「この制服白ウサギなの、、、?さっき白はベストかチョッキ着用って言ってたけど、、、」
「いいえ~、ペアで動いてはもらうけど所属は白ウサギちゃんとこじゃないわぁ」
「それならどこに、、、?」
「私よ」
「「「「え?」」」」
「今日からあなたはアリス当主である私。咲月の下に所属してもらいます。まぁ副当主みたいな感じかな?ないか!そんな言葉!でもこの制服は私の直下の証よ。それから今後のリーダーたちの会議。通称お茶会にはあなたも参加してもらいます」
「「「え~~~~~!?!?!?!?」」」
「え、え、え???私そんなに強くなんかないですよ!?」
「異例の大大大出世じゃね~かぁ!!!おめでとうよ~!!!!」
「最初っから強い子なんてそうそういないわ。大丈夫。ちゃんとあなたは育つ。そのために仲間がいるのよ」
「咲月さん、、、。私頑張ります!!」
咲月さんはいったいこの子に何を求めてどこまでさせようとしているの?、、、。わからない。でもこの子は私が想像しているよりも遥かにすごい子だっていうのは確かだわ。才能も特別な力もある。
いつか私を追い越すのかもしれないけど、いつだってこの子が安心して私を頼れるように、私ももっと強くならなくちゃ。
「早速、この後のお茶会にも引き続き参加してもらうわねぇ。」
「お前!もうお茶会に出るのか!?俺より先じゃねーか!!!」
「白ってリーダーなんじゃないの?」
「俺は来月の頭からなんだ。だからあと数日後のお茶会で初めてリーダーとしての参加をする予定だったんだ。だからお前の方が先輩だな!!でもお前に敬語を使うつもりはないからな!!」
「ふふ、いいよ!だって私たち友達だもん。そういうのは無し!でしょ?」
白が少し得意げに微笑む
「よし!じゃああんたはもう戻りなさい。我々もそろそろお茶会が再開されるから戻りましょうか!他のリーダーたちが所属先を聞いたら驚くぞ~!!」
「あっ!そうだそうだ。いつかはきっと広まるかもだけど混乱を避けるためにこの子の所属のことは内密にね。他言はしてはいけないよぉ」
「承知しました。」「りょ~か~ぁ~い」
「じゃ、行きましょうかっと、あら、まだ名前を決めてなかったわね。ここではみんな本名でなくてニックネームで呼び合うのよぉ。私、考えて来たんだけど聞くだけ聞いてくれないかしら?もちろん自分で名乗りたいのがあったらそれでいいからねぇ」
「あっ!ぜひ聞きたいです!」
「さくらなんてどうかしら」
「!!、、、はい!とっても素敵です!」
「いいじゃない~!可愛らしくてぴったりよ!!これからよろしくね、桜」
「俺の中ではルーキー呼びがしっくりくるんだけどなぁ」
「ショコラさんにルーキーって呼ばれるのすきです!」
「じゃあこれからもルーキーでよろしくなぁ!」
「まぁ、じゃあ、またあとでな!さくら!」
ガラガラと白が運ばれていき、私たちもお茶会の部屋へと戻る。
扉の前で咲月さんが立ち止まり、私に目線を合わせる
「この扉をあけたらあなたは副当主のさくらとしてリーダーたちに紹介されるわ。心の準備はいい?」
女王もじっと私を見ている。もちろん不安はとても大きいがここには仲間がいる。
「はい!大丈夫です!!」
「あらっ!素敵な表情ね!じゃ行きましょう」
ギィと音を立てて大きな扉が開かれリーダー達が一斉にこちらを見る
「ようこそアリスへ」
続く




