ep.13 後衛医療部隊 ネムリ
「ルーキー、俺にはあいつのマントが見えないよ」
冗談なんかじゃなさそうな声色と眼差しでショコラさんは衝撃的なことをいう。おちゃらけている口調の人だがこの戦場を共にしたからこそわかる。思慮深くこういう場所ではふざけたりしない人だと。
だからこそショコラさんの言っていることがわからなかった。だってあの薔薇はたしかに藍色のマントを身にまとっているからだ。今だってそう。
私は視線を女王のいる方へと移す。やはり藍色のマントをしている。それを確認したその瞬間、あのマントの男は影となり地面が水を吸うようにして消えていった。
”マントの中に何かを隠している”
自分でもなぜだかわからないけどそう思った。ただの真っ暗な影なのに。なぜだろうと思い、じっとその場を見ていると
「ふざけるなぁぁぁぁっっ」
憤る女王の声に驚き肩が跳ねる。
「あ~ぁあっ。逃げられて大激怒ジャン。でもあの人は八つ当たりするタイプじゃないし誰も何も悪いことなんてしてないからビビらなくてだいじょぉぉぉぉぉ~~ぶ」
たしかに迫力はあるが女王ならきっと八つ当たりはしないんだろうなと納得する。わかっています。と返事をする代わりに口角を上げると女王がこちらへ走って向かってくる。
「二人とも怪我は?」
「私はありません!」「ないでぇぇぇぇ~~~~すぅぅぅ」
「そうよかった。白の手当の為にも急いで戻りましょう!!ショコラ!車だせる?」
「ネムリさんところの緊急車両を既に手配済みでぇ~す。
容体と血清済みなことも伝えてあと5分もせずに到着するそうなのでぇ~!」
ショコラさんは手をヒラヒラさせながら説明をする
「メールに坊やの治療が最優先とのことでネムリさんが来るって書いてました。あとなるべく動かさずにとのことなので敵さんがいないならこのままでお願いしまぁぁす。」
「あらっ!ネムリが来るの?じゃあ車両の中で治療始めてくれそうね。良かった~!本部に着いてから私が一から治療するより、ずっと早く始められそう。これなら間に合うわね。ありがとうショコラ!気が利くじゃない!!」
「できる男ならこれくらい朝飯前デスですヨォ~」
本当にすごい!!いつの間に!?私と白のことを守りながら状況をみて車両の手配までしちゃうなんて。
「それにしてもネムリが前線に来る許可なんて赤の部隊がよく許したわね。後衛の医療班が現場に出るのは不可。だと思ったわ。メールした時いつ?もう来るってことは私とあいつらの決着がついてないときよね?」
「2体目の薔薇が現れる直前デス!」
「あ~。あのタイミングなら倒しきったと思うわよね。納得。逃げられてしまったけど結果としては白の治療を早く始められることに繋がったわね。倒し切らないなら後衛達は中々入って来られないものね」
「いやぁ~安全確認が取れてないあのタイミングで呼んだのには訳があってぇ、ルーキーが”白を救ったのはイケメンのショコラさんです!”なんていうからかっこつけついでに首跳ねられるの覚悟で手配したんでぇぇぇす」
「絶対イケメンは言ってないでしょ。でもそっか、ありがとう。私一人じゃ今回は白を助けきれなかった。二人とも本当にありがとう」
女王が半分返り血にまみれながらお礼をいう。返り血と知っていても不安になってしまう。
「女王は怪我していませんか?」
「大丈夫よ。ずっと心配してくれてありがとう。そしてショコラのいうことをきちんと守り、2体目の薔薇が現れた時も白を守ってくれてありがとうね。怖かったでしょう。でもあなたの勇敢さでみんなが今も生きている。ありがとう」
女王の言葉に思わず目元が潤む
「あらあら~、可愛いお目目がうるうるね。もう大丈夫よ~!」
「マントの薔薇が現れる前、女王が勝っていたのに不安で仕方なかったんです。なんかずっと胸騒ぎがして、だからっ、無事に帰ってきてくれて本当に安心しました」
「あららら~あら~、可愛いわね~!血がついてできないけど抱きしめちゃいたいっ!!」
「ルーキーの骨折れちゃうんでぇ、やめてくだサーイ」
「なによ!!その言い方!」
あれ、そういえばマントといえば、
「あの影の中!!」 「あいつマントしてた?」
え、、、。もしかして女王にもマントが見えていなかったの?じゃあ、私が見たのはいったい?
