ep.19 最初の担当は誰がする
「あの、私は、戦った経験はありません。なので迷惑だと思うし烏滸がましいかもしれませんが、戦闘班に入りたいです。」
この言葉に私は自分を責めた。
だってこの子を戦場に連れていく判断をしたのは自分だから。
「なぁぁぁぁぁぁぁぁんだぁぁぁぁぁぁ!!!君は戦闘員希望なのかぁ!!!!!!じゃあ俺様の隊においでぇなぁぁ!」
「えっ、あの、」
「どうだ女王!これが本人の意思なのだ!これなら問題ないだろう!!」
「キング。無駄に波風を立てる発言は品がありませんよ」
「すまない、クイーン」
「女王、、、」
「あなたの思いを聞かせてくれてありがとうねぇ。昨日の時点では非戦闘員を希望していると聞いていたんだけどなぜ今は戦闘員になろうと思ったの?」
「はい!えっと、それは、、、。とても、その自分勝手な意見なんですが」
みんなからの視線を感じ空気が重く感じる。正直吐きそう。自分勝手な発言をしてどう思われるのかが怖くて声が震える。変に動悸もするし何より女王に嫌われたくない。でも本心で喋るんだ。楽な方に流されるな自分!!!
「信じてもらえないかもしれませんが、私は、昨日まで高熱が引かず入院していました。ベッドで点滴に繋がれて自力では歩けませんでした。でも、それなのに、昨日、寝ていたはずなのに気が付いたら、白ウサギ、、、さんに危ないって突き飛ばされて、薔薇から助けられて」
一言喋るだけで息切れのような浅い呼吸をしながら私は声を出す
「地面に咲いていた黒い薔薇が人型になって、それが恐ろしくて気を失って、女王に助けられて、そして落ち着いてからここが自分のいた世界ではないかもと考えました。私がいた世界では薔薇が人になるなんてありえないので。でも、この世界でも薔薇が人になるのはありえないんですよね?あんな恐ろしいものと戦うなんて皆さんすごいですよね。偉いです。なので」
震える右手を左手が包み勇気をだす
「なので、私も、いいことをすれば、薔薇と戦えば、、、神様がご褒美に家に帰してくれるかもしれないのでっ!!!!私!!!ここにどうやって来たのか覚えてないんです。でも!家族のことも友達のことも覚えてて、私は家に帰りたいんです。お父さんとお母さんにまた会いたいっ」
覚悟は決めたはずなのに志望動機をいうだけで半泣きしていた。きっとしわくちゃな顔だ
「自分勝手な理由ですが、、、これが私の本心です」
「思いを聞かせてくれてあるがとうねぇ。あなたがお家に帰れるように私も協力するわぁ。本当を言うとあなたの昨日の戦場での様子を聞いて戦闘員になってほしいと思っていたからこちらとしてもありがたいわぁ」
「戦闘員だけじゃなくて後方支援部隊も立派な仕事だわ」
「おい!!」
「あっ!!す、すみません。あの、決して後方支援の人を軽んじている訳じゃないんですが、、、嫌な気持ちになったらごめんなさい」
「違うの。違うのよ。あなたは悪くない。思いも伝わった。でもね、私はあなたが死ぬことを頑張りとイコールにしていないかが心配なの。戦闘員にならなくても帰る方法は見つかるかもしれないわ」
ドキリと鈍い痛みが心臓に走る。図星だった。心のどこかで死ねば目が覚めて病院のベッドに戻っているんじゃないかと思う気持ちもあるからだ。
でもこんな自己満足な考えだけは絶対隠し通すんだ。自己犠牲で死ぬなんて失礼だと思うから。
「いえ、あの、死にたくないです。でも、私、沢山頑張らなきゃ元の世界に戻れないような気がするんです。それに強くなりたいんです。私も。皆さんに守られたように誰かを守ってそして奇跡が起きて帰りたいんです。」
自分本位ですみません。と呟くと女王は私の手を握る
「わかった。咲月さん。この子を戦闘員としてチームを組むんですよね?なら私が責任もって育てます!!」
