いかがでしたかキュレーション
デザートをおごるかわりに恋愛相談に乗ってくれと頼んで連れてきたクラスメイトが頼んだのは二千円するパンケーキ。二千円!? 二千円ってあの、お札の千円が二枚!? 頼むからやめてくれとの言葉もむなしくヤツの前に小さな皿とそびえ立つ塔のような……といってもそこまで高さのない、分厚いパンケーキがやってきた。パシャパシャ撮っている。「これ、一度は写真を上げてみたかったのよねー、でも量のわりに値段が高くて頼めるかバカって感じだったんだけど、ヨシミンは頼り甲斐があるねえ」せめて食べたかったと言ってくれ。口にパンケーキの端を含むたびに首を小さく振って美味しさをアピールするヤツに、さすがの俺もブチ切れ……ても二千円は帰ってこないので、ガマンガマン。
「それで、ユイコちゃんのことなんだけどよ」
「ユイコちゃんは学園でもマドンナとして人気がありますよね」
「なんで急に口調が変わったの?」
ヤツはフォークを置いて、ぱちんと合わせた手と手を顔の幅ぐらいに開いた。
「ユイコちゃんはフリー? 彼氏持ち? 好きなタイプは? 残念な真実に一同衝撃! 私なりに調べてみました!」
「ああ、そういうの聞きたかったんだよ! やるじゃねえか」
「ユイコちゃんが現在フリーかどうかは、わかりませんでした!」
「分からんかったんかい!」
「ユイコちゃんが彼氏持ちかどうかも、わかりませんでした!」
「そりゃそこ分かってたらフリーかどうかも分かったしね、うんうん、一貫はしてるよ、一貫はしてる」
「ユイコちゃんの好きなタイプはわかりませんが、猫が好きだそうです。動物愛の深さが見えますね!」
「全然見えなかったよ?」
「ネットでは性悪女と言われているようです」
「陰湿なネットいじめじゃねーか」
「今回はユイコちゃんについて調べました。いかがでしたでしょうか? 今後もユイコちゃんの活躍に期待したいですね!」
「ふざけんな、猫好きの情報しか知れんかったわボケ!」
ああ、こんな薄っぺらい話を聞くために二千円……二千円が……うつむいてテーブルの下で拳をふるわせる俺に、ヤツの囁き声。
「あの性悪女より、私はいかがですか?」
顔を上げると、ヤツは何食わぬ顔でもくもくとパンケーキを食べていた。
「先に帰るなら、勘定、忘れないでよね」
ネットで性悪女って書いてやる!
お題:残念な真実 制限時間:30分