「影?どうかした?」
声がぶつかっても私の話をきちんと聞いてくれていたみたいで女王は聞き返してくれる。
「はい、あの、自分の見間違えかもしれませんが、マントの男が影となって消えていくときマントの中に何かを隠したかのように見えた気がしたんです、、、でも影の中のマントなんて見えるわけないのに自分でも変、、だと思います。」
「、、、影のあった場所まで近づけば何かヒントがあるかもしれないわね。私が絶対に守るから一緒に来てくれない?」
「もちろんです!!」
私の変な見間違えかもしれないけれど、少しでも何かの役に立てるかもしれないなら全力で取り組もう。
「ショコラ、白をお願いね」
女王がお願いするとショコラさんは手をヒラヒラさせる。
少し歩くと女王がへこました地面までたどり着きその中央は二人がいた場所だ。目印になっていてわかりやすい。地面にしゃがみ込むが何も見えない。少し地面を払おうと手を付けると私の頭の中に映像が流れこんでくる
「すごく小さくなってわめいている黒薔薇があいつのマントの中にいます。あのマントの男、1体目の黒薔薇の花びら数枚を持ち帰っています。」
「え、なんですって?」
「女王、わたし、おかしくなってしまったのかもしれません。だって、変な映像が頭に」
「いまは頭を使わなくていいわ!ゆっくり深呼吸して!初めてのことだらけで心も頭も疲れてしまったのよ。大丈夫、あなたは変なんかじゃない。マントの薔薇にあなたが一早く気が付いてくれたおかげで私たちは助かったんだから!」
「じょーーーーーーーーーーーーおーーーーーーーー!!!!!!迎えが来ましたぁぁぁぁ!!!坊やを運びます!!!!」
「今行く!!!!さぁ、話の続きは安全な場所でしましょう」
「はい!」
変なことを言っている私の話をないがしろにせずあとでまた聞いてくれる女王の心遣いに胸がじんわりと熱くなる。
私たちはたくさんの車に囲まれるように停められている救急車のような車両の元まで急ぐ。白が車内に運ばれていくのが見える。どうか無事に回復しますように。
「だいぶ~やられているねぇ。でも適切な応急処置をしてくれてるね。流石女王だねぇ。」
「いや、血清を打って応急処置を施したのはショコラよ」
「おやぁ。君はチェシャ猫の所の子かぁ~。医療班ではないのに適切に処置してくれるなんてとってもぉ、優秀なんだねぇ。ありがとうねぇ」
「あ~そんなに褒められると照れてしましますねぇぇぇっ!!!光栄でぇぇぇぇす」
「こいつ、チーム内で討伐数の賭け事してるわよ」
「女王~、処置はしてあるけど一刻も早くお腹の傷を縫いたいんだ。車内でそのまま行うからヘルプに入ってくれるかぃ?」
「わかった。ということだからショコラ、この子をお願いできる?いい?お姫様が乗るんだから安全運転よ」
「りょぉぉぉぉぉ~~~かぁぁぁぁぁいいいいい」
「おやぁ、君は初めて見る子だねぇ。女王の所に就くのかなぁ?僕はネムリ。もっとちゃんと自己紹介したいんだけど今は時間がないからまた今度改めてするねぇ。」
「はい!初めまして!!これからよろしくお願いします!!!!」
「白は私たちに任せて!!じゃあまたあとでね」
女王とネムリさんも車に乗り込みやがて発車する
「さぁ、帰ろうぜルーキーィ!!!安全お姫様運転でなぁぁぁ!!!もちろん、帰り道にマントのこと聞きまくるから覚悟しておけよぉぉぉぉぉ」
ショコラさんが帰ろうと言ってくれたこととマントのことを妄言で片付けづに耳を傾けてくれるのがとても嬉しくて私は笑顔でうなずいた
続く