「あらぁ、女王ちゃん教えるの上手だし有難いわぁ。でもね、みんなを呼んだのには訳があってねぇ。この子をリーダーのみんなが順番に鍛えてあげてほしいのよぅ。だからしょ」
「はいはーい!!!!俺!オレ!O・R・E!!!!俺っちがぁ!!!一番最初に教えまぁぁあぁす!!」
「ここだけはだめ!!!!最初は私が教えます!!!」
「咲月さんがまだ話している途中です。遮らないで!!」
「まったく人の話は最後まで聞きなさいよ」
「ふふ、順番に口出しはしないからここからはリーダーみんなで話し合って決めてちょうだい。その間に新人ちゃんは私と制服を取りに行きましょうねぇ。」
「あっ、はい!ありがとうございます!」
「ひいはここに残るよ。」
「ひい。あとはよろしくね」
「咲月さん。制服は正式な所属が決まってからでなくていいのですか?」
「あぁ、この子は所属はもう決まっているのよぅ。だからみんなには一時的な預かりとして稽古を短期間ずつつけてくれたらそれで十分よぅ」
「さぁ、行きましょうかぁ」
「えぇ?一体どこの所属に!?」
「また後で会いましょうねぇーーーー!!!」
パタン
「行ってしまわれた」
「じゃあ、お茶会を再開しましょうか。ひいは誰がトップバッターになってもあの子ならやり抜くと思うわ。だって強くなるもの」
「はい!最初は私が稽古をつける!それでいいわね?」
「待ってくれぇよお女王!!一番最初のサプライズは俺っちの所に任せろよぉ!絶対に強くなってみさせるぜぇ」
「いや、まずは僕ら赤のチームで引き取りここでのルール、マナー叩き込んでからにするべきだ。あの新人は性格面から鍛える必要がある。自分のことを話すだけで泣きべそをかいているうちは戦場になんぞ出られない」
「う~~~ん。あの子は精神的に弱くはないと思うけどなぁ。しっかり自分意見言えていたし~。いきなり知らない人間の前で喋れなんて言われたら僕でも緊張しちゃうよぉ」
「いや、精神面を鍛えるという点は私も賛成です。まずは認識のないリーダーが担当し甘えをなくすべきでしょう」
「ちょっと!あの子は知らない場所に急に来てしまったのよ?ただでさえ心細くて不安も大きいはずなんだからまずは安心できる場所で環境に慣れながら過ごすことが必要よ!!!」
「それでいうなら、あなたのところは前衛医療班じゃない。なじみのない職種なはずよ。私の班は主にアリス内の調理や配膳がメインだしうちのほうが馴染みやすいかもよ」
「ぐっ、、、」
「僕の所は医療班だけど未経験の子でも働きやすい環境があるしそれに、昨日少しだけどあの子とお話もしたしまずは僕が稽古をつけようかぁ?」
「お話の途中でごめんなさい。言い忘れていたわ、そういえば昨日の報告書に違和感があるの。女王ちゃん達が嘘をついていると思えないからやつらの組織内でなにかあったのかも。」
「たっっっしかにぃ~!!!さっきから引っかかってたんだよねぇぇぇぇ。薔薇が薔薇を助けに入るなんてあんまり聞かないよねぇ~?」
「昨日は無我夢中でそこまで気にしなかったけどやっぱり珍しいわよね?それにあの子は薔薇が花びらを数枚持ち帰った映像が頭に流れたって言ってたし」
「そもそも薔薇はなぜ単独行動なんだろう」
ひいは全員をみわたした後少し微笑む。
「なぜだかわかる?」
「いえ、わかりません。なぜですか?」
「それはね。"自分一輪がもっとも美しい"と思う元凶の思考を受け継いでいるから、薔薇は自分にしか興味がないの。
人型になる過程である程度は元凶である薔薇の知識を継承し人に紛れるだけの振る舞い方は学んでいるはずだけど心までは近づかない。心なんて他人なんてどうでもいいの」
「ではなぜ昨日の個体は特別な動きを見せたんだろ~?」
「なんとなくの察しはつくけど確定情報じゃないから今は伏せさせて。」
「しかし、薔薇側が組織として動くのであればこの先の戦いは私たちにとってより危険なものになりますね。あの子を鍛えるだけでなく他の隊員の基礎戦闘力も向上させなくては」
