ep.15 あの子
「美味しい!!」
ショコラさんと別れてから私は食事をとっている。見た目もきれいな色どりで配膳されていたため美味しそうだなと思っていたが、実際に食べてみると見た目の上品さと裏腹にしっかりと味付けがされていて箸が進む。
ジャガイモも外側は少し崩れそうだけど噛んでみるとしっかりとお芋のほくほく感があり味もしっかりと染みている。人参も玉ねぎも野菜の甘みが強くて美味しい!さやえんどうも青臭くなく出汁の味がしていて美味しい。
「大根の味噌汁大好き!」
味噌汁も塩っぽさこそないが味がしっかりついていてとても美味しい。細切りにされた大根もよく火が通りとても美味しい。すこし甘めの味噌だ。落ち着く味
「卵焼きに大根おろしあってさっぱりするしほうれん草のおひたしもちょうどいい味付けで美味しい!」
どの料理を食べてもとても美味しくて食べてて明るい気持ちになる。それなのに目が潤んでしかたない。この涙の理由なんてもう説明できないほど今日は受け止めきれないことが多く起きた。
でもいま食べているご飯が自分も知っている味付けなことに心救われる。
心が満たされた私は生きていたいと強く思った
どうして病院から急に外の世界に来ていたのかなんてわからないけど私は絶対に家に帰るんだ。
お母さんとお父さんすごく心配しているだろうな。必ず帰るからね。待っててね。
♪~♪~♪
急にテーブルの端に置かれていたタブレット端末が聞き覚えのあるクラッシク音楽を流し始める
音にびっくりしてドキドキしながらパネルを覗くとそこには
三日月ウサギ 食事班 応答 可 不可
と表示されている。そういえばショコラさんが先ほどのムキムキメイドさんを三日月さんとこの子と呼んでいたなと思いだす。
可の文字をタッチしてみると先ほどのハキハキメイドさんの声がする
「お食事中すみません。おかわりの有無を聞きたく電話しました」
「あっ、!はい!すごくおいしいです!!!えっと、あの。とても美味しいのですがおかわりは大丈夫です!!すみません。」
「いえ!美味しいと言ってもらえて光栄です。それに食事は無理するものではなく楽しむものなので十分だと感じたなら気を遣う必要などないのですよ」
大きく通る声だが決して威圧的でなく寄り添うように話してくれる優しさにとても心が温かくなる
「食事が終わりましたらテーブル横にあるワゴンに食器を載せて部屋の扉横に出しておいてください。後ほど担当の者が取りに伺います!
先ほども言いましたが衛生上、食べ残しや食器をシンクへ流したり洗う行為はおやめください。重ねず順不同でワゴンに乗せて置いておいてください」
「わかりました!本当に美味しい食事をありがとうございました!」
「こちらこそありがとうございます。あ!三日月頭領からの伝言で明日は目が覚めたらベッド付近のコール機を押して起きた旨を伝えてください。
あなた様には今日とにかく心と身体を休めてほしいとのことで明日、早く起きなきゃと考えずにゆっくり眠り、明日ゆっくり朝食をとってほしいとのことなので起きたと報告があり次第朝食を配膳しますね!!」
「お気遣いありがとうございます!」
「本来であれば部屋の説明や明日の流れは医療チームが丁寧に行うのですが本日慌ただしくまた頭領たちも手が空かないため雑になってしまい申し訳ありませんとおっしゃっておりました。私自身も助けになれず申し訳ありません」
「いえ!そんな!十分よくしてもらっています!!とても感謝していますよ!それに先ほどショコラさんにも大方説明していただいたので!」
「ならよかったです!とにかく部屋にある飲食物やアメニティはあなたのためにあるので遠慮なく使って大丈夫です。万が一体調に異変が起きたらすぐにコールボタンを押してくださいね。ではゆっくりお休みください」
「ありがとうございます!」
優しい人が多くて良かったなと思いながら残りのご飯を平らげ食器を指示通り外に出す。
シャワーを浴び用意してくれた着替えに袖を通す。
喉が渇き冷蔵庫を開ければ見慣れないラベルの商品がずらりと並べてあり、自分のいた世界と異なるんだと現実を突きつけられた気がして頭が一瞬動きを止める。
しかしどんな不安な状況だろうと守ってくれたり優しい人がいることを今日身をもって知ったため、今はとりあえずゆっくり眠ろうときめた
それにここがどこあろうとお腹はすきご飯はおいしい。それは自分がどこでも生きていける証明なんじゃないかなと思う。
心はついてこずとも身体は環境に順応し生きようとする
それならば私も悲観的にならず、必ず家に帰るんだ!と強い意志を持ちその方法を探しだしてみせようと思う。
始めてみるけどイラスト的に天然水っぽい山のイラストが描かれたペットボトルを開け、飲む。
水だった。
安心した。
歯磨きも済ませ、頑張るぞ!とう気持ち半分。明日、目が覚めたら病院のベッドでありますようにと心の奥底で願いながら眠りについた。
「ねぇ。あの子のいうことが本当だとしたら可哀想だと思わない?いきなり知らない世界にいて薔薇に襲われるなんて。心のケアもそうだけど何とかして家に帰してあげなきゃね。
でも別の世界ってなに?どうやって見つけるの?」
「あの子がアリスの一員になってくれるなら衣食住は保証してあげられるけど境遇を考えると強制的に所属させるようで不憫よねぇ。
そういえば先ほど手術を終えた白の女王ちゃんの報告によればあの子は薔薇の色が見えているらしいの」
「そうね。チェシャ猫ショコラちゃんの報告にも色が見えていたと出ていたわ。しかも幹部クラスの色が見えているなら満開の薔薇の色を見抜いていることになる。アリス結成以来初めてよこんな子」
「トラウマもあるだろうし心情を考えれば戦闘員にはしたくない。しかし薔薇を全滅させるには始まりの根源であるあいつを枯らすしかない。
そのためにはあの子に強くなってもらい協力してもらいたいわね」
「私はここにいるみんなを守りたい。もちろん。白ウサギちゃんを守り抜いたあの子ももう私の大事な子の一人よ」
「あの子には戦闘員になってもらうようゆっくり説得する。その代わり私たちができる精一杯をもってあの子の帰り道を探す。ここにいる間の生活は保障する。これでどうかしら?」
「今思いつく最善策はそれよね。こちらの事情に巻き込んで申し訳ないけど少しでもあいつを枯らす可能性があるならこちらもきれいごと言っられないものね」
「ではまずは各リーダー達にあの子に稽古をつけてもらい鍛えてもらう方針で行きましょうか。現場に出るのは十分に鍛えた後で」
「なら、まずはリーダー達へ説明するための緊急お茶会を開催しなければね」
「早速取り掛かりましょう」
続く