「そうだな。ただでさえ薔薇と俺たち人間じゃ再生能力の差でかなり不利なのに知恵までつけられたら並程度の戦闘員など歯が立たん」
「私たちアリスには時間がないの。あの子には酷だけどなるべく早く強くなってもらう必要がある。三ヶ月で幹部クラスを枯らせるようになってほしい」
「ひいさん、、、。それならやはり私たち赤のチームに入れて私とキング二交代制で常に稽古をつける方針でどうですか?素人をそんな短期間で育てるなら寝る間も削らないと、、、」
「そんな!!それじゃいくらなんでもスパルタすぎる、、、」
「まっ!!!!!まっでくだざい!!」
ずっと俯いて一言も声を発さなかったマッド・ハッターが鼻声で大きな声を出す
「やぁ、帽子屋レディ。これは素敵な紙さ!ティッシュというんだがなぁ?美しい雨を晴れにしてくれるぜ?よかったらどうぞ」
「やだ、ちょっと、どうしたのよ。お茶飲む?」
「ずびばぜん!!でも!あの!!!戦闘経験がなくでも頑張るといっだあの子の心の不安と重圧を考えだらっ!なんだか人ごどにおもえなくでぇ、、、まずは私が面倒をみたいでず」
「ハッター、、、!!あなたもリーダーになるまでは喧嘩の一つもしたことない女の子だったものね」
「はぃ、、、なので、この中で一番戦闘経験もなくて弱い私なら近い目線で物事を考えられるじ、先代や皆さんにつけてもらった稽古内容も記憶に新しいので未経験者を教えることもできます、、、!!
まずはあの子に戦いの基礎を教えたいです!!なのでわだしに任せて下ざい!!!!」
「普段は内気な彼女がここまで言うなんて、、、。でも大切に育てる時間なんてないのよ?わかっているの?」
「時間の無さが心配だけど私はこの子になら最初を任すの賛成よ。真面目だし周りもよく見えている」
「しかし、あまりにも時間がない。現実的に考えたらクイーンの案が一番だろ」
「ぞんな案じゃ素人はじにまずよぉぉぉぉ!!!!」
「僕も帽子屋さんが最初に担当するの賛成かな~!まずは基礎を教える必要があるし~!
女王は教えるの上手だし~あの子もよくなついていると思うけど君はとっても強いからあの子がある程度強くなってからより高度な戦闘技術を教えてあげた方があの子の成長のためかも~」
「、、、そう。じゃあハッターに一番最初はお願いしようかな、、、。優しい子だからよろしくね」
「はい!!頑張ります!!!」
「ほらほらお鼻かみなさい」
「えぇ~~~!!!俺っちじゃねーのかぁ!!驚かせたかったのにぃ!!!」
「それじゃまずは決まりね、次はどうする?」
「あの、得体のしれない私をここにおいてくれてありがとうございます。」
「いいのよ、それより大変だったわね。私たちも帰り道を探すから安心して頂戴ねぇ。そして闘う道を選んでくれてありがとう。実はね、最近薔薇が強くなっていってる気がするの。だからね、薔薇の色がわかるあなたが戦場に出てくれたらとっても助かるわ。期待してるの」
「でも、私、本当にただの一般人で特に霊感もないし勘も鋭くないし、色だってたまたま見えただけなんです。」
「プレッシャーをかけてしまってごめんなさいねぇ。でも偶然だろうと何だろうと昨日あなたの力でみんなが生きて帰れたのは事実よ。」
「、、、。昨日ショコラさんも女王もそういって私を励ましてくれたんです。私、志望動機は自分勝手なものですがみんなの助けになりたいという気持ちに嘘はありません!!頑張るのでこれからよろしくお願いします!!!!」
私の言葉に咲月さんは美しく微笑む
「さぁ着いたわ。ここがあなたの所属するチームの本拠地。戦闘要請がない時は基本的に使用することになるいわゆる控室みたいなところね!まぁでもあなたはしばらくはいろんなチームに出入りするからあんまり使わないかもしれないけど、、、さっ!中に制服があるから入りましょう」
続く




